なぜゴーン氏は逮捕されたのか
2018/11/30 18:29:23 経済一般
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最近テレビ等で連日報道されている日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏の逮捕のニュース。そもそもなぜ逮捕されたのか、不思議に思われている方も多いのではないでしょうか?私もちょっと違和感を感じております。詳しく見ていきたいと思います。
その逮捕理由ですが、金融取引法違反です。脱税とかではありません。有価証券報告書(株主に見せる用の決算報告書みたいなもの)に自分の役員報酬を少なく記載した、ということです。株主が投資判断するのはこの有価証券報告書が主な材料ですから、そこに虚偽の記載をされるとたまりませんし、もちろん法律違反になりますので、逮捕はまあ仕方ないとしても、なぜこの時期に逮捕なのか、というところに違和感があるわけです。
まず日産は1990年代後半に2兆円の借金を抱え、倒産寸前と言われていました。そこで日産は1999年にフランスの自動車メーカーであるルノー傘下に入り、資金援助を受けました。またゴーン氏が最高経営責任者となり、徹底的なコストカット等を実行しました。その結果2年後の2001年には(当時としては)過去最高の当期純利益2,500億円を達成しV字回復しました。つまり、この時のルノーとゴーン氏はまさに救世主だったわけです。
それだけの功績があるゴーン氏が、年10億円の報酬、また未記載のものを含む年20億円の報酬を受け取っていたとしても、国際的大企業の相場からみても飛びぬけてもらいすぎている、というほどではないわけです。なぜ少なく記載させたのかはまだ明らかではありませんが(脱税目的かもしれませんけど・・)、そうはいっても年間10億円という過少記載金額の事を今まで他に誰も知らなかったというのもちょっと考えにくいと思いませんか?
それが今になって内部告発により発覚し、(国際問題を恐れないと言わんばかりの)電光石火の逮捕劇、メディアも連日の大報道、当時リストラされた従業員までカメラの前に引っ張ってきて「あいつに人生をだいなしにされた」と語らせ、手のひらを180度返したように「ゴーンは悪だった、成敗せねば」との思想を日本国民に植え付けるがごとくですよ。
この辺もよく報道されていますが、今では業績、販売台数などは日産がルノーよりはるかに上を行っています。それなのにルノーは日産の株式の43%を保有する大株主です(日産はルノー株式を15%保有)。日産はもうルノーの助けは必要なくなってきている、逆にルノーは日産の資金や技術を取り込みたい、影響力を保持し続けたい。お互いの利害関係のズレが相当あるわけです。(ちなみに日産は上場企業の中でも一二を争う高配当企業で、ルノーには年間1,000億円以上の配当金を支払っている計算になります)
そこで今回の逮捕劇です。フランス政府が後ろ盾のルノーから来たゴーン氏を、あらかじめ温めていた虚偽記載容疑で更迭、ルノーの息のかからない経営陣を敷き、一気にフランスから日産の主権を奪い返す!というストーリーです。さて、このままうまくいくかどうか、動向を注視したいと思います。(もしかしたらフランス政府と落としどころができているのかもしれませんね。だってこんな国際問題を恐れない日本、なかなか見ないですよね)
意外と知らない「印紙」について
2018/10/30 14:05:45 節税
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領収書や契約書に貼る「印紙」ですが、「なんでこんなものを貼らないといけないの?」と思われている方も多いのではないでしょうか?(私も今だにそう思っています(^_^;))今回は印紙について取り上げてみたいと思います。
まず印紙の意味ですが、これはもうズバリ「税金」です。一定の契約書や領収書を「紙で」作成したら、その作成に対して税金がかかります。だからその契約書等に印紙を貼っておかないと「納税漏れだよ」となり、貼っていないことが発覚すると後で3倍の印紙税を徴収される(割印の押印漏れは1.1倍)ことになります。
逆に言うと印紙には税金の意味しかありませんので、印紙を貼っていないからと言って契約書の効力には一切影響ありません。また印紙に半分印影がかかるように押す「割印」も、印紙を使いまわさないようにする、ということ以外の意味はありません。
なお先ほど「紙で」とわざわざ書きましたが、じゃあ契約書を電子文書で作ったらどうなるの?という質問には、「紙でないので印紙はいりません」という答えになります。これは印紙税法に「印紙を貼るのは書面の文書のみですよ」と書かれているからです。そのため、電子証明書を活用した電子書面の開発が徐々に進んでいます(それほど広がっていない気はしますが・・)。
またよく聞かれる質問の中で、「領収書に印紙を貼るのは5万円以上(平成26年3月31日までは3万円以上)ということだけど、この5万円は消費税込みですか?抜きですか?」というのがあります。答えは、領収書に書く金額が税込金額のみなら税込で判定、消費税を別記するなら税抜で判定となります。別記とは、例えば51,840円(消費税3,840円含む)のような書き方です。
漏れやすい印紙として、「継続的取引の基本となる契約書」があります。大きく「業務提携していきましょう」という内容の書面が多く、具体的な請負金額等が明記されないものがほとんどなので印紙を貼らなくてよさそうだと勘違いしがちですが、4,000円の印紙が必要です。意外と高額です!
また先の西日本豪雨により被害を受けた方が作成する印紙税については、一定の非課税措置が設けられました。すでに貼ってしまった場合でも税金の還付を受けられます。おおまかな条件は下記の通りですが、詳細は国税庁HPを見られるか、弊社各担当者にお問い合せください。
①不動産の譲渡または建設工事の請負に関する契約書であること
②り災証明等を受けた被災者が作成する契約書であること
③災害により損壊した建物の譲渡等や、代替建物の取得等にかかる契約書であること
知ってますか?税金天国
2018/10/01 16:06:27 経済一般
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「タックスヘイブン」という言葉を聞かれたことがありますか?巨大企業や富裕者層の方が税率の低い、または無税の国に会社などを設立して、納める税金を安くして租税を回避するという方法です。「え、そんな国があるの?じゃ早速その国に会社を・・」と思われる方もいるかもしれませんが、基本的には税法でその抜け穴はふさがれています。
私も最初勘違いしましたが、「タックスヘイブン」はTax Heaven(天国)」ではありません。Haven(避難所)という意味です。たしかに税金を全く納めなくていい、というのは人によっては天国みたいなことなのでしょうが(^_^;)
タックスヘイブンとなる国は、無税のケイマン諸島などが有名です。カリブ海に浮かぶ小さな島の国です。広い意味ではシンガポール(法人税率約17%)なども該当します。そもそも税金をかけなくて国として成り立つの?という疑問も出てきますが、これといった産業がないため、無税によって国外から企業を誘致することでその国の経済が成り立っていたりしますので、タックスヘイブンとなる国にとっては一般的な税率で税金をかけることは国の存亡にかかわるため、無税の国がなくなることはまず考えにくいと言われています。
タックスヘイブンを使って租税を回避するために、例えば国内で作った商品を儲けなしにケイマン諸島の子会社に売って、その子会社が利益を乗せてまた販売することで、利益が出ても税金を払わなくて済む、という方法が思いつくと思います。しかし日本の法人税では、「儲けなしに国外子会社に売る」ことが正常な取引行為ではないので、妥当な利益を乗せて販売する価格に売上、利益を修正されます。これを「移転価格税制」と言います。
またこの税制をクリアしたとしても、日本の会社等が50%以上株式を保有している等(詳細はもっとありますが割愛します。また改正により例外もあり)の国外子会社で、税負担割合の著しく異なる(ここも詳細割愛します)場合については国外子会社の利益であっても日本の法人税が課税されます。これがいわゆる「タックスヘイブン税制」です。
ただ、税制により世界のすべての租税回避が阻止されているかというと、そうはなっていないようです。少し前に問題になったパナマ文書だったり、アメリカの某巨大企業がほとんど法人税を払っていないと問題になっていたりすることからもそれが伺えますよね。その国での活動の実態が外部にわかりにくくなるようになっているのもタックスヘイブンの特徴のひとつですので・・。
なおフォローしておきますと、タックスヘイブンにある全ての会社が租税回避目的で設立されているわけではなく、逆に本国と現地国で法人税を二重課税されないようにタックスヘイブンが選ばれていたり、タックスヘイブンでは情報保護、匿名性の観点が強いため政治的に敵対している国の企業と商売するためタックスヘイブンを経由させたりすることもあるようですよ。
不動産の「時価」とは?
2018/09/02 16:29:18 経営
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不動産を売買する場合に、血縁関係のない第三者間の取引ですと、双方が同意した金額がそのまま時価となります。しかしそれが親族間であったり個人と関係会社との取引ですと、金額は市場の相場を無視して相当安い金額で取引したりすることも可能です。それだと容易に利益調整ができるとして、税務当局はさまざまな内容の規制をもうけています。
一例として、「個人が、法人対して時価の2分の1以下の金額で不動産等の譲渡をした」場合、その売値は実際に売った金額ではなく「時価」で売ったものとみなす、という規定があります。たとえば5,000万円で買った土地を3,000万円で法人に売却しても、その時の時価が6,500万円であれば、受け取った金額が3,000万円であっても、個人は3,000万-5,000万=2,000万円の損失とはみられず、6,500万-5,000万=1,500万円の利益(=譲渡所得)があったものとして所得税・住民税が課税されます。
さらにいいますと、法人のほうも時価6,500万円のものを3,000万円で譲ってもらったとなると6,500万-3,000万=3,500万円は受贈益と認定されて法人税が課税されます。
このように税法では、「時価」を誤って取引すると売主、買主双方から課税するというダブルパンチを準備していますので、時価を誤ることは致命的な問題になる場合があります。なお今回は「(売主)個人→(買主)法人」でしたが、このような規制は「個人→個人」「法人→個人」「法人→法人」の場合にもそれぞれ異なる取り扱いがあります。今回はこの内容は割愛します。
で、そんな大事な「時価」ですが、実は税法には「時価」は「こう計算するんだよ」という規定は一切ありません。なんでやねん!と思わずつっこみたくなる事実です。そのため税務上の時価の算定は人によっても意見の分かれるところであり、非常に気を遣います。例えば以下のような算定方法が時価の候補にあがります。
(1)近隣の類似した不動産の売買実例をもとに時価を推定する
(2)帳簿上の金額を時価に近いものと考える
(3)毎年発表されている公示価格を参考にする
(4)相続税評価額を参考にする
→土地の場合、一般的に相続税評価額:時価=80:100と言われています
(5)固定資産評価額を参考にする
→土地の場合、一般的に固定資産評価額:時価=70:100と言われています
(固定資産評価額に似て異なるもので「固定資産課税標準額」がありますので注意下さい)
(6)不動産鑑定士の鑑定評価を採用する
このうちいずれの結果を時価として算定するかはケースバイケースのため一概にどれとは言えません。ですので実際に時価の算定が必要な場合はぜひ事前にご相談いただければと思います。
税務調査はどこまで調べられるのか
2018/08/01 09:27:10 税務調査
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まず、税務調査のほとんどは「任意調査」です。いわゆる「マルサ」と呼ばれるような強制調査は、実刑を受けるようなよほど悪質なケースでないとありません。ただ「任意」といっても受けても受けなくてもいい、という意味ではない(納税者には「受任義務」があるため、理由なく断ることはできない)です。事前に連絡があり(通常まず税理士事務所に連絡が来ます)、お互いの日程を調整したうえで開始日を決定します。
調査される会計期間は、通常直近の3年(期)です。たとえば3月決算法人だとすれば、平成27年4月~平成30年3月までの期間になります。ただその期間について継続して会計処理の誤りがある場合などは、その事項について直近の5年までさかのぼって見られることがあります。また、脱税など悪質な行為が発覚した場合は最長7年間さかのぼられます。帳簿書類の保管義務がありますので、帳簿書類がない、と言って逃げることはできません。
では調査官はどこまで帳簿書類を確認してくるでしょうか。通常、3年間すべての書類をすべてくまなく見ることはしません。現地調査(税務署の用語で「臨場」と言います)の期間は通常3~5日くらいが一般的なので、最初から重点項目をいくつかしぼって、主にその関連帳簿を確認してきます。はっきり言いますと、例えば100円の駐車料の領収書などはほぼ見ていないです(だから領収書を保管しないでいいとは理解しないでください)。
以下、特に重点項目にされやすいものを列記します。
(1)売上(特に現金売上)の計上もれがないか
(2)売上の期ズレがないか → たとえば3月決算法人で、①毎月20日締で売上請求をしている場合に、3/21~31日の売上を今期の売上から外していないか ②3月中に納品・サービス提供をしているのに売上請求を4月以降にずらして、今期の売上から外していないか
(3)在庫等の計上金額は妥当か → 大きく利益調整できる項目のため
(4)個人の方に外注費として日当等を支払している場合で、それが「外注費」でなく「給与」に該当しないか → 消費税と源泉所得税の処理誤りにつながる。近年かなり指摘が多くみられます
(5)交際費、消耗品、車両関連費その他の経費が社長等の個人的な支払いでないか
(6)法人と社長個人との取引、関係会社間取引の金額や内容が妥当か