なぜ今、広島カープの人気に火が付いたのか(後編)
まず2009年に新球場(マツダスタジアム)ができたのが大きいですよね。当時は「(球団のお金が)大丈夫なの?」と思いましたが、メジャーリーグの球場を参考に造られた、ボールパークという考えが斬新でした。野球そのものだけではなく球場全体がアミューズメントスポットである、という概念が多様な娯楽ニーズにうまくはまりました。
どーんと正面にあるグッズショップはセンスのいいものがそろっており、コンコースのお店は食事やお酒類も豊富。新幹線やスポーツクラブからも球場が見えるし、座席も広くて種類も多い。試合前の練習風景を見ながらビール片手にコンコースをぐるぐる回るだけでも楽しめるんですよね。
また、広島カープには他球団にはないアイデンティティがあることも、今の時代に共感を得ています(昔ならそこまでとりあげられなかった)。戦後復興の象徴として創設され、資金が足りなくなったときは「たる募金」で市民も多額の資金援助をして、いまの球団がある・・。広島に縁はなくとも「判官びいき」で応援したくなるわけです。日本酒を製造販売する方が銘柄のひとつひとつにかける思いやこだわりを日々フェイスブックにつづったところ、それに共感する人が殺到し売り上げが何倍にもなったという話を聞いたことがあります。物があふれている時代だからこそ、物があるだけでは満足できず、その背景にある人の「思い」がより重要視されるのだと思います。
広島カープは野球の「見せ方」にも長けていると思います。ただ野球を見せるだけではない、でも選手を「アイドル」として見せたりしているわけでもない。ファンとの「一体感」を演出しています。ジェット風船もカープファンが考案したらしいですし(初めに広まったのは甲子園ですが)。
あとはやっぱりグッズですね。昔(私が子どものころ)はグッズと言っても野球帽くらいでしたが、今は日常の雑貨にもカープ坊やがあふれてますよね。広島駅を降りると車掌の制服を着たカープ坊やがどどーんと迎えてくれますし、センスのいいグッズが多いので女性が身に着けていても違和感ないです。カープは球団やマスコットを「コンテンツ」としてとらえている(私見ですが)ので、グッズの創り方の発想が柔軟で、いいと思います。野球グッズだから野球に関連したものでないといけない、みたいな先入観が微塵もない感じがとても好きです。
いまはシーズンオフなのでカープロスの方も多いと思いますが、カープファンでない方も含めて、いつもとちょっと違った目線で野球を見てみると、新しい発見や楽しさがあると思います。また経営者の方は、広島カープの経営戦略・戦術で自社の経営に生かせる部分がひとつふたつ、見つかると思いますよ!
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