音楽は無料なのに、ミュージシャンはどうやって儲けるのか?
2026/10/01 16:25:35 経営
コメント (0)
最近は、新曲が発売されても「CDを買う」という機会がすっかり減りました。YouTubeを開けばミュージックビデオが無料で見られますし、Spotifyなどを使えば月額料金だけでほとんど無制限に音楽を聴くことができます。では、ミュージシャンはどうやって収入を得ているのでしょうか?
昔なら「CDを100万枚売れば100万枚分のお金が入る」という非常に分かりやすいビジネスでした。しかし現在は、違います。むしろ「無料で聴いてもらう」こと自体が重要な営業活動になっています。例えばあるミュージシャンが新曲をYouTubeに無料で公開したとします。その曲を100万人が再生したとしても、YouTubeの広告収入だけで莫大な利益が出るわけではありません。しかし、その100万人の中から「この曲、いいな」と思う人が増えればSpotifyなどで繰り返し聴いてもらえます。
Spotifyでは、単純に「1回再生されたら○円」という仕組みではなく、サービス全体の再生数に占めるアーティストの再生割合などに基づいてロイヤリティが分配されます。また、音源そのものの権利者に支払われる「レコーディングロイヤリティ」と、作詞・作曲者などに支払われる「パブリッシングロイヤリティ」という2種類の収益があります。
実は一番大きいのがライブです。音楽を無料で聴いてもらった結果ファンが増えれば、今度はライブに来てもらうことができます。8,000円のチケットを5,000人が買えば4,000万円です。さらにTシャツやタオルなどのグッズが売れたり、CMや映画の主題歌などのタイアップにつながったりします。つまり、無料で音楽を聴いてもらう→ファンを増やす→ストリーミング収入→ライブ・グッズ→CM・タイアップ→著作権収入、という「無料で集客して、別のところで収益化する」という仕組みができています。昔のCD販売とは全く違う考え方です。
そして考えてみれば、これは音楽業界だけの話ではありません。例えば税理士がYouTubeで「社長が知らないと損する税金の話」を無料で公開したとしても、動画そのもので大きな収益を得る必要はありません。その動画を見た社長が「この税理士は税務に詳しいな」と感じ、何か困ったときに相談してくれれば、それが顧問契約や相続、事業承継などの仕事につながります。飲食店なら、無料のSNS投稿で料理の魅力を発信する。美容院なら、無料でヘアケア情報を発信する。住宅会社なら、無料でリフォームの知識を発信する。いずれも、「無料の情報」は「商品」ではなく、「集客のための入口(=フロントエンド)」と考えることができます。
そう考えると、最近のビジネスでは「無料で何を提供するか」が非常に重要なのかもしれません。昔は「無料=儲からない」という感覚がありました。しかしインターネットの時代になると、無料だからこそ多くの人に届き、その中から本当のお客様を見つけることができるのだと思います。
ちいかわの映画大ヒットから学ぶ営業戦略
2026/09/01 15:32:59 経営
コメント (0)
この夏、ちいかわの映画が大ヒットをしているそうです。8月31日時点の公開38日間で観客動員849万人、興収122億円は同時期の「名探偵コナン」より早いペースで、例えば「すみっコぐらし」等のかわいい系コンテンツの映画は興収10億円程度が一般的だそうなので、ちいかわの大ヒットはまさに異例とのことです。そしてこのちいかわが大ヒットした理由を調べてみると、「ジブリ」でも「君の名は。」でも「鬼滅の刃」でもない、全く異なる営業戦略があったことがわかりました。
まず集客を「特典」に大きくフォーカスしています。ミニフィギュア、ボンボンドロップシールなどの入場者特典を第1弾→第2弾と2週間おき位に小出しにしており、9月5日からは第4弾となります。しかもランダム全8種などと用意されており、グッズを集めたいファンが何度も映画館に足を運ぶ、という構造を作っています。つまり特典を映画のおまけではなく主力に据えた戦略だと考えられます。音楽CDにライブ応募券や総選挙の投票権をつけるやり方に似ているかもしれません。
そして映画の広告ですが、TVCM等で大金を使って広告することはせず、ファンからのSNS投稿をメインに据えています。「◯◯ちゃん出た!」「4回行ってコンプリート」等の投稿が大量に発生すると、それを見たファンがまた映画館に足を運びたくなる、という好循環が出来上がります。しかもその自然発生を待つのではなく配給先の東宝自体が「映画館でちいかわ投稿キャンペーン」を主催しており、その好循環を自ら作り出すという戦略を取っています。
もちろん「ちいかわ」というコンテンツそのもののブランド力が強いですし、また今回の映画は以前Xでのみ長期間連載されていてファンの間ですでに人気が高かった「セイレーン編」だそうで、内容も子ども向けでは全然無い深い作品性で、伏線回収もすごいそうです(すみません、私は観てませんが)。ベースとなるコンテンツと内容がそもそも強い、という前提は当然あってのことだと思います。
で、この営業戦略をお手本にして他業種の営業戦略にも水平展開できないかなと考えました。「レッドオーシャン市場で、既存顧客の購入頻度をどう上げるか」という題材になりますので、特典を「次回来店・次回購入の理由を作る装置」にしないといけないですね。例えば焼肉店だと9月「希少部位フェア」→10月「ワインのペアリング企画」→11月「年末限定コース」など、料理そのものを大幅に変えずに来店する理由を次々に投入する、というのはどうでしょうか。住宅リフォーム業なら3年目「外壁・防水チェック」→5年目「設備チェック」→7年目「再塗装診断」を建物メンテナンスカルテに基づき無料で行い、定期的に接触することで次の工事が必要になる前に相談を受ける理由を投入する、というようなこともできるかもしれません。次々に投入する理由は、期間を限定することで顧客にFOMO(Fear Of Missing Out)、つまり「今行かないと、やらないと損する」という心理を与えて来店、接触を促すためです。
これからはPDCAではなく、DCAPで
2023/06/24 15:49:34 経営
コメント (0)
PDCAという経営用語があります。とても有名なのでご存知の方も多いと思いますが、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の順番で業務を行い、ActionからまたPlanに戻って業務を循環させることで、継続的な業務改善を促す手法です。
綿密な経営計画を作成し、それに沿って業務を実行する。その業務結果を測定値や経営成績という形で評価し、数値目標等に届かなかった部分の改善点を洗い出し、次の計画に繋げる・・。その流れ自体はとても合理的だと思いますが、私にはひとつ疑問があります。
最初にいきなり「綿密な計画」って立てれますかね?私は自信がありません。高すぎる無謀な売上目標や、逆にほぼ現状維持でも達成できちゃう低いハードルでは意味がないばかりか、その後の実行内容がおかしくなってしまいます。なによりこの早い時代の流れの中、正確に未来を予測して計画を立てるなんて不可能です。誰がこのコロナ禍の時代が来ることを予測できましたか?
それに、もしその計画が上司や金融機関が作成したものだとして、その内容が自分にとって腑に落ちないものだったら・・。やる気になりますかね?人間は自分が腑に落ちないままで行動しても、結果を出せない生き物だと思います。
私は、今の時代はDoから始めるべきだと思います。まずやってみる!そしてやってみた結果を評価する、うまくいかなかった部分の改善点を考える。・・ここまでの材料が揃ってから、初めて計画をたてるのです。五里霧中のなかで頭の中だけで立てた計画と、実際にやってみたことで得られた結果の材料をもとにたてた計画、どちらの精度が高いか、言うまでもないですよね。
何より自分の行動の結果をもとにした計画なので、とっても腑に落ちると思います。やる気も出ますし、結果もきっと違ってきます。つまりPDCAの順番で回すのではなく、DCAPの順番で回すのです。まあ回り初めてしまえばどちらも順番は同じなのですが、DCAPのほうはセンスメイキング(←気になる方はググってみて下さい)という考え方に近くなると思います。
注意しないといけないのは、いきなりDoから始めるって、場合によっては無謀なケースもあると思います。失敗しても引き返せる、失敗時の損失は許容範囲内で収まるようにしておく、というリスクヘッジは必ず必要になります。あとは行動を重視するあまり、自分の行動だけを信じちゃう、自分しか信用できない!という感覚になってしまうのも危険です。偏りすぎないバランス感覚も持つことも必要だと思います。
ライバルとは、もう切磋琢磨しない
2023/05/01 14:36:57 経営
コメント (0)
受験勉強やスポーツにおいて、仲間と切磋琢磨することでお互いが成長するのはとても素晴らしいことだと思います。この考えは経営にも応用され(レッドクイーン理論と言います)、高度成長期ではライバル社と製品の品質向上を競い合うことで、結果として日本製品のネームバリューが上がり、日本企業は世界市場を席巻しました。
しかし時代は移りゆき、ライバルを意識するあまり小さな改変しかできなくなったり、ライバルの真似ばかりしてなんとか自分のシェアを減らさないようにする、といったことに終始するようになってしまいました。その結果IT時代の到来などの大きな変化に対応できなくなり、例えば日本企業がガラケーの細かいスペック競争に気を取られているうちに、スマホ市場で世界から駆逐されてしまいました。時代の移り変わりのスピードが急激になった現在では、ライバルとの切磋琢磨では大きな環境変化に対応できないのです。
もちろん切磋琢磨そのものに意味がなくなったわけではありません。これからは自分の未来のビジョン、つまり「したい・なりたい自分」を想い描き、その未来の自分と切磋琢磨すべき時代に突入しているのだと思います。
二宮尊徳の言葉から思うことあれこれ
2023/02/01 17:44:22 経営
コメント (0)
突然ですが、二宮尊徳(二宮金次郎)をご存知ですか?薪(まき)を背負いながら本を読んでいる銅像が小学校にありましたよね、あの方です。「勤勉」のイメージはあるものの、何をした人か知らないという方も多いと思いますが、江戸時代後期に荒れた農村の復興を指導し、また道徳と経済の両立を説いた「報徳思想」を唱える思想家でした。その二宮尊徳の残した言葉の中に、こんな名言があります。
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」
かなりストレートかつ本質をついた言葉だと思います。企業・事業者の目的は利益を出すことであるのに間違いはありませんが、経営理念もなくただただ顧客から売上を搾取するような行為は犯罪と同じだ、と断じています。顧客に、ひいては社会に役立つ商品・サービスを提供し、それに見合う対価を得ながら発展することこそ企業の存在意義だということですね。企業が継続的に発展していくには、顧客・社会に貢献するという視点・観点を忘れることがあってはならないと私も思います。
また後半の言葉も厳しいですね。いくら顧客・社会のためという理念があっても、必要以上な安売りや過剰サービスで企業が疲弊し、利益を残すことができなければ永続的に良質な商品・サービスが提供できなくなり、結果的に顧客・社会を裏切ることになる。永続的な実現ができないような経済活動は結局寝言(=意味がない)と断じています。
ところで、最近賃上げの話題が多くなっております。ファーストリテイリング(ユニクロ)がこの春から最大40%の賃上げを行うなど、大手企業で賃上げの動きが相次いでいます。たまった内部留保を活用して、有能な人材を確保していくという動きは日本全体にとっても良いことだと思います。賃金が上がる→購買意欲が増える→企業の業績が良くなる→賃金が上がる→・・の好循環がなかったから、日本は30年間経済成長しなかったわけですから。
一方中小企業はどうでしょうか?賃上げできますか?どうしても必要な人材には(引き止めという意味も含めて)賃上げが必要になってくると思います。そうなると、企業に必須でない人材の賃上げまでする余力がない中小企業では、給与格差が拡大していくのかなと思います。
企業としては、従業員の給与を絞って絞って利益を搾取するようでは最終的には必要な人材まで流出することになり、継続的な発展はないでしょう。かといって大盤振る舞いばかりしていては資金がもたなくなり、結局最終的には職員を失業させてしまうことになるかもしれません。まさに二宮尊徳の言う通りになってしまいます。給与体系の見直しが必要でしょうし、人材配置や社内業務の合理化、また商品・サービスの差別化など、やるべきことをやる企業とやらない企業との格差もまた、拡大していくのだと思います。