結局のところ、交際費はいくらまで使ってもいいのか?
「交際費はいくらまで使ってもいいのか?」との質問を受けることがよくあります。
税務署の調査が入ったとき、いくらまでなら認めてくれるか、という意味合いです。経営者の方なら、誰でも気になるところです。結論から言いますと、いくら使ってもかまいません。事業上の経費である限り、100万円でも、500万円でも、経費は経費なのですから、金額で左右されるいわれは全くありません。税法のどこにも、金額の多寡で経費性を判断する条文はありません。
ただ、法人の交際費には税金計算上、損金から外される部分があります。平成25年度までは、資本金1億円以下の中小法人は年額600万円が上限で、範囲内でもそのうち1割は自動的に外されていました。資本金1億円超の法人には交際費の損金算入は一切認められていませんでした(これは税金の計算式の問題なので、「経費にならない」とは意味合いが違います)。
しかし、平成26年度※からは一部緩和され、中小法人は年額800万円が上限になり、1割カットもなくなりました。資本金1億円超の会社にも一部損金算入が認められます。
この改正には、交際費を認めて税収が減ることよりも、交際費を使ってもらって景気の底上げに貢献してもらう方が重要だとの政府の意図があると言えます。多少御幣のある言い方をすれば、「どんどん交際費を使ってね」というメッセージが発せられたわけです。
ですので、経営上必要と判断される交際費はしっかり使って、全て交際費として処理してください。ただし、やはり問題となるのは、それが「事業上の」交際費であるか否かです。
言うまでもなく、家族での食事や、個人的な買い物は経費になりません。しかし、経営者同士での飲食や、同業社団体の活動費など、プライベートと事業上との境界線があいまいなものが多く含まれるのが実態です。税務当局としても、シロともクロとも断定できない、「一部交際費」的なものが多く出てくると、落としどころとして、「同規模の同業者の平均的な交際金額が○○円だから、それを超える部分はプライベートと考えられますね」という話をしてくるわけです。こういう話を聞くと、「やっぱり交際費の上限ってあるんだ」と誤解しがちです。でも、それは税務上の判断材料としては不十分ですよね。
交際費としての主張を強くするためには、とにかく交際費の領収書に接待相手の「①会社名、②主な担当者、③人数」をメモしておくことです。それでも税務当局は「本当にその人といったのか?証明できるのか?」というかもしれません。ですが、それ以上こちらで立証する必要はありません。税務当局が領収書のひとつひとつの相手先を実際にあたっていくようなことは、実質的にできないでしょう。よほど高額悪質な事案でない限り、人手不足の税務当局にそのような時間はありません。
最後に、平成24年に交際費に関する画期的な判例が出ておりますのでご紹介しておきます。
簡単に言いますと、個人の弁護士さんが、弁護士会の活動に関連して支出した交際費が税務調査で否認されたことに関して訴訟を起こしたものです。第一審では棄却されましたが、控訴した東京高裁の判決(平成23年(行コ)第298号。平成24年9月19日判決)では一部判決の変更(認容)があり、二次会の費用を除き経費として認められました。この時の裁判所の判断の中に、「業務の遂行上必要であれば、必ずしも直接的な交際費に限定されない。なぜなら、直接という解釈が税法上見当たらないためである」という趣旨のものがありました。今までは類似した税務訴訟ではそのような判断は全く出てこなかったので、大きな変化といえます。売上に直結する交際費に限定されなくなったのですから!
ただしこの訴訟は国側が上告しておりますので、その結果によっては判断が再度ひっくり返るかもしれないことはご了承ください。
※正確には、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度です。
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