セブンイレブンのMBO頓挫に思うことあれこれ
2025/03/03 17:23:01 経済一般
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セブンイレブンの経営が大きく揺れているのはご存知でしょうか?カナダのコンビニ大手シュタール社が昨秋、セブンイレブン親会社のセブン&アイ・ホールディングス(以下「セブン」という)に対して7兆円という超大型買収の提案を行いました。
2/末時点でのセブンの時価総額は5.5兆円位ですので、この買収が成立すると株主にとっては差し引き1.5兆円の価値が向上するわけですから、「早く買収案に乗ってくれ」と思っている株主は少なくないはずです。業界1位のセブンは最近業績が低調で、2位のファミリーマートや3位のローソンとの差が縮まっているのではと言われる状況なのでなおさらです。
ところが、自力での経営を続けたいセブン側は「創業家が9兆円でMBOを計画」と発表しました。MBOとは経営陣が株式を買い取り経営権を取得することで、成功すれば創業家は国外企業からの買収を阻止できるということになります。
結果的にこのMBOは頓挫しました。当初から創業家が準備できる金額は5,000億円程度しかないと言われており、残りは銀行融資や他社からの出資でまかなう、という計画のようで、専門家からは当初からこのMBOは難しいだろうと言われておりました。
最終的には、ファミリーマートを運営する伊藤忠商事が1兆円の出資を見送ったことにより、資金の目処がたたなくなり頓挫に至ったという流れです。
9兆円でのMBOという大風呂敷を敷いておいて頓挫したのですから、経営陣はただではすまないよなと思っていたら、3月に入り社長交代というニュースが入ってきました。セブンは採算の合わないイトーヨーカドーを大量閉店するなど事業の立て直しを図っていますが、7兆円の買収に応じないのなら、具体的な事業立て直しの施策や増配、自社株買いなどを発表して今の時価総額を7兆円程度まで持っていかないと株主代表訴訟を起こされる可能性があります。そのような施策が出ることを期待してセブンの株式を買っておく、というのもアリかもしれませんね。
ところで、このような外国企業による大型買収提案というのは今後もっと増える可能性があります。ただでさえ円安により日本企業が買いやすくなっている上、日本企業の株式は基本的に割安のまま放置されています。実際のところ日本企業は最近では失われた30年を経てようやく高収益企業に変わりつつありますし、特にニッチ分野では世界一の技術をもつ企業なども多いです。その上最近では株価を意識して増配や自社株買いを積極的に行っている企業もかなり増えています。外国の投資家にとって日本はまだ「30年も経済成長せず、今後急激に人口が減っていく明るい見通しのない国」というイメージが多いですが、実態は変わり始めています。日経平均が4万円を超えてきた要因は、外国投資家が日本株を買い始めたのもありますが、内部留保が豊富な日本企業が積極的な自社株買い(2024年で14兆円以上!)を続けていることも大きく、日本企業自体が自社の株価を「割安で今が買い時」と思っているからこそ、積極的に自社株を買っているのです。
不動産を活用した相続税対策
2025/02/03 15:19:49 相続対策
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不動産を活用することで相続税対策になるケースは多々あります。例えば「相続した実家の土地に賃貸アパートを建築する」などです。では、なぜ賃貸アパートを建築すると相続税が下がるのでしょうか?
土地の上に空き家となっている実家の建物がある場合、この土地評価は更地と同じ評価になり、路線価をもとに計算した評価額から基本的には減額要素がありません。しかしこの実家を取り壊して賃貸アパートを建築した場合、土地の評価額は一般的に15%程度減額されます。
アパートを建築した土地は更地ではなく「貸家建付地(かしやたてつけち)」の評価となり、更地評価から「更地評価×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」の額を減額することができます。これはアパートの敷地となっている土地は、(部屋を借りている人の住む権利などがあるため)更地に比べて売却などの処分がしにくいので、その分評価が下がることになります。
借地権割合は例えば広島市では50%の地域が多く、借家権割合は全国一律30%、賃貸割合は満室ならば100%となりますので、仮にその土地の更地評価が1億円だとしますと、貸家建付地の評価は1億円-(1億円×50%×30%×100%)=8,500万円となり、更地より15%程度低い評価となるわけです。
またアパートを建築した場合の建物そのものの評価ですが、一般的に建物の相続税評価額(固定資産税評価額と同額)は建築費用の60%程度になると言われています。さらに貸アパートの評価額は借家権割合と賃貸割合を控除しますので、仮に1億円で貸アパートを建築したとしますと、建物の評価額は1億円×60%=6,000万円 →6,000万円-(6,000万円×30%×100%)=4,200万円となり、現金を1億円もっていた場合と比べて相続税評価額が58%程度減額されます。
またこの評価減は借入をしてアパートを建築する際にも有効で、1億円の借入があると債務として全体の相続税評価額から1億円が控除される一方、建物の評価は4,200万円ですので、やはり全体の相続税税金対象額が5,800万円減少し、同じ節税効果が得られます。
注意点としては、あくまで貸アパートは賃貸「事業」ですので、その経営がうまく行かないようでは本末転倒になってしまいます。立地が命になりますし、信頼できる建築業者を選べるかどうかも重要です。またいくら現金で持っているよりも相続税評価が下がるからとはいえ、手持ち資金をすべて使ってしまうと将来の生活費や相続税納税資金がなくなってしまいます。あくまで一定額は現金を残しておくことが大切です。
賃貸事業はうまくいけば税金対策だけではなく、将来の家賃収益を相続人に残してあげられるという意味合いも出てきます。相続時精算課税制度や法人の設立を使って、早い段階で家賃収益を子や孫に入るようにすることも可能です。事前にしっかりとシミュレーションをした上で、有効だと判断できれば積極的に活用してもいいと思います。
103万円の壁は123万円に後退したが・・
2025/01/06 13:43:04 経済一般
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年末に令和7年度税制改正大綱が閣議決定され、103万円の壁は崩壊しました。具体的には基礎控除が48万円→58万円(ただし住民税の基礎控除は43万円のまま)に、給与所得控除が55万円→65万円に改正され、給与所得のみの場合は年間123万円までの収入につき所得税が本人非課税、かつ配偶者・扶養者の税金上の扶養に入ることができるようになりました。
この改正は令和7年から適用されます(源泉徴収税額の変更はなぜか令和8年から)ので、今年から早速働き方が変わることになるはずですし、日本経済としても「年間給与20万円×パート・アルバイト労働者数」分の労働力が創出されるわけで、労働力不足の解消にも繋がるはずなのですが・・。
だがしかし!今までも配偶者の年間給与収入が150万円以下(令和7年以降は改正により160万円以下)の場合、配偶者特別控除が配偶者控除と同額で適用を受けれるため、すでに実質的にパートの方の103万円の壁は崩壊していたはずでした。でも実際には大きな労働力の創出はされませんでした。なぜでしょうか?
それは106万円の壁、130万円の壁が103万円の壁とはレベチで存在しているからです。年収が106万円を超えると従業員51名以上の会社で社会保険の扶養が外れ(=自身で社会保険等に加入)、年収130万円を超えると全ての会社で社会保険の扶養が外れます。
税金上の扶養が外れるタイミングでは配偶者の所得控除がなだらかに減っていくので、壁を超えた瞬間夫婦合計の手取り額が大きく減ることはないのですが、社会保険の扶養は外れた瞬間、社会保険料の負担が生じて手取り額が大きく減ります。ちなみに130万円を超えて減った手取り額を取り戻すには、151万円位まで働かないと同じ手取り額になりません。感覚的には21万円はただ働きだと感じるかもしれません。
106万円の壁が存在する方にとっては103万円の壁が崩壊しても3万円後ろにメインの壁が存在するため、103万円の壁崩壊に大した意味はありません。130万円の壁が存在する方も、103万円の壁突破時点では手取り額が減るわけではないので既に130万円をギリギリ超えない程度の労働時間で調整をしている方も多いです。その方にとっては103万円の壁が123万円に後退しても、すでにそこは無視しているため影響がありません。
結論を言いますと、103万円の壁を123万円に後退させたことは、働き方という視点からはほとんど意味はないです。ただ近い将来130万円の壁がなくなり106万円の壁に一体化される可能性が高いので、「もう社会保険はあきらめて払って、しっかり働きなさい」というのが国からのメッセージでしょう。
働き方という視点からは意味はないのですが、税金計算上では基礎控除が10万円、給与所得控除が10万円増加したことにより、減税効果はあります。税制改正大綱によると、この改正により6~7千億円程度の減税を見込んでいるようです。一方、防衛特別法人税(仮称)を創設することにより5~8千億円の増税を見込んでいます。令和8年4月1日以後開始事業年度より年間500万円を超える部分の法人利益に対して4%の法人税が課されます。
銀行融資を受けやすい決算書とは?
2024/12/02 13:55:12 決算書
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金融機関に事業資金の融資を申し込んだ場合、金融機関は決算書、試算表、事業計画書や代表者への聞き取りなどをもとに融資実行の可否を判断しますが、一般的に融資判断の7割程度は決算書で決まると言われております。では、金融機関は決算書のどこを見ているのでしょうか。
まず金融機関からの借入残高がどの位あるかを確認します。業種にもよりますが、年商(=1年間の売上高)の2分の1未満なら青信号、年商額未満なら黄信号、年商額以上なら赤信号、というイメージです。
次に利益状況です。黒字であればもちろん有利です。ただ法人が役員報酬を取りすぎて赤字になっている場合は、今後役員報酬を下げれば黒字転換できるし、役員報酬の一部は個人で貯金しているだろうから個人の返済余力が増加しているため問題なし、と判断されるケースもあります。代表者+配偶者で年間800万円程度以上の役員報酬を取っていて赤字の場合は、そのように判断されることが多いと言われています。
また法人の場合は減価償却をするかどうかは任意ですから、減価償却をしないことで黒字にするケースもありますが、金融機関は利益だけでなく法人の返済余力(ざっくり税引後利益+減価償却費)も見ます。減価償却してもしなくてもこの返済余力は同額になりますので、金融機関によっては「減価償却を限度額まで行っていたら赤字だった場合の黒字決算は、実質赤字」と判断する場合もあります。
直近の決算が赤字だから融資が受けられない、ということは必ずしもありませんが、その場合は①2期連続赤字でないか、②債務超過でないか、③税や社会保険料の未納がないか、等が判断材料になります。特に③に該当すると融資を受けるのはほぼムリですので、融資を多めに受けてでも、③にならないように普段から手持ち資金を潤沢にしておく必要があります。
それ以外の注意点として、法人なら「役員貸付金」がないか、は重要なポイントです。役員貸付金があると、金融機関は「法人に貸し付けた資金を個人に流用された」と見ますので、今後融資を受ける上で非常に不利になります。すぐに全額解消は難しくても、計画的な返済計画を提示して実際に毎期ごとに貸付金残高を減らして行かないと、金融機関の信頼を失います。
最後に、複数の金融機関とお付き合いすることをお勧めします。どうしても金融機関ごとに「積極的に融資する業種」と「融資に消極的な業種」の考え方(好み?)の違いがあるからです。また融資を受ける際に複数の金融機関からの条件提示を受けて、より有利な金融機関から借入をする、ということができる場合もあります。無借金経営を続けられる場合は必要ありませんが、どうしても多額な設備資金が継続的に必要な事業の場合、金融機関との上手な付き合いは避けて通れません。
「現預金の生前贈与による相続税対策」のまとめ
2024/11/01 15:03:20 相続対策
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相続税対策は、大きく「生前贈与」「不動産の活用」「生命保険の活用その他」の3つに分けることができます。そのうち現預金を生前贈与する方法を簡潔にまとめました。有効な現預金の生前贈与方法は、以下の5つです。
(1)年間110万円の贈与税非課税枠の範囲内で贈与する
(2)贈与税率<相続税率となる金額の範囲内で贈与する
(3)相続人でない孫などに贈与する
(4)そもそも贈与税の対象にならない資金として贈与する
(5)相続時精算課税の基礎控除範囲内で贈与する
それぞれの細かい注意点は実行前に各担当者にご確認いただければと思いますが、まず(1)(2)は伝統的な節税方法です。しかし令和6年以降に相続人に行った贈与は、相続発生時に過去7年間さかのぼって相続財産に加算されてしまいます(一部例外あり)。より早い段階から計画的に行わないと、節税効果が薄れることになります。
(3)はたとえ相続開始1日前にされた贈与であってもさかのぼられることがないので非常に有効な節税対策になります。ただし①孫が(遺言書等で)遺贈により財産を取得した場合、②孫が生命保険の受取人に指定されている場合、③被相続人の子が死亡しているため孫が代襲相続人になっている場合、は(1)(2)と同様に7年間さかのぼられますので注意してください。
(4)ですが、被扶養者が生活費として(常識の範囲内の金額で)金銭を渡す場合、大学の授業料等を払う場合は、そもそも扶養義務を実行しただけなので贈与には該当しません。この被扶養者とは両親だけでなく、祖父母も該当します。ただし授業料等は被扶養者が直接大学等に支払わないと一般の贈与とみなされてしまいますので、注意してください。なお(5)については令和6年8月1日投稿のブログで詳しく解説しておりますので、そちらをご覧いただければと思います。