不動産の「時価」とは?
2018/09/02 16:29:18 経営
コメント (0)
不動産を売買する場合に、血縁関係のない第三者間の取引ですと、双方が同意した金額がそのまま時価となります。しかしそれが親族間であったり個人と関係会社との取引ですと、金額は市場の相場を無視して相当安い金額で取引したりすることも可能です。それだと容易に利益調整ができるとして、税務当局はさまざまな内容の規制をもうけています。
一例として、「個人が、法人対して時価の2分の1以下の金額で不動産等の譲渡をした」場合、その売値は実際に売った金額ではなく「時価」で売ったものとみなす、という規定があります。たとえば5,000万円で買った土地を3,000万円で法人に売却しても、その時の時価が6,500万円であれば、受け取った金額が3,000万円であっても、個人は3,000万-5,000万=2,000万円の損失とはみられず、6,500万-5,000万=1,500万円の利益(=譲渡所得)があったものとして所得税・住民税が課税されます。
さらにいいますと、法人のほうも時価6,500万円のものを3,000万円で譲ってもらったとなると6,500万-3,000万=3,500万円は受贈益と認定されて法人税が課税されます。
このように税法では、「時価」を誤って取引すると売主、買主双方から課税するというダブルパンチを準備していますので、時価を誤ることは致命的な問題になる場合があります。なお今回は「(売主)個人→(買主)法人」でしたが、このような規制は「個人→個人」「法人→個人」「法人→法人」の場合にもそれぞれ異なる取り扱いがあります。今回はこの内容は割愛します。
で、そんな大事な「時価」ですが、実は税法には「時価」は「こう計算するんだよ」という規定は一切ありません。なんでやねん!と思わずつっこみたくなる事実です。そのため税務上の時価の算定は人によっても意見の分かれるところであり、非常に気を遣います。例えば以下のような算定方法が時価の候補にあがります。
(1)近隣の類似した不動産の売買実例をもとに時価を推定する
(2)帳簿上の金額を時価に近いものと考える
(3)毎年発表されている公示価格を参考にする
(4)相続税評価額を参考にする
→土地の場合、一般的に相続税評価額:時価=80:100と言われています
(5)固定資産評価額を参考にする
→土地の場合、一般的に固定資産評価額:時価=70:100と言われています
(固定資産評価額に似て異なるもので「固定資産課税標準額」がありますので注意下さい)
(6)不動産鑑定士の鑑定評価を採用する
このうちいずれの結果を時価として算定するかはケースバイケースのため一概にどれとは言えません。ですので実際に時価の算定が必要な場合はぜひ事前にご相談いただければと思います。
税務調査はどこまで調べられるのか
2018/08/01 09:27:10 税務調査
コメント (0)
まず、税務調査のほとんどは「任意調査」です。いわゆる「マルサ」と呼ばれるような強制調査は、実刑を受けるようなよほど悪質なケースでないとありません。ただ「任意」といっても受けても受けなくてもいい、という意味ではない(納税者には「受任義務」があるため、理由なく断ることはできない)です。事前に連絡があり(通常まず税理士事務所に連絡が来ます)、お互いの日程を調整したうえで開始日を決定します。
調査される会計期間は、通常直近の3年(期)です。たとえば3月決算法人だとすれば、平成27年4月~平成30年3月までの期間になります。ただその期間について継続して会計処理の誤りがある場合などは、その事項について直近の5年までさかのぼって見られることがあります。また、脱税など悪質な行為が発覚した場合は最長7年間さかのぼられます。帳簿書類の保管義務がありますので、帳簿書類がない、と言って逃げることはできません。
では調査官はどこまで帳簿書類を確認してくるでしょうか。通常、3年間すべての書類をすべてくまなく見ることはしません。現地調査(税務署の用語で「臨場」と言います)の期間は通常3~5日くらいが一般的なので、最初から重点項目をいくつかしぼって、主にその関連帳簿を確認してきます。はっきり言いますと、例えば100円の駐車料の領収書などはほぼ見ていないです(だから領収書を保管しないでいいとは理解しないでください)。
以下、特に重点項目にされやすいものを列記します。
(1)売上(特に現金売上)の計上もれがないか
(2)売上の期ズレがないか → たとえば3月決算法人で、①毎月20日締で売上請求をしている場合に、3/21~31日の売上を今期の売上から外していないか ②3月中に納品・サービス提供をしているのに売上請求を4月以降にずらして、今期の売上から外していないか
(3)在庫等の計上金額は妥当か → 大きく利益調整できる項目のため
(4)個人の方に外注費として日当等を支払している場合で、それが「外注費」でなく「給与」に該当しないか → 消費税と源泉所得税の処理誤りにつながる。近年かなり指摘が多くみられます
(5)交際費、消耗品、車両関連費その他の経費が社長等の個人的な支払いでないか
(6)法人と社長個人との取引、関係会社間取引の金額や内容が妥当か
聞こえてきた、消費税増税の足音
2018/07/02 18:49:30 経済一般
コメント (0)
消費税率の10%への増税は、再延期されていたため一時は忘れられていたかもしれませんが、来年(2019年)の10月に実施されることが決定しています(そのころにはもう平成も終わっていますね!)。もう1年ちょっととなり、最近になって負担増の影響を懸念する声が再び聞こえ始めてきました。
どうしても増税しないといけないのか、というところなのですが、日本政府からすると、消費税は景気動向に左右されにくい、安定した税収入が見込める税目(毎年10兆円前後で推移している)であり、また脱税のしにくい税目であるとも言えます。ちなみに消費税の「節税」も、基本的には不可能です・・。
ところで、なぜ来年の「10月」なのか(いままでの増税時期はいずれも4月)というのは、平成から新年号に変わる月が「5月」であるのと同じくらい不思議な感じがしますが、巷の噂としては以下のようなことがその理由だと言われています。
(1)来年4月には統一地方選挙があるため、それを避けた政権にとって逆風となるため)
(2)2020年に東京オリンピックがあり好景気に沸くだろうから、増税による景気の冷え込みを回避(相殺)できる
いずれも理由になっていないような感じもしますが、とにもかくにも、現状日本の景気は比較的良いという判断でしょうから、いよいよ消費税率10%の時代が訪れてしまうことが濃厚です・・。
ちなみにですが、新年号が来年の1月からにならなかったのは、年末年始に宮内行事がいくつもあることと、天皇陛下に在位30周年をお迎えいただきたかったこと等があり、4月からにならなかったのは、年度替わりでみなさん忙しいから(!)等みたいです(^_^;)
ただ、今は日本も、そして世界的にも景気が良いとはいえ、米中の貿易摩擦懸念など不安材料もありますし、なにより前回消費税率が5%→8%に上がった直後の平成26年第2四半期の実質GDPは年率-6.8%だったわけですからね!アベノミクスの勢いも完全にぶっとばしてしまった、わずか4年前の出来事を忘れてはいけないわけです。今回オリンピック期待の1本足打法でどこまで乗り切れますかね(>_<)
また今回、いままでの消費税増税時と異なる最大の出来事として、消費税軽減税率の導入があります。今までも、増税前のリース契約の消費税率が一部残っている、などのケースはありましたが、今回は思いっきり8%と10%が混在し続けることになります。食品などの生活必需品は8%に据え置く、というのが本来の目的ですが、たとえば「コンビニの弁当は8%だけど、外食は10%」など、間違いなく混乱をきたすと思います。私の正直な心の声は、「誰じゃ !こんなめんどくさいこと考えたんは!!」です(>_<)国が自ら国民の生産性を下げるような手間ばっかりかかる制度をつくってどう責任とるつもりなんでしょうか・・。
子や孫にまとまったお金を贈与する方法
2018/06/02 13:10:56 相続対策
コメント (0)
「事前に預金の一部を子や孫に生前贈与して相続税対策したい」「子どもが結婚して家を買うので、その資金を援助してあげたい」など、まとまったお金を贈与したい、というご相談はいつも多くお受けします。今回はその方法についてまとめました。
まず、預金やその他の財産を生前に贈与した場合は、贈与税が課されます。あげた人ではなく、もらった人が贈与税を申告して納税しないといけません。そして、贈与税は(死後の贈与である)相続税よりもかなり高いです。たとえば1,000万円の預貯金を贈与した場合、贈与税は177~231万円かかります。ですので、相続税はかかりそうにないし、急いであげる必要がなければ、相続まで待つという選択肢もあります。
もっと早く贈与したい場合は、贈与税の「年間110万円までは非課税」の枠をうまく利用します。以前は非課税額は年間60万円まででしたが、平成13年以降はずっと110万円になっています。たとえば1,000万円を10年間に分けて贈与すれば、各年の贈与額は100万円で、非課税範囲内なので、結果無税で贈与ができます。
ここで注意しないといけない点があります。たとえば、「毎年孫の誕生日に100万円を10年にわたって贈与」したとします。先ほどの話ですと贈与税は0円になりそうですが、税務署はそうは見ません。「総額1,000万円を10年に分けて贈与するという贈与契約が締結されていた」とみなし、贈与した初年度に1,000万円の贈与契約があったとして贈与税(上記の177~231万円)が課されます(こういうのを「連年贈与」と言います)。
こうみなされないためには、①毎年、贈与する日をずらす、②(税額が0円でも)贈与税申告書を提出しておく、③可能ならば毎年贈与契約書を作成する、などの対策が必要です。
また他にもよくあるケースとして、「孫名義の預金をつくっておいてその口座に毎年贈与してあげる。その通帳は孫が成人したら渡すつもり」という方法です。これにも注意が必要で、相続税の調査等があった際に税務署は、「それは孫の名義になっているだけの被相続人の預金ですね(いわゆる「名義預金」)、とみなし、贈与したつもりなのに改めて相続税が課される場合があります。
こうならないためには、①通帳の存在を孫に教えておく、②孫の口座用の銀行印は別途つくる、③時々その口座からお金をおろしたりして、贈与専用口座にしない、などの対策が必要です。可能ならば、普段使いの孫名義口座に直接贈与したほうが良いです。
なお、住宅を買うための資金を贈与する場合や、教育資金を贈与する場合には、別途贈与税の非課税の特例があります。たとえば平成30年では住宅資金贈与の贈与税非課税の特例として、上記110万円の非課税枠と別に、700万円または1,200万円の非課税枠の適用を受けられる場合があります。詳しくは担当者にお問い合せください。
好景気は続くのか
2018/05/01 15:34:00 経済一般
コメント (0)
日経平均株価は22,495円(4/30現在)と、リーマンショック前の高値を大きく超えています。2月に暴落局面を迎えるかと思う時もありましたが、結局持ち直しております。上場企業の業績も、過去最高益をたたき出しているところも多いですし、たとえば最も景気に敏感であるとされる半導体関連の企業も絶好調です。スマホ需要は減りつつありますが、IoT関連、ビッグデータを取り扱うPC関連、仮想通貨のマイニングPC関連などに使う半導体の需要が旺盛なようです。
世界に目を向けてみても、アメリカを中心に景気は良いです。それにしてもトランプ大統領のやり方というのが色濃く出てきましたね。北朝鮮問題でも、もしかしたら戦争になるかもと思わせました。まさかないとは思うが、あのトランプ大統領ならやるかもしれない、と思わせるいわゆる瀬戸際外交を展開し、現在では和平の方向に急展開しています(これも本物かわかりませんが(^_^;))。そのやり方からしても、米中の貿易摩擦などもまさに同じ手法で、まず関税をかけるよとガツンと打ち出し、貿易戦争になるかもと思わせています。でもおそらく最初から落としどころは決めているのでしょうね。貿易戦争になるのがいかに自分たち(アメリカ)にとっても無益かをわかっているはずですから、きっと。
地元広島でも、景気がいい実感はあります。現在の好景気は2012年12月から続いていると言われています。前回の「実感なき好景気」(2002年2月~2008年2月)に次ぐ長い景気局面ですが、その時よりは実感されている方も多いのではないでしょうか。直接オリンピックとは関係ない地域でも建設関係はずっと堅調ですし、広島中心地では中古マンション価格等も高騰しており、ミニバブルか?とすら思うことがあります。最近オープンした広島のアウトレットでもアルバイトの時給が期間限定で1,500円だったり、求人をかけても募集がこないのは業種を問わずよく聞かれます。
この景気はどこまで続くのでしょうか?株式も4月からは外国人投資家も買いに転じていたりと、今のところ景気が後退する兆候はあまりないようですが、日本は構造的な大きい問題を抱えています。人口減少問題です。普通に考えると人口が減少するのに不動産の需要が増加することは考えられません。一等地を除いて土地価格の下落は基本的に避けられないと思います。歴史上、人口が減少した国で繁栄した国はひとつもないらしく、あまりに希望がない結果のためこの事実は伏せられたという話も聞いたことがあります(真偽のほどは定かではありません)。
今後すぐに出生率が上向くとは考えにくく、この問題の対策としては移民を受け入れるしかない、という意見もあります。特に中国などアジアの富裕層の移民を受け入れるということで、その前段階としての外国人旅行者(インバウンド)数の増加政策とも言われることがあります。人口減少を食い止めるのか、もしくは人口が減少しても衰退しない「歴史上で初めての」国になれるのか、いずれかが果たせないと日本の将来は決して明るくはないと言えそうです。