新NISAと暦年贈与の改正を解説!
2023/01/05 16:03:27 税制改正
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令和4年12月16日に令和5年度税制改正大綱が発表されました。今回の目玉は2つありまして、「新NISA」と「暦年贈与の見直し」です。
まずNISAですが、令和6年1月より制度変更されます。年間投資枠が大幅に増加しまして、一般NISA(「成長投資枠」に名称変更)が120万円→240万円に、つみたてNISA(「つみたて投資枠」に名称変更)が40万円→120万円になります。しかも今までは一般分と積立分のどちらかしか選べなかったのが、どちらも併用することができるため、5年間の非課税限度額の枠が600~800万円→1,800万円と、かなり増えました。
もうひとつの大きな変化は、非課税枠が繰り返し何度でも使える点です。今までは、例えば1月に枠いっぱい120万円で株式を購入し、2月に売却したとすると、この120万円の枠はその年はもう使えませんでした。改正後のNISAは何度でも使えますので、その後また3月に購入→4月に売却→5月に購入、などと繰り返し使うことができます。
※令和6年1月追記・・NISAの非課税枠を使って取得した株式等を売却した場合、その非課税枠が復活するのは翌年に入ってからになります。
この新NISAは、かなり使えると思います。1,800万円というかなり大きい資金を非課税でガッツリ運用できるわけですし、枠が繰り返し使えるので相場に応じて銘柄入れ替えを流動的に行うことができ、短期売買にも使えることになります。ただし現行NISAもそうですが、NISA枠で買った株式を売却して損が出た際にその損失を一般購入分の利益と相殺できないというデメリットは残ったままです。あまり語られないですがこのデメリットは結構大きいので、配慮した上で利用する必要があります。
また暦年贈与の見直しですが、今までは相続開始3年前までに贈与された財産は、相続税の計算時にもう一度入れ直して計算されていましたが、令和6年1月以降これが「7年」に改正され、つまり7年前までの生前贈与は無効になります(一定期間内は3~7年前の贈与分が最大100万円までは有効)。もちろんそれ以前の贈与や相続人以外(例えば孫など)への贈与は有効ですので、全ての生前贈与の意味がなくなるわけではありませんが、より長期計画での相続対策が必要になってきます。
ただそれだけだと若い世代への財産移転がますます滞るじゃないか、ということで、相続時精算課税につき基礎控除が認められることになりました。相続時精算課税は2,500万円までの一定の生前贈与には贈与税を課さないで相続税で精算する制度ですが、一度使うと年間110万円の贈与税非課税枠が一切使えなくなっていました。これが使えるようになり、かつ無効になる生前贈与の額は基礎控除を引いた後の金額でいい(←結構重要です)と改正されたので、相続時精算課税を利用したほうが有利になるケースも増えてくると思います。
最後に、防衛費捻出のため令和6年以降のどこかで法人税4~4.5%、所得税1%を増税すると発表しています。やむを得ないと考えるか、冗談じゃない!か、賛否両論ありそうですね。
税制改正大綱の行方と、久しぶりにカープについて
2022/12/01 15:37:28 経済一般
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最近悪い意味で話題のインボイス制度ですが、令和5年度の税制改正大綱に「激変緩和措置」を盛り込むようです。フリーランス等の税負担が急に増えることを防ぐために、売上高1,000万円以下の事業者がインボイスを発行する課税事業者になる場合、3年間は納税額を「売上税額の2割に軽減」するとのことで、小手先の非難を回避しながら意地でもインボイス制度は開始するつもりのようです。
同様にお騒がせの電子帳簿保存ですが、こちらも来年末の猶予期間終了後も紙での保存を引き続き認める方向で調整されているとのことで、いかにこの制度が見切り発車であったか良くわかります。
なお令和5年度税制改正大綱には、いよいよ暦年課税制度の生前贈与の加算期間(現行:相続開始前3年以内)の見直しにも触れそうです。おそらく10年前くらいまでの贈与は、相続財産に含めて相続税を計算するような改正になると思われます。
ここからは久しぶりにカープについてです。この3年間、優勝できる戦力を有しているのになぜ、と歯がゆい思いをされていたカープファンの皆様(と私)にとって、来年に向けての補強は、例年になく適切な補強を行っているのではないでしょうか。
まず監督は、みんな大好き新井さんです。コーチ経験もないのにいきなり監督で大丈夫か、との声もありますが、コーチを経験してるから監督采配のスキルが上がるわけではないのはもう皆様御存知のはずで・・。新井さんなら負けても納得がいく、と球場へ足を運ぶファンの数も来年は増えることでしょう。
・・からの黒田さんのアドバイザー就任です。投手コーチにしてしまうと防御率が落ちた時に責任問題になりますが、アドバイザーですから黒田さんは責任を取る必要がありません(私見)。数年後もずっと黒田さんが見れるわけで、ある意味永久欠番みたいな感じですね。
そして盗塁数激減に対する補強としてすぐに福地コーチを読んだのもいいですね。ヘッドコーチや打撃コーチもいち早く外部から招聘し(お友達と身内ですけど)、チームとして穴になっている部分を重点的にカバーする意図がはっきりわかります。選手にしても、坂倉選手を捕手専念に戻して、チームとして穴のポジションになりつつあったキャッチャーの部分をしっかり固定することができそうです。私的には今年くらいから「カープは坂倉中心のチームになりそう」と思っていたので嬉しいです。空いた3塁は、伸びてこない林君に変わって外国人選手で補強です。マクブルームも来年は「歴代最強助っ人」と呼ばれるような活躍を期待です。
気になるのは森下くんと床田くんが開幕に間に合うのかと、ユニフォームがダサいこと位ですかね。来年が楽しみです!
今月のトピックスと、半導体についても少し
2022/11/01 15:53:58 経済一般
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まず最初に、最近決定した気になるニュースを箇条書きでお知らせします。
(1)前々回取り上げました「収入300万円以下は一律で雑所得扱い」への改正は見送りとなりました。帳簿書類の保存を要件に、300万円以下でも事業所得として取り扱えることになりました。ただ逆に言いますと、帳簿書類を整備しておかないと300万円以上でも青色申告等ができない可能性があることになります。なお個人の取り扱いですので法人には関係ありません。
(2)国税のPayPayやd払いでの納付が令和4年12月から可能になります。12/1に国税庁がスマホ決済専用サイトを立ち上げるので詳細はまだ明らかではありませんが、クレジットカード払いのような手数料は不要のようです。ただし利用上限は30万円なので資金繰りを考えた高額決済はできません。
(3)前回、給与計算に関連する改正点を取り上げましたが、それ以外にも令和5年4月より中小企業にも月60時間超の残業代の割増率の引き上げ(25%→50%)が義務化される、また時間外労働の上限規制が段階的に施行される(令和6年4月より建設業等も対象に)など、労務管理も複雑さを増してきます。社会保険労務士などの専門家の手助けも受けることも今後は重要になってきます。
ウクライナ戦争では、ロシアの敗色が濃厚になっているようです。欧米が課しているロシアへの経済制裁は、ロシアは天然ガス等を中国やインドに輸出して外貨を稼げるから意味がない、みたいな意見があります。それ自体はその通りでしょうが本丸はそこではなく、高性能な半導体が欧米から入らないことで「ロシアは新たな武器が作れない」ことに最大の意義があります。おそらくもうロシアには大規模な反撃をするような武器の在庫も生産能力もなく、戦局は覆らないと思います。21世紀の兵糧攻めは米ではなく、半導体を断つのです。
また自動車産業でも、今後は自動運転や電気自動車(EV)普及のため、今まで以上に半導体が必要になります。私見ですが、EVの普及は環境問題・SDGsを考慮して、というのは表の顔で、裏の顔はガソリン車から電気自動車という別物の製品に入れ替わる過程で、アメリカ・日本・ドイツ等が強い自動車産業の勢力地図を中国やイギリス等が一気に塗り替えたいという思惑があるのだと思います。つまり10-20年後の自動車業界を支配したいのでしょう。ここを見誤ると数少ない日本が世界で戦える分野の自動車産業で、日本がかつて半導体シェアを奪われた時の二の舞いになりかねないと思います。
10月から給与計算に影響するあれこれ
2022/10/01 17:29:15 経済一般
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令和4年10月より給与計算に影響する変更・改定が結構あります。まず雇用調整助成金の支給で国庫の蓄えが少なくなってきたのでしょう、雇用保険料率が上がります。今年4月に一旦事業主負担のみが増えましたが、今年10月からは労働者負担の雇用保険料率も1000分の3→1000分の5に増えます(建設業等は1000分の4→1000分の6)。事業主負担も同時に、再度増えます。
社会保険関係では、保険料は変わりませんが、社会保険の対象になる労働者の拡大があります。社会保険に加入する義務のある労働者は原則として週30時間以上働く方でしたが、2016年10月からは従業員501人以上の会社で週20時間以上働く方も対象に加わっていました。これが今年10月からは501人以上→101人以上に改定されます(2024年10月からはさらに「51人以上」に改定予定)。
ただし加入要件は週20時間以上だけではなく、①雇用期間が1年以上見込まれる、②賃金月額が8.8万円以上、③学生でないこと、の全てを満たす場合になります。ここで②に注目していただきたいのですが、月8.8万円×12ヶ月≒年収106万円になります。つまり従業員101人以上の会社でアルバイト・パートしている扶養者がご主人等の社会保険の扶養に入るためには年収を106万円未満に抑えないといけません。130万円の壁が106万円の壁に変わりますので、注意して下さい。
また、10月からは最低賃金の改定もあり、全国平均で時給930円→961円に増額されます。広島県では899円→930円になります。私が四半世紀前の大学生の時はたしか最低賃金が645円で、時給650円でアルバイトしていました。それから比べると最低賃金もかなり上がったような気もしますが、世界ベースで見ると日本は賃金の上昇率が低い(確か先進国の中ではほぼ最下位)です。
ここから話はそれますが、最近では中国に仕事を外注したり中国に工場を造ったりするよりも日本国内で外注や工場建設するほうがコストが抑えられるケースが結構あるらしく、中国の賃金は上がり日本の賃金は上がらないことが続き、とうとう逆転現象が起こるまでになったのです。さらに円安が今後も続くでしょうから、これからは日本国内にどんどん工場を建てて輸出したほうが価格競争力が維持できて、政局不安やテロ・戦争の不安のある国より安全です。日本のGDPも増加し、景気・雇用も良くなります。世界中で半導体工場建設ラッシュになっていますが、実際に日本国内でも半導体工場建設の動きが活発で、半導体受注生産最大手の台湾TSMCが熊本県に新工場を設立するなどのニュースもあります。
半導体を制する国が世界の経済、さらに軍事をも制する時代になりつつありますから、この意味は大きいです(半導体については後日もっと詳しく書かせてもらいます)。ロシアは強かったころのソ連を遠い目で懐かしんで馬鹿げた戦争を続けていますが、中国の台湾侵攻はそんな理由ではなく、台湾の半導体技術を手中に収めてアメリカから世界の覇権を奪う、という極めて現実主義的な理由によって動いている気がしてなりません。
「収入300万円以下は雑所得」の意味するところ
2022/09/01 15:39:56 節税
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国税庁が8/1に出した所得税の通達(法令解釈)の改正案が話題になっています。通達は税法そのものではないですが、「国税当局としてはこう解釈して税法を運用しますよ」という指針になります。そして話題になっている内容は、「収入金額(=年売上高)が300万円以下のものは、原則雑所得」という一文です。
今まで個人で事業・副業をしていて確定申告をする場合、それが「対価を得て継続的に行う事業」の場合は「事業所得」、そこまでではないものは「雑所得」と区分されていました。じゃあ具体的に事業所得と雑所得の境目ってどこよ?と聞かれると、はっきり決められていなかったので、実際のところ本人が「これは事業よ」と言えば事業所得、みたいなわりとアバウトな感じもありました。今回、今さらながらその境目が示された形です。(なお所得税の取り扱いなので、法人には関係ありません。)
では事業所得と雑所得で何が変わるのかという点ですが、両者とも売上から経費を引いた残りが利益で、それに対して累進課税で所得税が課される、という部分は同じです。異なるのは、雑所得の場合①青色申告特別控除(10~65万円)が受けられない、②青色事業専従者給与が支給できない(白色申告の事業専従者控除も取れない)、③損失が出た場合他の所得と損益通算(=相殺)ができない、という点になります。他にも純損失の繰越控除ができない、30万円未満の少額減価償却資産の特例が使えない、などもあります。
①②の意味するところは、事業を行って利益が出た場合、「がっつりやらないと税金計算の時の優遇を受けさせないよ」ということになります。日本政府は副業を推進してるのだからがっつりやりなよ、と言いたいのかもしれませんが、努めている会社が副業禁止でこっそりやっている程度では税金は優遇されない、という不公平感が出る気がしますね。
また③は流行りの「サラリーマン節税」を封じる意味があります。書店でこれ関連の書籍がたくさん並んでいますが、例えば売上を10万円、経費を(入れれるだけ入れ込んで)200万円計上し、赤字の△190万円を給与所得と相殺する申告をして、給与から天引されていた所得税を還付してもらう、みたいなスキームです。ほぼ税金還付を目的にしている事業なんか、事業じゃないだろう!という税務当局の言いたいことはわかりますが、事業の黎明期で本当に赤字がかさんでいる場合も杓子定規に相殺を認めないのか、という問題も出てきます。
なおこの内容は8/31までパブリックコメントを募集しており、その内容によっては原案が修正される可能性があります。また改正が施行された場合、令和4年分以後の所得税について適用されます。つまり令和4年1月以降の事業までさかのぼって影響を受けますので、ご注意ください。