誰でも設立できる、相続対策にも有利な「一般社団法人」
2014/09/08 13:29:47 相続対策
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現在、株式会社は資本金1円でも設立できるようになりました。さらに株式会社の半分以下の登記費用で設立できる合同会社、というのもあります。
しかし、まだそこまで知られていませんが、平成20年12月1日より一般社団法人も登記のみで設立できるようになりました。社団法人といえば、かつては公益事業として認可を受けないといけませんでしたので、公的なイメージが強いのですが、今は社団法人を公益法人、非営利型法人、一般社団法人と(税務上)3つに分類しており、そのうち一般社団法人は制約があまりなく、定款を整備して登記すれば、すぐに設立できます。登記費用も株式会社の半額強程度ですし、社員も2人以上(うち理事1人以上)いれば大丈夫です。法人が社員になることもできます。
一般社団法人は、特に事業内容が制限されるわけではありませんので、そういう部分では、株式会社ととくに違いはありません。法人税の課税のされ方も同じです。しかし、株式会社と大きく異なる点があります。それは、「出資金、株式が存在しない(概念がそもそもない)」ということです。法人の意思決定は、社員が各1票をもって行います。
では、なぜ一般社団法人が相続対策に活用できるのか?それは、「株式が存在しない」=「相続対象となるべき株式が存在しない」=「法人の価値が増加しても、相続税の対象にならない」からです。株式会社の場合、法人の純資産額が資本金の10倍になると、株主が保有している株式の評価もたとえば10倍になったりして、その株式を相続する際に多額の相続税が発生することがあります。一般社団法人では、株式がないため相続税には全く影響がありません。社員の地位を引き継いだり、あらかじめ後継者を社員にしておけば税金がかかることなく法人の資産と事業を引き継がせることができます。そして一般社団法人でも、もちろん役員報酬や役員退職金を支給することができます。
もう一つ大きいのは、法人を最終的に解散させる時です。一般社団法人では、解散時に残った財産を特定の社員に分配するという定めを定款に記載することはできません。ですが、実際に解散する時に、社員総会で特定の社員に残った財産を分配することまでは禁止していません。つまり、結局は個人に財産を戻すことが可能なのです。この点は、残った財産は国に帰属させないといけない基金型医療法人(社団)とは異なります。
また、株式会社では解散時に株主に残った財産を分配する際には配当所得として所得税がかかります。一般社団法人の場合も所得税はかかるのですが、配当には該当しないため、税金が有利に計算できる一時所得に該当するものと考えられます。つまり、法人に残った財産の分配も、他の法人形態より有利に行うことができます。これも、相続対策には非常に有効な点です。
マーケティング(2) 市場を適切に絞り込む
2014/08/25 13:34:28 マーケティング
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マーケティング(1)で、小規模事業者の取るべき戦略として、①市場を適切に絞り込むこと、②強み、付加価値、ブランディングを活かす、というお話をさせていただきました。
「市場を適切に絞り込む」とは、言い換えますと、戦うべき相手と戦わない相手を区分するということです。小企業がいきなり戦場のまん真ん中に切り込んでいっても返り討ちに合うのがオチです。自社の経営資源を集中させて、勝てる相手を選んで切り込んでいくために、「市場を絞り込む」のです。
「市場」を絞り込むためには、業種や経営戦略によってアプローチを変えていかなければいけません。「市場」のとらえ方の観点には、(ⅰ)地域、場所、(ⅱ)商品群、(ⅲ)顧客ターゲット層、(ⅳ)心理的競合群、などがあります。ここでは、(ⅰ)地域、場所、を例にとってみます。
あなたの市場は、「広島市」ですか?「広島県」ですか?「○○町界隈」?それとも「日本」?「世界」?地域や地域性に大きく影響を受ける業種では、地域の範囲が広すぎると、競合が多すぎてジリ貧になってしまいます。地域の範囲が狭すぎると市場規模が小さすぎて利益がでません。また、地域性により戦略が異なる場合もあります。一般的に、大都市圏と地方ではニーズの反応、種類が異なることが多かったりします。
お好み焼き屋を開店するのに、「広島市でナンバー1」では市場が広すぎます。また、老舗の有名店には勝てません。でも、「○○町周辺のサラリーマンの昼食を早く安く提供するお好み焼き屋でナンバー1」ならいけそうではないですか?回転数を多くして採算を合わせる戦略です。逆に、他にはない新鮮な魚介類の仕入れルートがあるならば、「サイドメニューの鉄板焼きが豊富な、○○町でナンバー1の店」でも戦えるでしょう。この場合は、「夜の宴会客」をターゲットに「単価を高くする」ことで採算を合わせる戦略です。
例をあげてみるとわかりますように、「市場の絞り込み」は、自社の強みが正しく分析されていないと誤った選択をしてしまいます。前者のお店は、早くお好み焼きを提供するノウハウを持っていないと対応できませんし、後者のお店は、仕入れルートも持っていないと競争力のある素材を準備できません。
そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、実際に日常業務に追われてしまって、この「自社の強み」の部分の分析がぼやけてしまうケースは多いのです。冒頭の①市場と②強みは両輪であり、この2つがかみ合わないままの市場の絞り込みはまず成功しません。ここが最大のポイントです。
市場の絞り込みができましたら、あとはその市場自体を検証してみて下さい。ポイントは、その市場が広いか、今後の伸びが期待できるか、競合は少ないか、です。
小規模事業者のとるべき戦略は、オンリー1企業になって高利益体質になることです。そのために、市場が地域であれば「特定の地域ナンバー1」、市場が商品群であれば「○○の商品ナンバー1」です。その市場が狭くても、「オンリー1」であればニーズは途切れませんし、市場が狭いので、巨大企業がわざわざ本格進出してくることもないでしょう。
「②強み、付加価値、ブランディングを活かす」は、機会があればまた詳しく触れてみたいと思います。
マーケティング(1) 二極化市場をどう生きるか
2014/07/16 11:45:08 マーケティング
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業種を問わず、市場の二極化傾向がより鮮明になってきております。「大」企業と「小」企業だけが生き残り、その中間的な企業は淘汰されていくと以前から言われておりましたが、今は「大」も淘汰される時代となり、「巨大」と「小」しか生き残ることができなくなっております。
「巨大」企業は、たとえば家電小売り業界におけるヤマダ電機や、外食(牛丼)におけるすき家(ゼンショー)のように、圧倒的な低価格により「大」をも市場から撤退を余儀なくさせてしまいますし、フェイスブックやラインなどの圧倒的な技術やネットワークをもった新興IT企業が、業界地図やユーザーの生活そのものまで完全に塗り替えてしまいます。
その中で私たちがどのように生き残っていくべきか。まず間違っても「巨大」企業が行う、低価格戦略をとってはいけません。「小」が行っても、自らをへとへとに消耗させてしまうだけで長続きはしません。「巨大」ですら、一時期は圧倒的な低価格によりシェアを拡大しても、その後その低価格があだとなって自らの首を絞めているのです。先のヤマダ電機やゼンショーの決算推移を見てもらえればよくわかります。
それでは、「小」はどのような戦略を取るべきか?それは、①市場を適切に絞り込むこと、②強み、付加価値、ブランディングを活かす、ことによって「高くても売れる」ようにすることです。特に新規参入企業にとっては、これ以外に生き残る道はありません。
①②の詳しい内容については次回詳しく触れてみようと思います。その前段階として、自己分析の手法としてマーケティングでは有名なSWOT分析という考え方をご紹介します。SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ったもので、この4つの方面から自社の立場を客観視してみようというものです。
自社にとっての強み、弱み、というのは分かっているようで、意外とはっきりと言葉にできないことも多いです。また、この強み弱みは、同じ市場にいる競合他社に対しての強み弱みでないと分析の意味がないことに注意してください。具体的に、ライバルのA社との比較でどこが強くどこが弱いのか、ということを明確にしていってください。
強み弱みの分析ができると、その強みを生かせる市場がどこにあるのか、という視点に立つことができます。逆に、戦ってはいけない市場、将来的にネックになるであろう部分(=脅威)も見えてきます。そこまで分析できれば、とっかかりとしては十分です。
結局のところ、交際費はいくらまで使ってもいいのか?
2014/07/01 10:28:53 節税
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「交際費はいくらまで使ってもいいのか?」との質問を受けることがよくあります。
税務署の調査が入ったとき、いくらまでなら認めてくれるか、という意味合いです。経営者の方なら、誰でも気になるところです。結論から言いますと、いくら使ってもかまいません。事業上の経費である限り、100万円でも、500万円でも、経費は経費なのですから、金額で左右されるいわれは全くありません。税法のどこにも、金額の多寡で経費性を判断する条文はありません。
ただ、法人の交際費には税金計算上、損金から外される部分があります。平成25年度までは、資本金1億円以下の中小法人は年額600万円が上限で、範囲内でもそのうち1割は自動的に外されていました。資本金1億円超の法人には交際費の損金算入は一切認められていませんでした(これは税金の計算式の問題なので、「経費にならない」とは意味合いが違います)。
しかし、平成26年度※からは一部緩和され、中小法人は年額800万円が上限になり、1割カットもなくなりました。資本金1億円超の会社にも一部損金算入が認められます。
この改正には、交際費を認めて税収が減ることよりも、交際費を使ってもらって景気の底上げに貢献してもらう方が重要だとの政府の意図があると言えます。多少御幣のある言い方をすれば、「どんどん交際費を使ってね」というメッセージが発せられたわけです。
ですので、経営上必要と判断される交際費はしっかり使って、全て交際費として処理してください。ただし、やはり問題となるのは、それが「事業上の」交際費であるか否かです。
言うまでもなく、家族での食事や、個人的な買い物は経費になりません。しかし、経営者同士での飲食や、同業社団体の活動費など、プライベートと事業上との境界線があいまいなものが多く含まれるのが実態です。税務当局としても、シロともクロとも断定できない、「一部交際費」的なものが多く出てくると、落としどころとして、「同規模の同業者の平均的な交際金額が○○円だから、それを超える部分はプライベートと考えられますね」という話をしてくるわけです。こういう話を聞くと、「やっぱり交際費の上限ってあるんだ」と誤解しがちです。でも、それは税務上の判断材料としては不十分ですよね。
交際費としての主張を強くするためには、とにかく交際費の領収書に接待相手の「①会社名、②主な担当者、③人数」をメモしておくことです。それでも税務当局は「本当にその人といったのか?証明できるのか?」というかもしれません。ですが、それ以上こちらで立証する必要はありません。税務当局が領収書のひとつひとつの相手先を実際にあたっていくようなことは、実質的にできないでしょう。よほど高額悪質な事案でない限り、人手不足の税務当局にそのような時間はありません。
最後に、平成24年に交際費に関する画期的な判例が出ておりますのでご紹介しておきます。
簡単に言いますと、個人の弁護士さんが、弁護士会の活動に関連して支出した交際費が税務調査で否認されたことに関して訴訟を起こしたものです。第一審では棄却されましたが、控訴した東京高裁の判決(平成23年(行コ)第298号。平成24年9月19日判決)では一部判決の変更(認容)があり、二次会の費用を除き経費として認められました。この時の裁判所の判断の中に、「業務の遂行上必要であれば、必ずしも直接的な交際費に限定されない。なぜなら、直接という解釈が税法上見当たらないためである」という趣旨のものがありました。今までは類似した税務訴訟ではそのような判断は全く出てこなかったので、大きな変化といえます。売上に直結する交際費に限定されなくなったのですから!
ただしこの訴訟は国側が上告しておりますので、その結果によっては判断が再度ひっくり返るかもしれないことはご了承ください。
※正確には、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度です。
防御は最大の攻撃
2014/06/20 14:02:22 株式投資
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「攻撃は最大の防御」という言葉があります。スポーツや戦いにおいて、自ら攻撃に出ている間は相手は守りに入るわけだから、相手に攻め入る時を与えないことこそが、すなわち自らを守ることにもなる、ということです。
ところで、株式投資などの資産運用についてはどうでしょうか?私の経験からすれば、「防御こそが最大の攻撃」であると言えると思います。
なぜなら、資産運用はたとえ「100勝1敗」であったとしても、その1敗が致命的な失敗であれば全財産を失うこともあるからです。バブル期に株式投資で一大財産を築いた方、ITバブル期のカリスマトレーダーが、今はどうなっているのでしょうか・・・
資産運用は、正直、勝てるときは素人でも十分勝てます。でも、その時の成功体験がその人の思考回路を狂わせるのです。「この方法なら、未来永劫勝ち続けることができるかも・・」と。
しかし、残念ながら高度成長期、安定成長期は、もう日本には訪れないでしょう。発展途上の国においても成長期のスパンは、すぐに外資に蹂躙されるこのご時世では、かなり短くなっています。世界的に経済環境の変化は激しく、連鎖的になっています。
その中で、同じ「攻めの投資戦術」に固執してしまうと、間違いなく負けます。1~2年は勝つことができても、5年、10年のスパンでは必ず負けるでしょう。そのやり方が通用しなくなっても、「守り」に切り替えることができないからです。
大事な資産は「守って」ください。インフレや円安による「目減り」から守ってください。その資産は、あなたの老後資金であり、子どもや孫の教育資金であり、だれかの幸せのために使われるべき資産なのですから。
10年のうち、「攻め」で勝てるのはせいぜい2~3年くらいでしょう。残りの7~8年を守りぬくことができてこそ、攻めの2~3年を見極めることができ、そこで資産を増やすことができるのです。
とりあえず今すぐ止めるべきことは、「リスク資産を持ちっぱなしにすること」です。四六時中、下落リスクにさらされていては、守りきれません。リスク資産を持っていいのは、10年のうち攻めの2~3年だけです。守りの時は、預貯金か、インフレに強い低リスク資産に切り替えましょう。どうしても株式運用したいなら、短期投資に徹してください。
個人投資家のうち、市場で生き残れるのは1割と言われています。それなら、下手に手出しをするのをやめるか、1割に残れる本当の強さを身につけましょう。