セブンイレブンのMBO頓挫に思うことあれこれ
セブンイレブンの経営が大きく揺れているのはご存知でしょうか?カナダのコンビニ大手シュタール社が昨秋、セブンイレブン親会社のセブン&アイ・ホールディングス(以下「セブン」という)に対して7兆円という超大型買収の提案を行いました。
2/末時点でのセブンの時価総額は5.5兆円位ですので、この買収が成立すると株主にとっては差し引き1.5兆円の価値が向上するわけですから、「早く買収案に乗ってくれ」と思っている株主は少なくないはずです。業界1位のセブンは最近業績が低調で、2位のファミリーマートや3位のローソンとの差が縮まっているのではと言われる状況なのでなおさらです。
ところが、自力での経営を続けたいセブン側は「創業家が9兆円でMBOを計画」と発表しました。MBOとは経営陣が株式を買い取り経営権を取得することで、成功すれば創業家は国外企業からの買収を阻止できるということになります。
結果的にこのMBOは頓挫しました。当初から創業家が準備できる金額は5,000億円程度しかないと言われており、残りは銀行融資や他社からの出資でまかなう、という計画のようで、専門家からは当初からこのMBOは難しいだろうと言われておりました。
最終的には、ファミリーマートを運営する伊藤忠商事が1兆円の出資を見送ったことにより、資金の目処がたたなくなり頓挫に至ったという流れです。
9兆円でのMBOという大風呂敷を敷いておいて頓挫したのですから、経営陣はただではすまないよなと思っていたら、3月に入り社長交代というニュースが入ってきました。セブンは採算の合わないイトーヨーカドーを大量閉店するなど事業の立て直しを図っていますが、7兆円の買収に応じないのなら、具体的な事業立て直しの施策や増配、自社株買いなどを発表して今の時価総額を7兆円程度まで持っていかないと株主代表訴訟を起こされる可能性があります。そのような施策が出ることを期待してセブンの株式を買っておく、というのもアリかもしれませんね。
ところで、このような外国企業による大型買収提案というのは今後もっと増える可能性があります。ただでさえ円安により日本企業が買いやすくなっている上、日本企業の株式は基本的に割安のまま放置されています。実際のところ日本企業は最近では失われた30年を経てようやく高収益企業に変わりつつありますし、特にニッチ分野では世界一の技術をもつ企業なども多いです。その上最近では株価を意識して増配や自社株買いを積極的に行っている企業もかなり増えています。外国の投資家にとって日本はまだ「30年も経済成長せず、今後急激に人口が減っていく明るい見通しのない国」というイメージが多いですが、実態は変わり始めています。日経平均が4万円を超えてきた要因は、外国投資家が日本株を買い始めたのもありますが、内部留保が豊富な日本企業が積極的な自社株買い(2024年で14兆円以上!)を続けていることも大きく、日本企業自体が自社の株価を「割安で今が買い時」と思っているからこそ、積極的に自社株を買っているのです。
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