税務調査対策(3) 税理士を替えると、調査が来る?
2014/06/09 14:29:56 税務調査
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「税理士を替えると、税務調査が来ませんか?」
よく聞かれます。聞かれる度に、いつも不思議に思っています。なぜなら、毎年50件超の税務調査について立ち会ったり、情報交換したりしていますが、「税理士が替わったから、来た」と思われる調査を一度も見たことがないからです。
税務調査対策(1)でも書きましたが、平成24年事務年度の実地調査割合は、目標の8.5%に対して実績が3.1%です。税務当局は十分な実地調査に赴けていないのです。それでも、前回不正のあった納税者や、売り上げが大きく伸びたのに利益が全然出ていない法人に対しては、優先的に調査しないといけないでしょう。税務当局も手一杯なのです。そんな状況下で、あなたが調査官だったとしたら、「あの法人は税理士が替わりました。他に理由はないですが、なんとなく何か出るかもしれないので、調査に行きます」と上席に言えますか?言えないですよね・・
いわば都市伝説化しているわけですが、なぜこういった話が根強いのでしょうか。ここからは想像ですが、内部者からの告発など、いわゆるタレコミからの脱税情報により税務調査が行われることも少数ながらあると聞きます。税理士としても、「こんな申告内容では顧問はできない」として関与が切れることもあると思います。そんなタイミングが重なって行われた税務調査に対して、「税理士が替わったから・・」となっていったのではないでしょうか。
税務調査対策(2) これだけは覚えておいて下さい!調査中の注意点
2014/06/02 15:48:51 税務調査
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通常の税務調査では、直近の過去3年分を調べる、ということがほとんどです。ですので税務調査は最短だと3年おきにやってくることになります。ただ実際は、前回お話した通り、税務署側の人手不足もあるために5~10年くらいの間隔がほとんどです(前回、悪質な所得隠し等を指摘された場合は別です)。
そもそも、税務調査は必ず受けないといけないのでしょうか。通常の税務調査は「任意調査です」と聞くと、「任意?じゃあ、受けても受けなくてもいいの?」と思われる方も多いのではと思います。結論から言いますと、受けないことはできません。「任意」の一方で、税法では納税者に「受任義務」というものを課しています。「なあんだ」という感じですが、ただいわゆる「マルサ」などの強制調査ではありませんので、指定された日時に大事な商談が入っていたり、体調不良だったりするときに日程を変更してもらうことは可能です。何にせよ、調査日程に関しては顧問税理士にも連絡が行きますので、よく話し合ってから決めることが大切です。
そして、実際の調査が始まると、調査官から色々な質問をされます。どこまで答えないといけないのでしょうか?調査官は「質問検査権」というものを持っています。「税務調査に必要があるときは、質問し、帳簿書類等の提出を求めることができる」この権利はかなり強力で、これがある限り、質問に対して拒絶することはできません。
ただ、「税務調査に対して」ですので、たとえばプライベートの引き出しの中やパソコンのデータまで勝手に見ることはできません。調査官が勝手に触ることは違法調査です。開示を求められたら、まずその理由を確認し、必要なものだけをこちらから開示するようにしましょう。
特に覚えておいていただきたいのは、質問に対して「拒絶」や「ウソ」はいけませんが、かと言って即答する必要もありません。あいまいな回答は調査に不利な影響を及ぼすかもしれませんので、そういう時は「よく確認して回答します」と言ってその日は回答を保留し、調査官が帰ってから顧問税理士とよく相談してから後日回答するようにするか、税理士に回答してもらいましょう。
税務調査対策(1) 税務署の現状
2014/04/25 11:10:16 税務調査
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税務調査に関して、国税庁が発表した平成24年7月1日~平成25年6月30日までの法人税の実地調査率(法人税の申告があったもののうち、税務調査が行われた割合)は3.1%でした。この実地調査率は年々減少傾向にあり、3.1%は過去最低です。100件申告があるうち、税務調査が実施されるのは3件だけということです。単純平均だと、33年に一度位しか税務調査が来ない(!?)ということになります。
国税庁の実地調査率の目標は8.5%程度だそうです。なぜ、こんなに開きがあるのか?実は税務署は人手不足の傾向が続いています。団塊の世代が定年を迎えて絶対人数が大きく減ったためです。ここ数年調査官の採用人数を大幅増加させていますが、追い付いていません。また、若手を教育し、実地訓練を積ませるベテランの人手も不足しています。そのため、定年を迎える調査官を65歳まで再雇用しようという動きも出ているようです。
私の経験では、10年前頃までは若い調査官はベテラン調査官と2人で調査に赴き、指導を受けながら実地経験を積んでいく、ということをしておりましたが、最近は20代の調査官でもどんどん1人でやって参ります。「今回が2回目の調査なんです」と言われた調査官も1人で来られました。
調査官には追徴税額のノルマはありませんが、実地調査率を上げるために、「何件調査に赴く」という目標はあるようです。この現状を税務署目線から見ると、「よほど悪質な案件以外は時間をかけるより、調査件数を増やすことを優先させなければならない」という現状が読み取れるのではないでしょうか?現状が分かると、税務調査の対応の糸口も見えてきます。
また、経営者・事業者の方が一番気になるのは、税務署は調査先をどのように選んでいるのか?ということだと思います。もちろん、単純に儲かっている会社や前回の調査で悪質な所得隠しがあった等を選定することもありますが、一番多いのは国税のデータベースから絞り込むという方法です。
国税当局には国税総合管理システム(略してKSK)というものがあり、たとえばここ数年の決算と比較して、交際費などの特定項目が大きく変動したとか、同規模の同業者と比較して売り上げは伸びたのに利益が全然増えてない、などの法人を抽出して絞り込むのです。
それを考えると、決算書の数字の作り方にしても、どのようにすると調査対象にかかりにくくなるか、などと言う対策が見えてきませんか・・・!?
相続に関わる者の気持ち
平成27年1月以降の相続について、相続税の基礎控除が4割減額されます。これは要するに、相続税がかからなかったものからも相続税を課し、もともと相続税がかかっていたものにはさらに多くの相続税を課す、という「大増税」です。ケースによっては何百万円も税額が増えるため、「大」をつけても大げさではないでしょう。
また、詳しい説明は避けますが、今は「相続した不動産を売って税金を払う」「不動産そのもので税金を払う(物納といいます)」も難しくなっています。
それもあってか、書店では相続に関する本はとてもたくさんならんでいます。「エンディングノート」だけでも書棚の一列を占めていたり。「エンディングビジネス」という言葉も生まれたりしています。
相続対策の内容も、多岐に及びます。よく勘違いされるのは、相続対策とは相続税を抑えるための手法だと思われていることです。たしかにそれも相続対策の一部ではあるのですが、相続には以下の3つの要素があるのです。
(1)相続財産を把握、確定しておくこと
→どういった財産があるかを明確にておくことや、広義には不動産の境界線などを
明確にしておく、などの行為を含みます
(2)財産をどう分けるかを考えておくこと
→遺言書の作成や遺産分割協議、また納税資金などの換金性のバランスや事業承継との
からみなども考えておく必要があります
(3)相続税をいかに抑えるか
実際の相続においては、上記の(3)を多少犠牲にしても、(2)が優先されることが多いのです。相続人の全員が納得する相続、というのと税金の絶対額が少なくなる、というのはイコールにならないのです。また相続税対策をするにも、子からは親に「相続税の対策をせよ」とは言いにくく、そもそも子は親の財産を把握していないケースが多いのです。親としても、自分の老後資金の不安や、「子どもに早くから財産を与えて甘やかせるのはいかがなものか」という親心から、なかなか生前に積極的な財産分配をするには至らないのです。
ただ、私も平成23年に父親を亡くし、途方にくれている母親の手を引っ張って預金通帳の解約手続きのために銀行廻りした時の何とも言えない気持ちが忘れられません。かけがえのないご家族を失った上に、経験のない相続手続きに奔走しないといけない相続人の方々の負担を少しでも和らげることこそが、税理士の社会的使命なのだと考えています。
株式投資で生き残るには
私が株式投資を始めたのは平成17年頃で、ITバブル末期でした。ヤフーは初値の200倍以上になり、ライブドアをはじめとしたヒルズ族(死語?)が猛威をふるっていました。都心の不動産もミニバブルと言われていて、新興不動産企業が過去最高益を連続でたたき出していました。TVでもカリスマ主婦トレーダーなどがよく特集されていました。
しかし、平成18年1月にライブドアに強制捜査が入り、その翌日から新興企業株は暴落。多くのIT企業は株式市場から退場し、新興不動産株も大きく値を崩していきました。私が強制捜査の数日前に売買したと記憶している某不動産株は、今株価を見ると50分の1位になっています。広島地場のアーバンコーポレーションは、たしか私が買ったその日の夕方に民事再生法を申請したような・・・。
ただ、その頃はまだアメリカやヨーロッパを始めとした世界各国は好景気で、トヨタも過去最高益をたたき出していました。私も、辛くも投資成績を立て直して、さあこれからというところでしたが・・・。
平成20年9月、アメリカの投資銀行リーマンブラザーズが負債総額約6,000億ドルで破綻、世界中の株価が大暴落しました。翌朝、日本の株式市場を見てみると・・・。
「なんじゃこりゃー・・・」と言わずにはいられない状況。トヨタ、キャノンを始めとした国際的優良株が朝からストップ安に張り付いて一向に値段がつく気配なし。日経平均も朝から1,000円安で、日経平均先物はサーキット・ブレーカーと呼ばれる緊急取引停止措置が発動される始末。
このリーマンショックで大きな損を出して株式投資から撤退した投資家も多いはずです。私は幸いライブドアショックの経験があったので、損を覚悟で全株式を投げ売りし、パニック後のリバウンドでなんとか息を吹き返したのを覚えています。
その後も、東日本大震災、それに伴う原発事故という不幸な出来事もあり、現在でもアメリカは雇用回復も不透明、ヨーロッパは各国の財政破たん懸念、日本も外交不安や消費税増税など、株式投資環境という視点から見るとまだまだ問題山積の状態です。
株式は長期でもっていればいずれ儲かる、というのは高度成長期、安定成長期においては有効な手段でしたが、この経済環境の不安定な現在では長期投資はほとんど自殺行為!株式を所有していること自体が大リスクで、FX人気もあって、「なぜに今時株式投資を??」といぶかしがられる始末です。
それでも、未だに日本では「株式投資は長期投資が基本」という声が根強いです。証券会社のセールストークもあるのでしょうが、農耕民族といわれる日本人の国民性もあるのでしょうか。会社の黎明期に将来性を期待して投資。撒いた種が育ち、やがて実を結んだ果実を得ることだけが投資家としてのあるべき姿で、デイトレードなどはただのばくちにすぎない、という感情があるのかもしれません。
日本人の美徳は私も誇らしく思いますが、こと株式投資については狩猟民族になるべきです。世界情勢に気を配り、チャートや企業ニュースを分析し、ここぞというタイミングでのみ投資する。成果が得られたら、ためらわず引き上げて、じっと身をひそめて次のチャンス(獲物)を待つ・・・。そんな行動が、投資家には、ひいては経営者にも求められているのではないかと思います。