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東芝の債務超過からみる「選択と集中」の是非

2017/03/04 12:18:52  経営
 東芝といえばサザエさんのスポンサーとしてもおなじみの、100年を優に超える歴史を誇る、日本を代表する大企業のひとつです。その東芝が本年度末決算で債務超過に転落することが決定的で、そして債務超過回避のために稼ぎ頭のフラッシュメモリー事業を分社化して全株式を売却する見込みとか。なぜ巨大企業がここまでの事態になってしまったのでしょうか。

 報道によれば、アメリカの原発関連事業で今期7,000億円以上の損失が計上されるそうです。前期も原発関連で2,500億円近く損失を計上していますので、2年間で1兆円にせまるというとてつもない金額の損失額です。原発事業は、東日本大震災以前は花形的な事業で、日本の原発技術を駆使して、世界でたくさんの原子力発電所を建設しようとしていました。とくに日立と東芝が積極的だったと記憶しています。その中で2006年に東芝がアメリカのウェスチングハウスという大手原発メーカーをかなり高い金額で買収しています。そもそもこれが間違いだったのではと今では言われています。

 その後、東日本大震災を期に、原発事業は世界的に縮小に入ります。安全性の問題が大きく問われるようになりましたので当然です。それでも東芝は原発事業に強気の姿勢を崩さなかったようです。東芝は家電事業や医療機器事業(これもかなり儲かっていた!)を売却し、原発事業とフラッシュメモリー事業に賭けるという「選択と集中」を行いました。

 その結果、アメリカの原発事業は追加建設費用で損失が大きく膨らみ、しかも工事コスト増をこちらで負担するというオプション契約までついていたそうで、撤退するにも多額の違約金が発生し、動きがとれなくなっているようです。そして、とうとう稼ぎ頭のフラッシュメモリー事業を手放すこととなり、これで債務超過を解消できたとしても、もう稼げる事業が東芝には残っていないという事態に陥りそうです。

 ここからはえらそうに私見を書かせていただきますが、結果的に東芝は「選択と集中」すべき事業を見誤った、もしくはそもそも「選択と集中」をすべきでなかったのだと思います。原発事業もフラッシュメモリー事業もハイリスクハイリターンの事業だと思うので、一本足打法でこけてしまった液晶事業のシャープと同様、一度こけてしまうと取り返しのつかないようでは企業を永続させるのは難しいと思います。

 事業を2本柱にするのであれば、一方が不調の時はもう一方で補える、そんなバランスが求められるのであって、一方がこけたら全て終わりという選択をしてはいけない、というのは私たち中小企業にも当然あてはまることなので、肝に銘じないといけないところです。またいろいろな記事をみていると、そもそも東芝は「選択と集中」をすべきではなかったというものもありました。もともと有望な複数の事業をバランスよく展開する企業だったので、それを続ければよかったのだと。もちろん中小企業が限りある経営資源を特定分野に集中させることはとても有効だと思いますが、その先に事業の水平展開が見えず、いつまでも一本足打法を続けるのは「企業を長く存続させる」ことに必ずしもつながらないのだと思います。


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税理士・代表取締役 沢辺勲
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