会社の「事業承継」の考え方
「事業承継」とは、事業を次の世代に引き継ぐことを指しますが、何だか漠然としていますし、具体的な計画方法を理解されている方は少ないのが実情だと思います。ただ、事業承継に関するご相談は年々増えております。団塊の世代が70歳前後になられている、という人口構成も関係していると思います。
事業承継には、大きく以下の3つの要素があります。
(1)「社長のイス」の承継
(2)「オーナー株式」の承継
(3)「社長の個人財産」の承継(譲渡、贈与、または相続)
そして、これらを以下の誰に承継するのか、という問題があります。
(1)息子などの親族
(2)自社幹部役員や従業員
(3)社外への売却(いわゆるM&A)
そして、特に中小企業では、親族に事業を承継させるメリットは、「やっぱり息子に継がせたい」という心理面以外にも、下記の通り多くあります。当事務所では、まずは親族が事業を承継することを基本線として検討すべきであると考えております。
(1)幹部が納得する(幹部の一人が承継者になると、他の幹部が納得しないことが多い)
(2)銀行が納得する(社長の個人資産も引き継いでくれるため、担保面でも安心する)
(3)外部要素に左右されにくく、人生設計を含めた事業承継計画が立てやすい
書店で事業承継に関する本を探すと、自社株評価をいかに下げて税金を抑えるか、という点に多くを割いているものが多いです。たしかにそれも大事ですが、事業を永続的に繁栄させていくためには、次の世代への体制づくり、組織づくりが最重要です。そこには多くの人々の思い、心、気持ちがからみあってまいりますので、それらをおろそかにしないことです。テクニカルな株式・節税対策はその後でいいのです。
ただ税務的、会社法的には、株式の譲渡はとても重要です。その注意点を以下に掲げます。
(1)過半数(51%)では不十分で、67%(3分の2以上)を次期社長に株式譲渡するべき
→重要事項の決定権を抑えるためには3分の2以上の議決権が必要
(2)67%以外の部分でも、できる限り次期社長が株式を保有すべき
→株式買取請求権を行使される、株式の買取代金が多額になる、というリスクが残るため
(3)自社株評価を意図的に下げて株式の譲渡にかかる税金を抑えるためには、5~10年の
スパンで株式譲渡のタイミングを計るべき
(4)「経営承継円滑化法」などの優遇措置は、よくよく検討すべき(後戻りできない)
最終的な事業承継のゴールは、事業承継に関わる皆様の幸せです。幸せな事業承継が行えますよう、歩んでまいりましょう。
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