不動産を活用した相続税対策
不動産を活用することで相続税対策になるケースは多々あります。例えば「相続した実家の土地に賃貸アパートを建築する」などです。では、なぜ賃貸アパートを建築すると相続税が下がるのでしょうか?
土地の上に空き家となっている実家の建物がある場合、この土地評価は更地と同じ評価になり、路線価をもとに計算した評価額から基本的には減額要素がありません。しかしこの実家を取り壊して賃貸アパートを建築した場合、土地の評価額は一般的に15%程度減額されます。
アパートを建築した土地は更地ではなく「貸家建付地(かしやたてつけち)」の評価となり、更地評価から「更地評価×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」の額を減額することができます。これはアパートの敷地となっている土地は、(部屋を借りている人の住む権利などがあるため)更地に比べて売却などの処分がしにくいので、その分評価が下がることになります。
借地権割合は例えば広島市では50%の地域が多く、借家権割合は全国一律30%、賃貸割合は満室ならば100%となりますので、仮にその土地の更地評価が1億円だとしますと、貸家建付地の評価は1億円-(1億円×50%×30%×100%)=8,500万円となり、更地より15%程度低い評価となるわけです。
またアパートを建築した場合の建物そのものの評価ですが、一般的に建物の相続税評価額(固定資産税評価額と同額)は建築費用の60%程度になると言われています。さらに貸アパートの評価額は借家権割合と賃貸割合を控除しますので、仮に1億円で貸アパートを建築したとしますと、建物の評価額は1億円×60%=6,000万円 →6,000万円-(6,000万円×30%×100%)=4,200万円となり、現金を1億円もっていた場合と比べて相続税評価額が58%程度減額されます。
またこの評価減は借入をしてアパートを建築する際にも有効で、1億円の借入があると債務として全体の相続税評価額から1億円が控除される一方、建物の評価は4,200万円ですので、やはり全体の相続税税金対象額が5,800万円減少し、同じ節税効果が得られます。
注意点としては、あくまで貸アパートは賃貸「事業」ですので、その経営がうまく行かないようでは本末転倒になってしまいます。立地が命になりますし、信頼できる建築業者を選べるかどうかも重要です。またいくら現金で持っているよりも相続税評価が下がるからとはいえ、手持ち資金をすべて使ってしまうと将来の生活費や相続税納税資金がなくなってしまいます。あくまで一定額は現金を残しておくことが大切です。
賃貸事業はうまくいけば税金対策だけではなく、将来の家賃収益を相続人に残してあげられるという意味合いも出てきます。相続時精算課税制度や法人の設立を使って、早い段階で家賃収益を子や孫に入るようにすることも可能です。事前にしっかりとシミュレーションをした上で、有効だと判断できれば積極的に活用してもいいと思います。
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