不動産の「時価」とは?
不動産を売買する場合に、血縁関係のない第三者間の取引ですと、双方が同意した金額がそのまま時価となります。しかしそれが親族間であったり個人と関係会社との取引ですと、金額は市場の相場を無視して相当安い金額で取引したりすることも可能です。それだと容易に利益調整ができるとして、税務当局はさまざまな内容の規制をもうけています。
一例として、「個人が、法人対して時価の2分の1以下の金額で不動産等の譲渡をした」場合、その売値は実際に売った金額ではなく「時価」で売ったものとみなす、という規定があります。たとえば5,000万円で買った土地を3,000万円で法人に売却しても、その時の時価が6,500万円であれば、受け取った金額が3,000万円であっても、個人は3,000万-5,000万=2,000万円の損失とはみられず、6,500万-5,000万=1,500万円の利益(=譲渡所得)があったものとして所得税・住民税が課税されます。
さらにいいますと、法人のほうも時価6,500万円のものを3,000万円で譲ってもらったとなると6,500万-3,000万=3,500万円は受贈益と認定されて法人税が課税されます。
このように税法では、「時価」を誤って取引すると売主、買主双方から課税するというダブルパンチを準備していますので、時価を誤ることは致命的な問題になる場合があります。なお今回は「(売主)個人→(買主)法人」でしたが、このような規制は「個人→個人」「法人→個人」「法人→法人」の場合にもそれぞれ異なる取り扱いがあります。今回はこの内容は割愛します。
で、そんな大事な「時価」ですが、実は税法には「時価」は「こう計算するんだよ」という規定は一切ありません。なんでやねん!と思わずつっこみたくなる事実です。そのため税務上の時価の算定は人によっても意見の分かれるところであり、非常に気を遣います。例えば以下のような算定方法が時価の候補にあがります。
(1)近隣の類似した不動産の売買実例をもとに時価を推定する
(2)帳簿上の金額を時価に近いものと考える
(3)毎年発表されている公示価格を参考にする
(4)相続税評価額を参考にする
→土地の場合、一般的に相続税評価額:時価=80:100と言われています
(5)固定資産評価額を参考にする
→土地の場合、一般的に固定資産評価額:時価=70:100と言われています
(固定資産評価額に似て異なるもので「固定資産課税標準額」がありますので注意下さい)
(6)不動産鑑定士の鑑定評価を採用する
このうちいずれの結果を時価として算定するかはケースバイケースのため一概にどれとは言えません。ですので実際に時価の算定が必要な場合はぜひ事前にご相談いただければと思います。
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