シャープが中小企業に!? 「1億円に減資」とは
2015/05/31 15:12:52 経済一般
コメント (0)
シャープという日本を代表するグローバル企業があります。一時は「世界の亀山モデル」と自負する液晶TVなどの液晶関連製品で好調でしたが、ここ数年は液晶自体の差別化が難しくなってきており、液晶関連に設備投資を集中しすぎた反動もあり、ここ3年で9,000億円の連結赤字を出すなど業績が急激に悪化しております。
そのシャープが新中期計画の一環として5/11に発表した(正確にはリークされた)のが、「1億円に減資」して「中小企業」となり、「中小企業の税制上の優遇措置を受けながら経営を立て直す」というものでした。
「えっ、あのシャープが中小企業って・・!?」という強烈なインパクトの発表でした。正直、「そんなのありなの?売上約3兆円、従業員5万人で中小企業??」と思いました。でも、中小企業の定義はいくつかあるものの、法人税法上の中小企業の判定は「資本金が1億円以下か否か」だけなのです。売上高も従業員数も関係なし。
「確かに合法だけど、そこまでやるか・・」と思っておりましたら、翌12日に経済産業省の「企業再生としては違和感がある」などの指摘を受けて、13日には「やっぱり資本金は5億円にします(現在は約1,200億円)」と発表しました。現場の混乱や、政界とのパイプの薄さが露呈されてしまいました。 結局、14日の決算発表では2,223億円の最終赤字を出し、単体決算ではとうとう債務超過になってしまいました。
そもそも、「減資」と経営再建は関連があるのでしょうか?シャープが行う予定の減資は、資本金を過去の利益剰余金のマイナスと相殺するというもので、乱暴に言いますと「資本金/利益剰余金」という仕訳を帳簿上で切るだけです。実質的には何も変わりません。既存株主にも、特に有利にも不利にも働きません。
既出の「優遇措置を受ける」とか、また累積損失が消えることによって「将来、配当を出しやすくする」などとニュースでは出ていましたが、正直、存続すら危うい企業が将来株主に出す配当のことなど優先して考えている場合ではありません。表に出ていない本当のねらいがあるはずなのです。
有力な考えとしては、将来増資をして資金調達をするための布石、ということです。「増資のための減資」です。今回の減資では株主には有利不利はないと書きましたが、将来多額の増資を行えば、一株ごとの価値は大きく下がります(要するに株価が下がります)。今は、インターネット上でいくらでも情報があふれているように見えますが、本当に大切な情報は、やはりどこか一部で握られていると考えるべきだと思います。
女性の社会進出を阻む、103万円の壁と130万円の壁
2015/05/01 13:06:16 節税
コメント (0)
奥様がパートで働く、などの場合によく言われる「(年収)103万円の壁」。これを超えると扶養から外れたり、税金(所得税、住民税)が増えたりするらしい・・、と漠然とはわかっていても、意外と正確な仕組みはわかっていない場合があります。今回はこれを整理してみようと思います。
※以下、「年収」はすべて給与である前提とします。
まず、「扶養」には2種類あり、壁となる限度額が異なります。(1)税金の扶養から外れるのが年収103万円、(2)健康保険の扶養から外れるのが130万円、になります。この2つの違いがごっちゃにならないようにしなければなりません。
そして第一の壁、奥様の年収が103万円を超えたとき、何が起こるか。まず奥様本人の税金が発生しますが、これはわずかです。あまり気にする必要がありません。問題は、ご主人の「配偶者控除(38万円)」が外れることです。控除額が38万円ということは、ご主人の税率が33%だとすると、38万円×33%=125,400円の増税になります。実際には「配偶者特別控除」があるため、壁を1円でも上回った瞬間すぐに12万円が増税になるわけではありませんが、奥様が103万円を少し超える程度の年収だと、ご主人の税金が増え、かえってご夫婦の合算の手取り金額が減ってしまうという逆転現象が起こる可能性があります。また、ご主人の会社の社内規定によって、配偶者控除が外れると「家族手当」の支給が減額される、というようなケースもありますので注意が必要です。
次に第二の壁、奥様の年収が130万円を超えたとき、何が起こるか。奥様が健康保険の扶養から外れます。つまり、奥様が別途自分で健康保険に加入しないといけなくなります。そうなると社会保険料の負担が一気に大きくなります。特にご主人が政府管掌社会保険(いわゆる社保)に加入していた場合は、奥様は国民年金第3号被保険者として、年金の支払いが免除されているような扱いになっていましたが、これも自分で負担しないといけなくなったりします。ですので、奥様の年収が140万円位ですと、ほぼ確実に年収130万円弱の場合より夫婦の合算の手取りが減ります。10万円分以上のただ働き・・ということになってしまいます。一生懸命仕事したのに、かえって手取りは減り、子どもの保育園の保育料も上がった・・なんてことは絶対に避けたいですよね。
では、どうすればいいのか。方法は2つです。1つ目は、税金の負担と社会保険料の負担の増加を埋めるくらい、奥様が稼ぐことです。目安としては年収160~170万円以上です。ただそうなると、子どもさんが小さくて正社員としては働けない方には厳しい金額です。
となると、第2の方法、奥様の年収を103万円以下に抑える、という方法を取らざるを得なくなります。ひと月の収入を103万円÷12月=85,000円程度に抑える、年末近くなると103万円を超えないように勤務時間を調整する・・・。
この動きこそが、まさに女性の社会進出を阻む大きな壁となっているわけです。