ビットコインの新しいムーブメント
2025/08/01 16:50:27 株式投資
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暗号資産のビットコインが誕生して10年以上がたちます。今や「デジタルゴールド」として株式等を含む時価総額ランキングでも世界10位以内に入るほどの巨大な市場となっており、ビットコインを作ったサトシ・ナカモト氏も世界10位の大富豪になる計算だとか。
そんなビットコインは2024年ころから再び大きく盛り上がり、価格上昇をしております。主な要因は、アメリカのトランプ大統領がビットコインに肯定的な政策を行うだろうという思惑が大きいからです。トランプ大統領自身も今は(不動産王ではなく)資産の4割が暗号資産関連の可能性がある、という話もありますので、なおさらかもしれません。
ところで今年に入って日本の株式市場でもビットコインに関連した新しいムーブメントがあるのをご存知でしょうか。その象徴としてメタプラネット(証券コード3350)という会社があります。この会社は元々東京でホテル1店を細々と経営しており、2024年の春くらいまで株価は10円くらいでしたが、「これからビットコインのトレジャリー企業になります」と宣言しそれを実行したことで、株価は今年の6月には2,000円近くにまで上昇しました(2025年7月31日終値では1,151円)。
トレジャリー企業って何?と思われるでしょうが、ざっくり言うと「資金調達してビットコインを買いまくります。そしてビットコインの値上がりで儲けます」ということです。つまり事業内容をビットコインに全振りしたわけです。ビットコインがコケたら全てが終わる、という大ギャンブルにしか私は思えませんが、結果としてビットコインは大きく上昇し、今に至るというわけです。
2025年7月31日時点でメタプラネットは17,132BTCを所有しています(会社計画では2027年末までに210,000BTCまで買い集めるとのこと)。円換算すると3,000億円くらいになりますが、恐ろしいことにメタプラネットの時価総額は7,500億円くらいあります。何が恐ろしいかと言うと、ほぼビットコインを買うだけの企業なので会社の時価総額もビットコインの価値と同じくらいの3,000億円程度でないと辻褄が合わないと思うのですが、実際にはその差が4,500億円もあり、ビットコイン価値の2.5倍の時価総額があるわけです。今年の春~6月くらいには6倍とか、もっと差が広がっていた記憶がありますので、これってもうバブルとしか説明がつかないと思います。この株式が最近ではNISA人気第1位の銘柄ですよ。大丈夫ですか??
あえて他にこの株価を合理的に説明しようとすれば、暗号資産で利益が出た場合の税制が考えられます。株式の譲渡益の税率は一律20%なのに対し、暗号資産の利益は累進課税なので15~55%が課されます(所得税+住民税。簡略化のため復興税は除く)。そのためメタプラネット株を買うことで、実質ビットコインを買ったのと同じようなものなのに税率が低くなるという部分に対してプレミアムがついているものと思われます。ただ最近は暗号資産も申告分離課税に改正するための動きが活発化しています。税制の差がなくなってしまうとこのプレミアムは剥がれ落ちると思います。とにかくNISAで買うのだけはやめましょう!
ややこしすぎる!所得税の基礎控除の改正
2025/07/01 16:55:05 税制改正
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所得税の基礎控除が令和7年より改正されます。が、施行は令和7年12月1日となっており、「今年はとりあえず今までどおり計算して、年末調整や確定申告で全部つじつま合わせてね」という摩訶不思議なことになりました。その改正の内容ですが、当初は一律48万円→58万円になるという話でしたが、最終的には合計所得金額132万円以下の場合で95万円、それ以上の場合で58万円+令和7・8年分の上乗せ金額あり、という形になりました。
同時に給与所得控除の最低額も55万円から65万円に改正されましたので、収入が給与だけの場合は基礎控除95万円+給与所得控除65万円=年収160万円までは所得税がかからないということになります。なお住民税の基礎控除は改正されませんので、住民税はかかります。
また税金上の扶養に入れる所得の要件も、基礎控除に合わせて合計所得金額48万円→58万円と改正されています。ところがこれは最大95万円までの上乗せはないので、給与収入のみの場合、基礎控除58万円+給与所得控除65万円=年収123万円までが税金上の扶養に入れる要件となります。年収123万円~160万円の場合、本人に所得税はかからないけど税金の扶養にも入れない、という状態になります。気を付けてください。
なお103万円の壁は123万円まで後退しましたが、社会保険上の扶養の壁である106万円や130万円は何ら変わりませんので、引き続きこれらの壁は意識していく必要があります。
毎月の給与から天引きする源泉徴収税額を変更するのは令和8年1月からになります。基礎控除等の変更に伴い金額が変更されますが、特定扶養親族(19~22歳までの扶養親族)の所得控除の改正もあったため、大学生の子をもつ方の扶養人数のカウント基準も変更(年間給与収入165万円まではカウント可)されています。ご注意ください。
相互関税 その後・・
2025/06/02 17:53:57 経済一般
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相変わらず世界中を振り回しているトランプ大統領ですが、日経平均株価は3月下旬の38,000円から31,000円まで暴落後、1ヶ月くらいかけて元の38,000円まで回復しました。とりあえず相互関税が90日間停止されているのと、その間に各国との取引がまとまっておそらく世界経済はそうひどいことにはならないだろう、という雰囲気が流れています。リーマンショック級の経済崩壊はひとまず回避されました。
中国とも、当初はアメリカが145%、中国が125%の関税をお互いに課すというバチバチのやり合いでしたが、その後アメリカが30%、中国が10%に引き下げることで合意されました。結局脅しだけだったのか、という声も上がり始め、SNS上では「TACO」と揶揄され始めました。これはTrump Always Chikens Outの略で、「トランプはいつも直前になって怖くなって取りやめる」の意味になります。アメリカでは「チキン」は臆病者のことを指します。
さらにこの関税措置に関して、5月28日にアメリカ国際貿易裁判所は「大統領に与えられた権限を超えている」として一部差し止めを命じました。トランプ大統領は即日控訴、今度は翌日5月29日にアメリカ連邦巡回区控訴裁判所がこの差し止めを一時停止する判断を下すなど、アメリカドラマさながらのハチャメチャな動きとなっております。
トランプ大統領の、そしてアメリカの狙いは結局のところ何なんだろう、という感じですが、やはり脅威となってきた中国を潰すことがその目的の一つであることは間違いなさそうです。私が色々読んでいて、「これだな」と思った説は以下のようなものです。
日本は1980年代~1990年あたり、つまりバブル真っ盛りの時、まさに無敵状態でした。日本企業は半導体市場で世界シェアの50%以上を握っていたのを始め、先端エレクトロニクスなどの製造業ではアメリカや近隣諸国をはるかに凌駕していました。アメリカは「この状態は許せない」ということになり、日米貿易摩擦に発展していきました。アメリカによる露骨な日本叩きで、日本のビジネスの土台がどんどん崩されていきました。しかしアメリカは当時も賃金が高く、製造業を大きく発展させる土壌もすでに無かったので、日本が得意としていた分野を中国、韓国、台湾などにシフトさせていったわけです。結果、日本はバブル崩壊から失われた30年に突入し、一方で中国は急激な経済発展、韓国や台湾でも最先端の半導体産業が発展していきました。
そして今まさにアメリカはこの30年前の動きを逆回転させようとしています。経済的、軍事的に脅威となった中国に対し高い関税をかけて世界のサプライチェーンから中国を分断する。中国が得意としている分野をアメリカ国内に戻したいが、やはり製造業に関しては発展させる土壌はすでに無い。ではどこにシフトさせるか。未だ世界有数の技術を有し、戦争もなく政治も安定しており、GDP世界4位の経済規模でありながら30年間も賃金が上がらず製造コストも比較的安上がりな国。そう、30年前に自らの手でぶっ壊した日本に再び製造業のサプライチェーンを構築するのです。
本当にこのシナリオ通りに今からの世界情勢が動くのであれば、日本経済の未来はかなり明るいですし、またこのチャンスを掴まないといけないと思います。日本政府もさすがにこの辺りはよく理解しているようで、実は私は結構期待しています。
リーマンショック級? トランプ大統領の相互関税
2025/05/01 15:07:29 経済一般
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4月2日、世界中に激震が走りました。トランプ大統領が全ての国や地域に一律10%、日本に24%、中国には34%(その後145%にまで引き上げ!)等の関税を課すと発表しました。想定外に高い関税率の発表に、世界中がパニック。そして株価も急落しました。
「相互」関税ということですが、そもそも日本はアメリカに同程度の関税を課しているのかと言うと、決してそんなことはありません。アメリカは貿易赤字が大きいので、それを減らしたという目的があるようです。ただアメリカは金融やITなど関税の関係ない分野で稼いだお金でいろいろなものを輸入しているのですから、貿易赤字になるのは当たり前です。それを「お前らのせいだから今から関税かけるね」は無理筋もいいところなのです。
しかし、この相互関税はアメリカにとって本当にプラスになるのでしょうか?関税はアメリカの輸入業者が納めます(この関税率だと関税総額は2年で100兆円になるとか!この資金を原資に所得減税を実施するのが目的という説もアリ)が、輸入業者はその納税分を商品価格に上乗せします。するとアメリカではインフレがさらに加速します。そして価格が高くなりすぎてモノが売れなくなると経済は冷え込みます。インフレになりながら景気が後退する「スタグフレーション」は、経済状況としては最悪です。また日本企業もアメリカに輸出するモノが売れなくなるので、日本経済も悪化します。世界経済はアメリカを中心に回っていますので、世界中がリーマンショック級の不況になる恐れすらあります。
また「関税が嫌ならアメリカ国内で工場を作って生産しなさい」とトランプ大統領は言いますが、もちろんそんなすぐに工場を作ったり移せるものではありません。例えばアップルはアメリカで使われるiPhoneの約80%を中国の工場で作っています。人的資源を含む複雑なサプライチェーンをすでに中国国内に構築しているのですから、これを全てアメリカ国内に移すなど、やはり無理筋(4月25日に「生産をインドに移す」との発表あり)です。トランプ大統領の真の目的が不明瞭すぎます。目指すゴールを明確にしない指導者というのは、経営方針のない経営者と同じで、ついて来ている者を路頭に迷わせてしまうのではないでしょうか?
なお、トランプ大統領は4月9日にこの相互関税を90日間の停止すると発表しました(中国を除く)。トランプ大統領は今年借換の生じる9.2兆ドルもの米国債の利率を下げたいので、相互関税発表による株式暴落→米国債上昇→米国債金利低下、という流れを狙ったという説があります。経済の教科書的には株価が売られると相対的に国債が買われ、人気化した国債の金利は低下する、ということになります。
ところが、実際には株価の暴落と並行して米国債価格も急落してしまいました。すると意に反して米国債の金利は急激に上昇しました。この米国債価格急落の原因は、日本に次ぐ米国債保有額第2位の中国が、報復として叩き売ったから、という説があります。何にせよ、この米国債金利の急上昇に耐えられなくなったトランプ大統領は、やむをえず90日間の相互関税停止を発表した、というわけです。
90日経過後の世界経済はどうなっているでしょうか。リーマンショック級の経済崩壊を引き起こした大統領、という汚名を着ることをトランプ大統領は望んでいないでしょうから、アメリカにとって有利な何らかのディールが成立すれば、相互関税は引くのかもしれません。
生前贈与、不動産活用以外の相続税対策
2025/04/01 16:28:06 相続対策
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相続税対策といえば、まず生前贈与や不動産活用が最初に挙がってきます。これは以前の事務所通信やブログでも取り上げておりますが、それ以外にも相続税対策となるものはあります。
一番使い勝手が良いのは生命保険でしょう。被相続人が保険料を支払っていた生命保険契約の死亡保険金は相続税の対象となりますが、相続人が死亡保険金を受け取った場合は500万円×法定相続人の金額が非課税になります。例えば法定相続人が2人の場合、1,000万円の一時払の生命保険に加入します(ご高齢の方でも一時払の生命保険であれば無告知で加入できるものがあります)。そうすることで、預貯金のままだと相続税評価額も1,000万円になる預貯金が全額非課税になります(一時払の場合、おおむね支払保険料≒死亡保険金)。
また生命保険は受取人を指定しておくことができます。受取人の指定には実質的に遺言書での指定と同様の効果があり、また解約時に遺言書が必要がないので相続人は預貯金の解約よりも早くお金を受け取れるという効果もあります。生命保険金の非課税枠が空いている場合は、積極的に活用していきたい相続税対策のひとつです。
注意したいのは、相続人以外が受け取った死亡保険金には非課税枠が無いという点です。例えば相続人でない孫が死亡保険金を受け取った場合は孫に相続税がかかるうえ、もし預貯金を生前贈与していた場合は本来かからないはずの生前贈与加算(原則7年前までさかのぼって)までされてしまいます。
それ以外には、養子縁組をするという相続税対策もあります。相続税の非課税枠は3,000万円+600万円×法定相続人ですので、養子縁組することで法定相続人が増える=相続税の非課税枠も増える、ということになります。ただし税務上の法定相続人と認められる養子は1名まで(実子がいない場合は2名まで)です。
しかし養子縁組さえすれば無条件に節税できると言うわけでもありません。節税目的をメインとした養子縁組について争われた税務相談では、高裁は「節税目的の養子縁組=当事者間での縁組の意思がない」として無効の判決を出しました。最高裁では節税目的でもお互いの縁組の意思があれば無効にはならないとして判決を覆しましたが、このように「理由なき縁組」は節税としてはリスクが高いので注意してください。
3月26日ころのニュースで、自民党がNISAの拡充案として「高齢者が日本株を長期保有した場合に相続税を一部免除する」案を検討している、というのが流れていました。今まで株式投資と相続税対策との間には基本的に接点はなかったのですが、もしこれが実現すれば相続税対策に「株式投資」という新しい大枠がひとつ誕生することになり、なかなかに画期的だと思います。また「日本株」と限定しているのもミソで、NISAは外国株式等への投資も対象になっていますが、この案は明らかに「眠っている預貯金で日本株を下支えする」という意図が見えます。政府が保有株の売却をぶつけたいだけかもしれませんが・・。