結局のところ、交際費はいくらまで使ってもいいのか?
2014/07/01 10:28:53 節税
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「交際費はいくらまで使ってもいいのか?」との質問を受けることがよくあります。
税務署の調査が入ったとき、いくらまでなら認めてくれるか、という意味合いです。経営者の方なら、誰でも気になるところです。結論から言いますと、いくら使ってもかまいません。事業上の経費である限り、100万円でも、500万円でも、経費は経費なのですから、金額で左右されるいわれは全くありません。税法のどこにも、金額の多寡で経費性を判断する条文はありません。
ただ、法人の交際費には税金計算上、損金から外される部分があります。平成25年度までは、資本金1億円以下の中小法人は年額600万円が上限で、範囲内でもそのうち1割は自動的に外されていました。資本金1億円超の法人には交際費の損金算入は一切認められていませんでした(これは税金の計算式の問題なので、「経費にならない」とは意味合いが違います)。
しかし、平成26年度※からは一部緩和され、中小法人は年額800万円が上限になり、1割カットもなくなりました。資本金1億円超の会社にも一部損金算入が認められます。
この改正には、交際費を認めて税収が減ることよりも、交際費を使ってもらって景気の底上げに貢献してもらう方が重要だとの政府の意図があると言えます。多少御幣のある言い方をすれば、「どんどん交際費を使ってね」というメッセージが発せられたわけです。
ですので、経営上必要と判断される交際費はしっかり使って、全て交際費として処理してください。ただし、やはり問題となるのは、それが「事業上の」交際費であるか否かです。
言うまでもなく、家族での食事や、個人的な買い物は経費になりません。しかし、経営者同士での飲食や、同業社団体の活動費など、プライベートと事業上との境界線があいまいなものが多く含まれるのが実態です。税務当局としても、シロともクロとも断定できない、「一部交際費」的なものが多く出てくると、落としどころとして、「同規模の同業者の平均的な交際金額が○○円だから、それを超える部分はプライベートと考えられますね」という話をしてくるわけです。こういう話を聞くと、「やっぱり交際費の上限ってあるんだ」と誤解しがちです。でも、それは税務上の判断材料としては不十分ですよね。
交際費としての主張を強くするためには、とにかく交際費の領収書に接待相手の「①会社名、②主な担当者、③人数」をメモしておくことです。それでも税務当局は「本当にその人といったのか?証明できるのか?」というかもしれません。ですが、それ以上こちらで立証する必要はありません。税務当局が領収書のひとつひとつの相手先を実際にあたっていくようなことは、実質的にできないでしょう。よほど高額悪質な事案でない限り、人手不足の税務当局にそのような時間はありません。
最後に、平成24年に交際費に関する画期的な判例が出ておりますのでご紹介しておきます。
簡単に言いますと、個人の弁護士さんが、弁護士会の活動に関連して支出した交際費が税務調査で否認されたことに関して訴訟を起こしたものです。第一審では棄却されましたが、控訴した東京高裁の判決(平成23年(行コ)第298号。平成24年9月19日判決)では一部判決の変更(認容)があり、二次会の費用を除き経費として認められました。この時の裁判所の判断の中に、「業務の遂行上必要であれば、必ずしも直接的な交際費に限定されない。なぜなら、直接という解釈が税法上見当たらないためである」という趣旨のものがありました。今までは類似した税務訴訟ではそのような判断は全く出てこなかったので、大きな変化といえます。売上に直結する交際費に限定されなくなったのですから!
ただしこの訴訟は国側が上告しておりますので、その結果によっては判断が再度ひっくり返るかもしれないことはご了承ください。
※正確には、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度です。
防御は最大の攻撃
2014/06/20 14:02:22 株式投資
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「攻撃は最大の防御」という言葉があります。スポーツや戦いにおいて、自ら攻撃に出ている間は相手は守りに入るわけだから、相手に攻め入る時を与えないことこそが、すなわち自らを守ることにもなる、ということです。
ところで、株式投資などの資産運用についてはどうでしょうか?私の経験からすれば、「防御こそが最大の攻撃」であると言えると思います。
なぜなら、資産運用はたとえ「100勝1敗」であったとしても、その1敗が致命的な失敗であれば全財産を失うこともあるからです。バブル期に株式投資で一大財産を築いた方、ITバブル期のカリスマトレーダーが、今はどうなっているのでしょうか・・・
資産運用は、正直、勝てるときは素人でも十分勝てます。でも、その時の成功体験がその人の思考回路を狂わせるのです。「この方法なら、未来永劫勝ち続けることができるかも・・」と。
しかし、残念ながら高度成長期、安定成長期は、もう日本には訪れないでしょう。発展途上の国においても成長期のスパンは、すぐに外資に蹂躙されるこのご時世では、かなり短くなっています。世界的に経済環境の変化は激しく、連鎖的になっています。
その中で、同じ「攻めの投資戦術」に固執してしまうと、間違いなく負けます。1~2年は勝つことができても、5年、10年のスパンでは必ず負けるでしょう。そのやり方が通用しなくなっても、「守り」に切り替えることができないからです。
大事な資産は「守って」ください。インフレや円安による「目減り」から守ってください。その資産は、あなたの老後資金であり、子どもや孫の教育資金であり、だれかの幸せのために使われるべき資産なのですから。
10年のうち、「攻め」で勝てるのはせいぜい2~3年くらいでしょう。残りの7~8年を守りぬくことができてこそ、攻めの2~3年を見極めることができ、そこで資産を増やすことができるのです。
とりあえず今すぐ止めるべきことは、「リスク資産を持ちっぱなしにすること」です。四六時中、下落リスクにさらされていては、守りきれません。リスク資産を持っていいのは、10年のうち攻めの2~3年だけです。守りの時は、預貯金か、インフレに強い低リスク資産に切り替えましょう。どうしても株式運用したいなら、短期投資に徹してください。
個人投資家のうち、市場で生き残れるのは1割と言われています。それなら、下手に手出しをするのをやめるか、1割に残れる本当の強さを身につけましょう。
税務調査対策(3) 税理士を替えると、調査が来る?
2014/06/09 14:29:56 税務調査
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「税理士を替えると、税務調査が来ませんか?」
よく聞かれます。聞かれる度に、いつも不思議に思っています。なぜなら、毎年50件超の税務調査について立ち会ったり、情報交換したりしていますが、「税理士が替わったから、来た」と思われる調査を一度も見たことがないからです。
税務調査対策(1)でも書きましたが、平成24年事務年度の実地調査割合は、目標の8.5%に対して実績が3.1%です。税務当局は十分な実地調査に赴けていないのです。それでも、前回不正のあった納税者や、売り上げが大きく伸びたのに利益が全然出ていない法人に対しては、優先的に調査しないといけないでしょう。税務当局も手一杯なのです。そんな状況下で、あなたが調査官だったとしたら、「あの法人は税理士が替わりました。他に理由はないですが、なんとなく何か出るかもしれないので、調査に行きます」と上席に言えますか?言えないですよね・・
いわば都市伝説化しているわけですが、なぜこういった話が根強いのでしょうか。ここからは想像ですが、内部者からの告発など、いわゆるタレコミからの脱税情報により税務調査が行われることも少数ながらあると聞きます。税理士としても、「こんな申告内容では顧問はできない」として関与が切れることもあると思います。そんなタイミングが重なって行われた税務調査に対して、「税理士が替わったから・・」となっていったのではないでしょうか。
税務調査対策(2) これだけは覚えておいて下さい!調査中の注意点
2014/06/02 15:48:51 税務調査
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通常の税務調査では、直近の過去3年分を調べる、ということがほとんどです。ですので税務調査は最短だと3年おきにやってくることになります。ただ実際は、前回お話した通り、税務署側の人手不足もあるために5~10年くらいの間隔がほとんどです(前回、悪質な所得隠し等を指摘された場合は別です)。
そもそも、税務調査は必ず受けないといけないのでしょうか。通常の税務調査は「任意調査です」と聞くと、「任意?じゃあ、受けても受けなくてもいいの?」と思われる方も多いのではと思います。結論から言いますと、受けないことはできません。「任意」の一方で、税法では納税者に「受任義務」というものを課しています。「なあんだ」という感じですが、ただいわゆる「マルサ」などの強制調査ではありませんので、指定された日時に大事な商談が入っていたり、体調不良だったりするときに日程を変更してもらうことは可能です。何にせよ、調査日程に関しては顧問税理士にも連絡が行きますので、よく話し合ってから決めることが大切です。
そして、実際の調査が始まると、調査官から色々な質問をされます。どこまで答えないといけないのでしょうか?調査官は「質問検査権」というものを持っています。「税務調査に必要があるときは、質問し、帳簿書類等の提出を求めることができる」この権利はかなり強力で、これがある限り、質問に対して拒絶することはできません。
ただ、「税務調査に対して」ですので、たとえばプライベートの引き出しの中やパソコンのデータまで勝手に見ることはできません。調査官が勝手に触ることは違法調査です。開示を求められたら、まずその理由を確認し、必要なものだけをこちらから開示するようにしましょう。
特に覚えておいていただきたいのは、質問に対して「拒絶」や「ウソ」はいけませんが、かと言って即答する必要もありません。あいまいな回答は調査に不利な影響を及ぼすかもしれませんので、そういう時は「よく確認して回答します」と言ってその日は回答を保留し、調査官が帰ってから顧問税理士とよく相談してから後日回答するようにするか、税理士に回答してもらいましょう。
税務調査対策(1) 税務署の現状
2014/04/25 11:10:16 税務調査
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税務調査に関して、国税庁が発表した平成24年7月1日~平成25年6月30日までの法人税の実地調査率(法人税の申告があったもののうち、税務調査が行われた割合)は3.1%でした。この実地調査率は年々減少傾向にあり、3.1%は過去最低です。100件申告があるうち、税務調査が実施されるのは3件だけということです。単純平均だと、33年に一度位しか税務調査が来ない(!?)ということになります。
国税庁の実地調査率の目標は8.5%程度だそうです。なぜ、こんなに開きがあるのか?実は税務署は人手不足の傾向が続いています。団塊の世代が定年を迎えて絶対人数が大きく減ったためです。ここ数年調査官の採用人数を大幅増加させていますが、追い付いていません。また、若手を教育し、実地訓練を積ませるベテランの人手も不足しています。そのため、定年を迎える調査官を65歳まで再雇用しようという動きも出ているようです。
私の経験では、10年前頃までは若い調査官はベテラン調査官と2人で調査に赴き、指導を受けながら実地経験を積んでいく、ということをしておりましたが、最近は20代の調査官でもどんどん1人でやって参ります。「今回が2回目の調査なんです」と言われた調査官も1人で来られました。
調査官には追徴税額のノルマはありませんが、実地調査率を上げるために、「何件調査に赴く」という目標はあるようです。この現状を税務署目線から見ると、「よほど悪質な案件以外は時間をかけるより、調査件数を増やすことを優先させなければならない」という現状が読み取れるのではないでしょうか?現状が分かると、税務調査の対応の糸口も見えてきます。
また、経営者・事業者の方が一番気になるのは、税務署は調査先をどのように選んでいるのか?ということだと思います。もちろん、単純に儲かっている会社や前回の調査で悪質な所得隠しがあった等を選定することもありますが、一番多いのは国税のデータベースから絞り込むという方法です。
国税当局には国税総合管理システム(略してKSK)というものがあり、たとえばここ数年の決算と比較して、交際費などの特定項目が大きく変動したとか、同規模の同業者と比較して売り上げは伸びたのに利益が全然増えてない、などの法人を抽出して絞り込むのです。
それを考えると、決算書の数字の作り方にしても、どのようにすると調査対象にかかりにくくなるか、などと言う対策が見えてきませんか・・・!?