インボイス制度 ~大増税への新たな布石~
2021/10/01 17:41:32 経理事務
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消費税のインボイス制度が令和5年10月に導入されるのに伴い、令和3年10月より登録申請の受付が開始されました。インボイスは取引時に「適格請求書」を使用して売手側が買手側に消費税率や消費税額などを正確に伝えるものです。
適格請求書は基本的には今までの請求書、領収書等と内容はほぼ変わりません。税率ごとの消費税額を区分表示することは令和1年10月の軽減税率導入時にすでに求められていますので、変わる部分は「登録番号」を記載することくらいです。この登録番号を税務署から発行してもらう申請の受付が開始されたと言うことになります。令和5年10月1日からの登録を受けるためには令和5年3月31日までに申請をする必要があります。弊社でも申請等の対応を順次させていただく予定です。
それがなぜ大増税への布石になるのかということですが、まず登録番号のない請求書等は仕入税額控除ができません。課税事業者(簡易課税選択時を除く)は、売上と一緒にもらった消費税額から経費支払と一緒に払った消費税額を引き算して残りを納税するのですが、登録番号の記載のない請求書・領収書を受け取った場合はこの引き算ができず(開始後6年間は一部経過措置あり)、納める納税額が増えます。
次にこれが最も大きい点ですが、課税売上高が1,000万円以下の免税事業者(消費税を納めていない事業者)はそもそも登録番号がもらえません。その結果仕事の締め出しをくらう可能性が出てきます。はっきり言って小規模事業者いじめの制度なのです。
例えばある課税事業者が下請けに500万円+消費税50万円の仕事を出す予定とします。下請事業者Aは登録番号があり、下請事業者Bはないとします。課税事業者はAに仕事を出す分には今まで通り何の問題もないですが、Bに出した場合は消費税50万円の仕入税額控除ができず50万円の納税が増加します。こうなると課税事業者はBに仕事を出すと損をするので仕事を出さなくなり、結果的にBは元請から締め出されることとなってしまいます(500万円+消費税0円でBが仕事を受けることも考えられます)。
Bはこれを逃れるためにどうするか。免税事業者の立場を捨て、課税事業者となることを自ら届け出て選択し、消費税50万円を納税することになります。今まではBからすると消費税の50万円はもらいっぱなし(これを益税といいます)だったのですが、それができなくなります。国はこの益税を無くし税収を上げることと、益税を無くすことで公平感を高め次なる税率引き上げへの布石とすることが本当の目的なのです。
すべての業種がこのような締め出しを受けるかはわからないですので、免税事業者の方が課税事業者を自ら選択すべきかどうかは難しい判断になります。
LINEでのやり取りが税務調査の証拠書類に!
2021/09/01 13:48:31 税務調査
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令和2年12月に裁決された国税不服審判所での事例で、LINEでのやり取りの画像データを出力した資料をもって、国税当局が「元代表者は退職後も経営に関与して、この資料のように指示を出しているから、実質的に退職したとは認められず、退職金の損金参入を否認する(=経費と認めない)」という見解を出しました。このケースでは関与不十分として最終的には国税当局が負けているのですが、問題はLINEの画像データが税務調査で使われ、証拠書類の形式としては有効であったということです。
このケースでは画像データの入手経路は明らかになっていませんが、納税者が自ら提示したとは思えず、職権で秘密裏に入手していたと考えるのが自然だと思います。
そもそも国税当局は銀行取引を職権で閲覧するのは日常茶飯事ですし、最近の税務調査でもパソコンに保存されているメールのやり取りや、請求書等の作成のためのエクセルデータの閲覧を求められることが増えて来ました。当然のように会社のホームページや代表者のSNSもチェックされています。
少し前の税務調査ではこんなやり取りもありました(一部加工しています)。「(税務署)社長、社長のスマホのLINEを開けて、友達検索のところに「○○さん」と入力して検索実行して、見せてください」「(私)何のためですか?プライベートなスマホなので見せる必要性がありません」「(税務署)〇〇さんとの帳簿外での金銭のやり取りがないか確認するためです」・・最近は国税当局はIT関連にかなり明るくなっている印象です。
暦年贈与が廃止!?
2021/09/01 13:46:02 相続対策
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年間110万円までの贈与は非課税になる暦年贈与ですが、この非課税枠が廃止されるのではないかという声が最近大きくなっております。発端は令和3年度の税制改正大綱で「贈与税と相続税をもっと公平に課税していく」と暗に匂わせてきたことにあります。つまり、生前に贈与しておいたら無税なんて不公平じゃないか、ということです。
現行でも、相続が開始した場合には「相続人に対する3年前までの贈与財産」は相続財産に含め直して相続税を計算することとなっています。ただもちろん3年超前の贈与財産や、相続人以外(例えば、孫など)への贈与は相続財産に含め直しません。
実際に、数年以内に改正になる可能性はかなりあると思います。110万円の非課税枠が0円になるというよりは、上記の含め直しする期間を10年に変更する、もしくは何十年でも期限なく含め直す(アメリカ式)方法が考えられます。個人的には、民法上の特別受益とも合致するので、10年が有力ではないかと思っています。
相続税の税務調査
2021/07/30 15:29:50 税務調査
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相続税の申告をした場合、一般的には「4件のうち1件は税務調査が入るよ」と言われていました。しかし平成27年に基礎控除が大幅に引き下げられ、申告しないといけない対象の人が大幅に増えたため、平成27年度以降は全ての申告のうち税務調査が入る割合は11~12%程度に下がっています。
しかしいざ相続税の税務調査が入ると、修正申告になる割合は常に8割を超えています(国税庁の統計年報等で発表されている)。これは法人税や所得税の税務調査と比較してかなり高い割合ですが、理由ははっきりしています。
なぜなら、法人税や所得税の税務調査の場合は調査が始まってから帳簿書類等の確認をしていくのに対し、相続税の税務調査は先に銀行等で納税者周りの取引履歴等の調査を全て済ませておき、課税漏れがありそうな事項を把握してから、税務調査開始の連絡を入れます。つまり「来週から税務調査させてくださ~い」と電話があった時は、すでにもうネタは上がっているわけです。そりゃあ修正申告の割合は高いよね、という感じです。
ちなみに当事務所では平成26年~令和3年の間に約30件の相続税の申告をさせていただいておりますが、1件の税務調査も入っておりません。申告書上での詳細な説明や添付書類で計算根拠を明確にしておくことによって、「わざわざ調査に入る必要はないよ」という申告書づくりを心がけているからだと思います。
損したのに課税される?仮想通貨の「総平均法」
2021/06/29 15:13:12 株式投資
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世界各国でコロナによる経済腰折れを防ぐべく大規模な財政出動がなされた結果、その資金の一部は株式市場のみならず、金(きん)などの資産や、果ては高級時計や絵画などにも投資・投機資金として流れ、高騰の一途をたどって来ました。最近ではコロナ後の景気V字回復は既定路線で、その後のインフレ懸念で利上げが早期に行われるという警戒感が市場の話題の中心となりつつある状況です。
ところで、一時はほぼ話題に上がらなくなった仮想通貨(=暗号資産)も昨年12月頃から大幅上昇しており、例えばビットコインは昨年秋100万円→今年4月高値700万円→6月400万円、と波乱の動きになっています。こうなると3年前同様に仮想通貨の利益を確定申告する方が多数出てくると思うのですが、当時と比べて確定申告時の計算方法も整備が進んでおり、国税庁もかなり詳細なQ&Aや計算用のエクセルシートまでHP上で発表しております。
基本的な計算方法が3年前と変わった訳ではないのですが、1点気になったのは「評価方法の届出がない場合は、総平均法で計算する」(令和1年度より)という部分です。
計算方法には移動平均法と総平均法があり、移動平均法は売買の都度平均単価を計算し直していく方法で、総平均法はその1年間で買った金額と数量を全部足し算して、年末に初めて平均単価を出す方法です。通常トレードする場合はその都度利益が出たか知りたいので、移動平均法の計算を(自然に)行っているのですが、怖いのは移動平均法だと損してるのに総平均法だと利益が出てる計算になる可能性があることです。
例えば①500万円で1BTC買い、②450万円で1BTC売り、③300万円で1BTC買い(保有中)の場合、移動平均法では①と②だけを考えるので50万円の損になります。ところが総平均法だと(①+③)÷2の400万円が平均単価となるので、逆に50万円の利益になります。
もちろん逆のケースも起こりうるのですが、いずれにせよ総平均法は売買感覚に合わないので、仮想通貨の申告をされる場合は移動平均法の届出を合わせて出されることをおすすめします。確定申告書と同時に、翌年3/15までに提出すればOKです。