法人の種類と特徴
2017/03/28 09:52:58 経営
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法人を設立する!と言いましても、今は複数の選択肢があり、以前より設立しやすくなっています。それぞれの特徴やメリット、デメリットを説明させていただきます。
(1)株式会社
最も一般的な法人形態。設立には登録免許税などの諸費用が20万円強かかります。現在では資本金が1円から、役員も1名から設立することができます。
(2)有限会社
平成17年以降は新規設立ができなくなった法人(存続は可)。それまでは法人の設立に、有限会社は300万円、株式会社は1,000万円の資本金が最低でも必要であったため、少ない資本金で法人を設立するためによく選ばれていた形態です。
(3)合同会社
有限会社の設立ができなくなった同時期に新しくできた法人形態。諸費用が10万円程度で設立できる。株式会社と異なるのは出資者と業務執行役員が一体である点で、家族経営なら問題は出にくいですが、多くの出資者から資金を募りたい場合や、資本と経営を分離したい場合は不向きです。
(4)一般社団法人
平成20年以降は諸費用12~18万円程度で誰でも設立できるようになりました。事業内容が特に制限されるわけでもありませんので、法人にパブリックなイメージを与えるために設立するケースのほか、株式が存在しないという法人の特性を生かして相続税対策のために設立する場合もあります。
また、非営利型法人や公益法人として(従来からの社団法人のように)非収益事業について法人税の優遇等を受けることも可能です。
(5)医療法人
現在では医師1人でも設立ができる法人。平成19年以降に設立される医療法人は出資金が「基金拠出型」となっており、基本的には、出資した金額は最終的に国庫に帰属することになっています。そのため、出資金の相続評価が額面金額より上がらないという表裏一体の特徴があります。その名のとおり医療提供行為を目的とした法人で、配当が禁止されている点なども特徴的です。
(6)NPO法人
正式には「特定非営利活動法人」。特定の20種類の分野の活動を行う、一定の要件を満たす法人として認可を受ける必要があります。社会福祉法人ほどの法人税等の優遇はありません。
この他にもたくさんの法人形態がありますが、今回は割愛させていただきます。当事務所では、法人設立のシミュレーションや、提携司法書士と連携して法人設立手続きの代行ができます。お気軽にお問い合わせください。
東芝の債務超過からみる「選択と集中」の是非
2017/03/04 12:18:52 経営
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東芝といえばサザエさんのスポンサーとしてもおなじみの、100年を優に超える歴史を誇る、日本を代表する大企業のひとつです。その東芝が本年度末決算で債務超過に転落することが決定的で、そして債務超過回避のために稼ぎ頭のフラッシュメモリー事業を分社化して全株式を売却する見込みとか。なぜ巨大企業がここまでの事態になってしまったのでしょうか。
報道によれば、アメリカの原発関連事業で今期7,000億円以上の損失が計上されるそうです。前期も原発関連で2,500億円近く損失を計上していますので、2年間で1兆円にせまるというとてつもない金額の損失額です。原発事業は、東日本大震災以前は花形的な事業で、日本の原発技術を駆使して、世界でたくさんの原子力発電所を建設しようとしていました。とくに日立と東芝が積極的だったと記憶しています。その中で2006年に東芝がアメリカのウェスチングハウスという大手原発メーカーをかなり高い金額で買収しています。そもそもこれが間違いだったのではと今では言われています。
その後、東日本大震災を期に、原発事業は世界的に縮小に入ります。安全性の問題が大きく問われるようになりましたので当然です。それでも東芝は原発事業に強気の姿勢を崩さなかったようです。東芝は家電事業や医療機器事業(これもかなり儲かっていた!)を売却し、原発事業とフラッシュメモリー事業に賭けるという「選択と集中」を行いました。
その結果、アメリカの原発事業は追加建設費用で損失が大きく膨らみ、しかも工事コスト増をこちらで負担するというオプション契約までついていたそうで、撤退するにも多額の違約金が発生し、動きがとれなくなっているようです。そして、とうとう稼ぎ頭のフラッシュメモリー事業を手放すこととなり、これで債務超過を解消できたとしても、もう稼げる事業が東芝には残っていないという事態に陥りそうです。
ここからはえらそうに私見を書かせていただきますが、結果的に東芝は「選択と集中」すべき事業を見誤った、もしくはそもそも「選択と集中」をすべきでなかったのだと思います。原発事業もフラッシュメモリー事業もハイリスクハイリターンの事業だと思うので、一本足打法でこけてしまった液晶事業のシャープと同様、一度こけてしまうと取り返しのつかないようでは企業を永続させるのは難しいと思います。
事業を2本柱にするのであれば、一方が不調の時はもう一方で補える、そんなバランスが求められるのであって、一方がこけたら全て終わりという選択をしてはいけない、というのは私たち中小企業にも当然あてはまることなので、肝に銘じないといけないところです。またいろいろな記事をみていると、そもそも東芝は「選択と集中」をすべきではなかったというものもありました。もともと有望な複数の事業をバランスよく展開する企業だったので、それを続ければよかったのだと。もちろん中小企業が限りある経営資源を特定分野に集中させることはとても有効だと思いますが、その先に事業の水平展開が見えず、いつまでも一本足打法を続けるのは「企業を長く存続させる」ことに必ずしもつながらないのだと思います。
平成29年税制改正発表
2017/01/31 19:29:29 税制改正
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税制の改正は毎年あり、例年年末前後には税制改正大綱という「今年はこんなの決めましたぜ」の内容が記載されたものが発表されます。今回分も自民党のホームページから内容を閲覧することができます。141ページありますので、見ることはおすすめしません(^_^;)。重要と思われるもののみ一部ピックアップしてご紹介させていただきます。
(1)103万円の壁、なくなる
前々回の通信で題材にあげさせていただいた、配偶者控除の「103万円の壁」ですが、これが150万円に改正されます。奥様が年収150万円まで仕事しても、ご主人の配偶者控除が取れるよ、ということになりました(奥様本人の税金は発生しますが)。ただし前々回取り上げました通り、社会保険の130万円の壁がドドーンと存在しますので、現実的には103万円→130万円への改正ととらえていいと思います。また、ご主人の所得が多いと配偶者控除が使えなくなる、という改悪もセットになっております。来年(平成30年)から適用されます。
(2)相続税の納税義務の見直し
国税当局の、国外財産の課税強化には力が入る一方です。発端は平成23年に最高裁で逆転敗訴し、約2,000億円の贈与税を還付するという屈辱を味わった「武富士事件」があるからです(平成28年5月1日号の通信参照)。今までは、日本国籍がなく、かつ5年以上日本に住所がない方は国外財産には相続税・贈与税が課されませんでしたが、これが「10年以上」に改正されます。5年間シンガポールに移住して贈与税無税で財産を子どもに渡してから帰国しようとしていた方が、この改正のためもう5年日本に帰れなくなった、というケースが本当に出てきているようです・・。
(3)持分なし医療法人への移行に関する改正
医療法人を経営されているドクター以外には関係のない内容ですが、該当する方にとっては超重要な改正です。とはいえ詳細は発表されていませんが、今までは持分なし医療法人に移行しようとしても、「みなし贈与税」という法人なのに贈与税を課されるという特例のため実質不可能だった移行が、条件付きで贈与税を課さなくする、というものです。その条件がまだ明らかになっていませんので、発表を注視していきます。
※ところで、消費税はどうなったっけ??
今回の改正ではないのですが、「そういえば消費税ってもう8%から上がらなくなったの?どうだっけ」と思われている方も多いのではないでしょうか?本当は今年(平成29年)4月に10%になる予定だったのですが、再来年(平成31年。平成という呼び方ではなくなってるかもしれませんが)10月からに再延期されています!消費税増税に加えて政府の財政支出を減らす緊縮財政を試みたことが、アベノミクスの減速にかなり影響したという反省もあるとかないとか・・。混乱はまだまだ続くかもしれませんね。
おさらい!ふるさと納税
2016/12/25 12:09:29 節税
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ここ数年、お礼品の充実度がヒートアップしてきたふるさと納税。気になるけどまだしていない、という方からがっつり満喫されている方まで様々ですが、今回はそのふるさと納税をおさらいしてみます。
ふるさと納税とは、お住まいの市町村以外へ住民税を納税すること(形式は寄附ですが)を言います。寄附金の使い道を指定して地域を応援する、というのが当初の目的でしたが、いまはその寄附のお礼品が充実しているため、これを目当てにふるさと納税をされる方がほとんど(ですよね?)です。
お礼品には各市町村特産のお肉、お米、海産物、果物から、お酒、お菓子、宿泊券、中にはカブトムシやニュースキャスター出場権(!)など様々なものがあります。「ふるさとチョイス」などのポータルサイトではカテゴリ別、地域別、寄附金額別などで細かく条件設定して探すことができます。
時々勘違いされている方がいらっしゃいますが、ふるさと納税では節税できません。計算上、ふるさと納税をすると税負担が2,000円は必ず増える仕組みになっています。ただ、2,000円を超えるお礼品がもらえることで、結果的にお得だということです。
また、1年間でできるふるさと納税の金額には実質的に限度があります。限度額を超えると、寄附した金額に対して控除される所得税と住民税の額が少なくなり、自己負担が2,000円を超えます。限度額の計算は省きますが、例えば給与所得のみで年収600万円の方ですと6万円~8万円位になります(扶養家族数、その他の所得控除項目等により変動します)。前述の「ふるさとチョイス」などで、かなり正確な試算ができますので、参考にされてから計画的にふるさと納税しましょう。このようなポータルサイトに一度登録しておいてからクレジットカードなどでふるさと納税すると、かなりサクサク進みます。
そしてふるさと納税した後は、確定申告が必要です。勝手には税金の精算はしてくれません。各市町村から「寄附金受領証明書」が送られて来ますのでそれを確定申告書に添付して計算します。
ただ平成28年1月以降のふるさと納税にはワンストップ特例制度というものができており、1年間の寄付先が5自治体までの場合確定申告をしなくても住民税から自動的に精算してくれるようになりました。この制度を利用するためには寄附をした自治体に制度利用の申請書を送りますが、注意しないといけないのは、寄附をした全ての自治体にそれぞれ送らないといけないことです。申請書を送り忘れた自治体があった場合、寄付先が6自治体を超えた場合、申請期限(1/10ころ)を過ぎてしまった場合は、あらためて「全て」の寄附金につき確定申告をしてください。
また、ふるさと納税とは異なりますが、お礼品をもらえる制度として株主優待があります。これは上場株式を持っている株主に対して、配当金と合わせて各企業がお礼品をくれるものです。「株主優待生活の桐谷さん」などが有名です。私も一時期いろいろもらったことがあり、商品割引券、商品詰め合わせ、牛丼金券、居酒屋金券、スーツ贈答券、JR50%割引券、航空料金割引券、スポーツクラブ利用券など結構重宝していました。金券ショップで換金も可能だったりします。こちらに興味のある方は個別に(笑)お問い合わせください。
「103万円の壁」は、これからどうなる?
2016/12/01 12:30:58 節税
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国会では、現在の103万円の壁をなくし、「配偶者控除を150万円以下で最終調整」するなどと取りざたされています。今回はこれをおさらいしてみようと思います。
まず103万円の壁とは、給与収入のみがある方の場合、年間給与収入(総支給額から非課税通勤手当を引いたもの)が103万円以下の場合、給与所得控除(給与収入は自動的に一定額が非課税になる)の65万円を差し引いた金額(=所得金額)が38万円以下となり、この場合その配偶者は配偶者控除という所得控除が受けられるため、所得税や住民税が減額されます。
しかし、この103万円が意識されるあまり、たとえばパートの主婦の方がこの金額を超えないように仕事時間を減らしたり、12月は職場への出勤を控えたりして103万円に届かないようにコントロールする、ということが常習化されています。これが「103万円の壁」です。そのため、この配偶者控除が女性の社会進出を妨げている要因になっているとの指摘が以前からありました。特に日本では労働人口が減少傾向に転じてきている中、女性の労働力が抑制されるというのは経済的にも大きな損失です。
そのため、この配偶者控除の対象となる「年収103万円以下」を「年収150万円以下」に改正すれば、パート主婦がもっとたくさん仕事ができて、より社会進出もできるし、労働力も確保できるというわけです。では、これでめでたしめでたし!でしょうか? ・・・ことはそう単純ではありません。
まず一つ目は、「家族手当」の問題です。民間では減ってきていますが、公務員等は、今でも扶養となる配偶者がいる場合には月額〇万円の家族手当が支給されている、というケースが多々あります。配偶者控除が使えても家族手当は外される、ということになると、やはり年収は抑えられてしまうでしょう。そのため、安倍首相は「家族手当も年収150万円以下を基準とするよう」各企業等にも要請するとしていますが、もちろん義務ではないので、これを機に家族手当自体を廃止するところも出てくると考えられます。
二つ目は、国の「税収確保」の問題です。配偶者控除の基準を切り上げれば、対象となる人数が増え、結果的に税収が下がることになります。個人的には、それで女性の社会進出、労働力が増えるのならいいじゃないか!と思うのですが、国は税収確保のため、配偶者の所得が一定額以上(一説では1,220万円以上)の場合は配偶者控除を使えなくする方向で調整中とのことです。
三つ目は、これが一番重要ですが、「130万円の壁は変わらず存在するため、どうせ150万円ではなく130万円で歯止めされるのでは?」ということです。年収130万円の壁は、社会保険の扶養から外れる収入のラインです(こっちは通勤手当も含みます)。現状でも年収130万円を少し超えるケースでは、税金の負担増よりも、社会保険の負担増の方がはるかに多くなります。私も、たとえ配偶者控除の基準額が150万円以下に改正されても、社会保険負担を考えれば、現状では130万円以下にとどめた方がいいですよ、とお話させてもらうことになると思います。