相続に関わる者の気持ち
平成27年1月以降の相続について、相続税の基礎控除が4割減額されます。これは要するに、相続税がかからなかったものからも相続税を課し、もともと相続税がかかっていたものにはさらに多くの相続税を課す、という「大増税」です。ケースによっては何百万円も税額が増えるため、「大」をつけても大げさではないでしょう。
また、詳しい説明は避けますが、今は「相続した不動産を売って税金を払う」「不動産そのもので税金を払う(物納といいます)」も難しくなっています。
それもあってか、書店では相続に関する本はとてもたくさんならんでいます。「エンディングノート」だけでも書棚の一列を占めていたり。「エンディングビジネス」という言葉も生まれたりしています。
相続対策の内容も、多岐に及びます。よく勘違いされるのは、相続対策とは相続税を抑えるための手法だと思われていることです。たしかにそれも相続対策の一部ではあるのですが、相続には以下の3つの要素があるのです。
(1)相続財産を把握、確定しておくこと
→どういった財産があるかを明確にておくことや、広義には不動産の境界線などを
明確にしておく、などの行為を含みます
(2)財産をどう分けるかを考えておくこと
→遺言書の作成や遺産分割協議、また納税資金などの換金性のバランスや事業承継との
からみなども考えておく必要があります
(3)相続税をいかに抑えるか
実際の相続においては、上記の(3)を多少犠牲にしても、(2)が優先されることが多いのです。相続人の全員が納得する相続、というのと税金の絶対額が少なくなる、というのはイコールにならないのです。また相続税対策をするにも、子からは親に「相続税の対策をせよ」とは言いにくく、そもそも子は親の財産を把握していないケースが多いのです。親としても、自分の老後資金の不安や、「子どもに早くから財産を与えて甘やかせるのはいかがなものか」という親心から、なかなか生前に積極的な財産分配をするには至らないのです。
ただ、私も平成23年に父親を亡くし、途方にくれている母親の手を引っ張って預金通帳の解約手続きのために銀行廻りした時の何とも言えない気持ちが忘れられません。かけがえのないご家族を失った上に、経験のない相続手続きに奔走しないといけない相続人の方々の負担を少しでも和らげることこそが、税理士の社会的使命なのだと考えています。
株式投資で生き残るには
私が株式投資を始めたのは平成17年頃で、ITバブル末期でした。ヤフーは初値の200倍以上になり、ライブドアをはじめとしたヒルズ族(死語?)が猛威をふるっていました。都心の不動産もミニバブルと言われていて、新興不動産企業が過去最高益を連続でたたき出していました。TVでもカリスマ主婦トレーダーなどがよく特集されていました。
しかし、平成18年1月にライブドアに強制捜査が入り、その翌日から新興企業株は暴落。多くのIT企業は株式市場から退場し、新興不動産株も大きく値を崩していきました。私が強制捜査の数日前に売買したと記憶している某不動産株は、今株価を見ると50分の1位になっています。広島地場のアーバンコーポレーションは、たしか私が買ったその日の夕方に民事再生法を申請したような・・・。
ただ、その頃はまだアメリカやヨーロッパを始めとした世界各国は好景気で、トヨタも過去最高益をたたき出していました。私も、辛くも投資成績を立て直して、さあこれからというところでしたが・・・。
平成20年9月、アメリカの投資銀行リーマンブラザーズが負債総額約6,000億ドルで破綻、世界中の株価が大暴落しました。翌朝、日本の株式市場を見てみると・・・。
「なんじゃこりゃー・・・」と言わずにはいられない状況。トヨタ、キャノンを始めとした国際的優良株が朝からストップ安に張り付いて一向に値段がつく気配なし。日経平均も朝から1,000円安で、日経平均先物はサーキット・ブレーカーと呼ばれる緊急取引停止措置が発動される始末。
このリーマンショックで大きな損を出して株式投資から撤退した投資家も多いはずです。私は幸いライブドアショックの経験があったので、損を覚悟で全株式を投げ売りし、パニック後のリバウンドでなんとか息を吹き返したのを覚えています。
その後も、東日本大震災、それに伴う原発事故という不幸な出来事もあり、現在でもアメリカは雇用回復も不透明、ヨーロッパは各国の財政破たん懸念、日本も外交不安や消費税増税など、株式投資環境という視点から見るとまだまだ問題山積の状態です。
株式は長期でもっていればいずれ儲かる、というのは高度成長期、安定成長期においては有効な手段でしたが、この経済環境の不安定な現在では長期投資はほとんど自殺行為!株式を所有していること自体が大リスクで、FX人気もあって、「なぜに今時株式投資を??」といぶかしがられる始末です。
それでも、未だに日本では「株式投資は長期投資が基本」という声が根強いです。証券会社のセールストークもあるのでしょうが、農耕民族といわれる日本人の国民性もあるのでしょうか。会社の黎明期に将来性を期待して投資。撒いた種が育ち、やがて実を結んだ果実を得ることだけが投資家としてのあるべき姿で、デイトレードなどはただのばくちにすぎない、という感情があるのかもしれません。
日本人の美徳は私も誇らしく思いますが、こと株式投資については狩猟民族になるべきです。世界情勢に気を配り、チャートや企業ニュースを分析し、ここぞというタイミングでのみ投資する。成果が得られたら、ためらわず引き上げて、じっと身をひそめて次のチャンス(獲物)を待つ・・・。そんな行動が、投資家には、ひいては経営者にも求められているのではないかと思います。
予算書、作成してますか?
「試算表や決算書ていうのは、結局過去の数字でしょ?」
「決算書は、税務署や銀行のために作ってるんだから」
と思われている方、いらっしゃいませんか?
確かに決算書自体は過去の数字ですし、それ自身が将来の収益を生み出すものではありません。
では、決算書を経営に活かすことはできないのでしょうか?
答えは、決算書をもとに今期の予算書を作成することです!
予算書というと手間な感じを受けるかもしれませんが、要は経営者の頭の中にある今期の経営の計画を金額に落とし込む作業です。
「今期は○○の商品を売り込むために広告宣伝費を多めに割こう」
[今期は△△の事業に進出するために、人員を増やすつもりだ」
などの計画があった場合、当然ながら具体的にいくら経費を使うのか、という問題が出てきます。
そこで、前期の決算書をもとに、今期の各費用項目について予算金額の割り当てを行います。
前期と変動ないであろう部分は前期の実績値を引っ張り、変動があろう部分は、例えば「給与手当は前期比+350万円」などと設定していきます。
そうすると、今期の販管費合計額、そしてそこから損益分岐点となる粗利益と売上高が逆算できます(銀行借入金の返済原資などは、別に考慮していく必要がありますが)。
ポイントは、必ず費用項目から設定していくことです。目標売上高をベースにしてしまうと、費用予算が大きくなりがちで、「この金額までなら使ってもいい」と、経費削減の抑止力が働きにくくなります。
算出した予算書の売上高は「最低売上高」なので、目標売上高とは差異があるかもしれませんが、予算書は保守的な数値であることが絶対条件です。
頭の中の目標売上高は、あくまで皮算用ととらえておきましょう。ただし、経営計画を2~3パターン作っておくということ自体は、むしろ大切なことです。
「どうせ予算どおりにはいかないから意味がない」と思われてはいけません!
予算額と実績額に差異が出てくるのは当たり前なのです。その差異の原因を逐次分析して微調整、時には軌道修正していく事が大事なのです。
「売上高がいくらに達したら、○○の案件については今期前倒しで経費をいくらかけよう」などと、具体的な金額をもって前向きな経営ができるようにもなります。
さあ、今期からは経営に予算書をフル活用していきましょう!