生成AIを使い倒す時代がやってきた
2025/10/01 16:34:25 経済一般
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アメリカのGAFAMのうちMeta、Amazon、Alphabet(グーグル)、Microsoftの4社で2025年だけでも約3,200億ドルをAI技術関連に投資するそうです。途方もない額ですが、もはや事業投資の意味だけではなく、世界中の情報、インフラの覇権を握ることで政治的・軍事的な影響力や支配も考えているのかもしれません。
そして一般的に生成AIが普及し始めたのは2023年ころからですが、厳密には「AI」と「生成AI」は意味や範囲が異なります。AIは人工知能やその技術の総称ですが、生成AIは、そのうちテキスト・画像・音声などの新しいデータを生成するAIのことを指します。メールの文章を自動作成したり、文章(プロンプト)から画像を作ったりするのが生成AIです。
その生成AIで有名なものはChatGPT、Gemini、Copilotなどですが、調べてみると結構たくさんの種類があるようですね。また無料版と有料版のものがあり、何百ページもの長文分析や画像解析、音声解析、ファイル分析などを行うのであれば有料版が必要になりますが、文章入力で回答をもらう、という用途が主であれば無料版でも充分そうです。
私も最近は、少し複雑な税務相談についてまず生成AIに回答してもらい、その回答を裏付けする形で関連法令などを確認していく、という使い方をしています。とっても優秀ですが、最新の改正内容についてはアップデートが充分でないのか、間違った回答が返ってくることもよくあります。「その部分は間違ってないですか」と再質問すると、「さすがですね!」と褒めてくれます(生成AIの種類によっては塩対応のものもあるらしい)が、再回答の内容も充分でなかったりするので、今のところ税務に関する信用度は80~90%位という感覚です。あくまで回答のたたき台として使う感じです。
また最近会計面で話題になっているのは、領収書を重ねてそれを1枚ずつめくる動画をGeminiに読み込ませると、経費精算に使えるような一覧表を自動作成してくれたり、複式簿記による会計仕訳を自動生成してくれるというものです。これが高精度でできてしまうと、AI-OCR対応の会計ソフトが要らなくなるかもしれません。AIを使いこなせない会計事務所は近い将来消滅してしまうのでは、と思いましたね。
生成AIの使い道は無限で、例えば自社の経営現況を詳しくプロンプト入力して、「5年後に年商10億円にするために必要な経営計画を、同業他社の傾向も踏まえて、マーケティング面、人事面、財務面を中心に立ててください」と質問すると、豊富な情報量を元に、精度の高い計画を立案してくれます。上場企業でも、自社でカスタマイズした生成AIの回答を元に新商品を開発したり、経営そのものを行っている会社があるくらいです。
ただあくまでも生成AIの提示するものは「提案」であり、それを元に思考し、決断し、行動するのは経営者自身です。ボスは社長であることに変わりない、ということさえ忘れなければ、生成AIはとても優秀なパートナー、アシスタントになってくれると思います。
生成AIは日進月歩でどんどん使い方も変わってくると思います。事業経営にもプライベートにもうまく活用して、人生を高めるものにしていきたいですね。
相互関税 その後・・
2025/06/02 17:53:57 経済一般
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相変わらず世界中を振り回しているトランプ大統領ですが、日経平均株価は3月下旬の38,000円から31,000円まで暴落後、1ヶ月くらいかけて元の38,000円まで回復しました。とりあえず相互関税が90日間停止されているのと、その間に各国との取引がまとまっておそらく世界経済はそうひどいことにはならないだろう、という雰囲気が流れています。リーマンショック級の経済崩壊はひとまず回避されました。
中国とも、当初はアメリカが145%、中国が125%の関税をお互いに課すというバチバチのやり合いでしたが、その後アメリカが30%、中国が10%に引き下げることで合意されました。結局脅しだけだったのか、という声も上がり始め、SNS上では「TACO」と揶揄され始めました。これはTrump Always Chikens Outの略で、「トランプはいつも直前になって怖くなって取りやめる」の意味になります。アメリカでは「チキン」は臆病者のことを指します。
さらにこの関税措置に関して、5月28日にアメリカ国際貿易裁判所は「大統領に与えられた権限を超えている」として一部差し止めを命じました。トランプ大統領は即日控訴、今度は翌日5月29日にアメリカ連邦巡回区控訴裁判所がこの差し止めを一時停止する判断を下すなど、アメリカドラマさながらのハチャメチャな動きとなっております。
トランプ大統領の、そしてアメリカの狙いは結局のところ何なんだろう、という感じですが、やはり脅威となってきた中国を潰すことがその目的の一つであることは間違いなさそうです。私が色々読んでいて、「これだな」と思った説は以下のようなものです。
日本は1980年代~1990年あたり、つまりバブル真っ盛りの時、まさに無敵状態でした。日本企業は半導体市場で世界シェアの50%以上を握っていたのを始め、先端エレクトロニクスなどの製造業ではアメリカや近隣諸国をはるかに凌駕していました。アメリカは「この状態は許せない」ということになり、日米貿易摩擦に発展していきました。アメリカによる露骨な日本叩きで、日本のビジネスの土台がどんどん崩されていきました。しかしアメリカは当時も賃金が高く、製造業を大きく発展させる土壌もすでに無かったので、日本が得意としていた分野を中国、韓国、台湾などにシフトさせていったわけです。結果、日本はバブル崩壊から失われた30年に突入し、一方で中国は急激な経済発展、韓国や台湾でも最先端の半導体産業が発展していきました。
そして今まさにアメリカはこの30年前の動きを逆回転させようとしています。経済的、軍事的に脅威となった中国に対し高い関税をかけて世界のサプライチェーンから中国を分断する。中国が得意としている分野をアメリカ国内に戻したいが、やはり製造業に関しては発展させる土壌はすでに無い。ではどこにシフトさせるか。未だ世界有数の技術を有し、戦争もなく政治も安定しており、GDP世界4位の経済規模でありながら30年間も賃金が上がらず製造コストも比較的安上がりな国。そう、30年前に自らの手でぶっ壊した日本に再び製造業のサプライチェーンを構築するのです。
本当にこのシナリオ通りに今からの世界情勢が動くのであれば、日本経済の未来はかなり明るいですし、またこのチャンスを掴まないといけないと思います。日本政府もさすがにこの辺りはよく理解しているようで、実は私は結構期待しています。
リーマンショック級? トランプ大統領の相互関税
2025/05/01 15:07:29 経済一般
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4月2日、世界中に激震が走りました。トランプ大統領が全ての国や地域に一律10%、日本に24%、中国には34%(その後145%にまで引き上げ!)等の関税を課すと発表しました。想定外に高い関税率の発表に、世界中がパニック。そして株価も急落しました。
「相互」関税ということですが、そもそも日本はアメリカに同程度の関税を課しているのかと言うと、決してそんなことはありません。アメリカは貿易赤字が大きいので、それを減らしたという目的があるようです。ただアメリカは金融やITなど関税の関係ない分野で稼いだお金でいろいろなものを輸入しているのですから、貿易赤字になるのは当たり前です。それを「お前らのせいだから今から関税かけるね」は無理筋もいいところなのです。
しかし、この相互関税はアメリカにとって本当にプラスになるのでしょうか?関税はアメリカの輸入業者が納めます(この関税率だと関税総額は2年で100兆円になるとか!この資金を原資に所得減税を実施するのが目的という説もアリ)が、輸入業者はその納税分を商品価格に上乗せします。するとアメリカではインフレがさらに加速します。そして価格が高くなりすぎてモノが売れなくなると経済は冷え込みます。インフレになりながら景気が後退する「スタグフレーション」は、経済状況としては最悪です。また日本企業もアメリカに輸出するモノが売れなくなるので、日本経済も悪化します。世界経済はアメリカを中心に回っていますので、世界中がリーマンショック級の不況になる恐れすらあります。
また「関税が嫌ならアメリカ国内で工場を作って生産しなさい」とトランプ大統領は言いますが、もちろんそんなすぐに工場を作ったり移せるものではありません。例えばアップルはアメリカで使われるiPhoneの約80%を中国の工場で作っています。人的資源を含む複雑なサプライチェーンをすでに中国国内に構築しているのですから、これを全てアメリカ国内に移すなど、やはり無理筋(4月25日に「生産をインドに移す」との発表あり)です。トランプ大統領の真の目的が不明瞭すぎます。目指すゴールを明確にしない指導者というのは、経営方針のない経営者と同じで、ついて来ている者を路頭に迷わせてしまうのではないでしょうか?
なお、トランプ大統領は4月9日にこの相互関税を90日間の停止すると発表しました(中国を除く)。トランプ大統領は今年借換の生じる9.2兆ドルもの米国債の利率を下げたいので、相互関税発表による株式暴落→米国債上昇→米国債金利低下、という流れを狙ったという説があります。経済の教科書的には株価が売られると相対的に国債が買われ、人気化した国債の金利は低下する、ということになります。
ところが、実際には株価の暴落と並行して米国債価格も急落してしまいました。すると意に反して米国債の金利は急激に上昇しました。この米国債価格急落の原因は、日本に次ぐ米国債保有額第2位の中国が、報復として叩き売ったから、という説があります。何にせよ、この米国債金利の急上昇に耐えられなくなったトランプ大統領は、やむをえず90日間の相互関税停止を発表した、というわけです。
90日経過後の世界経済はどうなっているでしょうか。リーマンショック級の経済崩壊を引き起こした大統領、という汚名を着ることをトランプ大統領は望んでいないでしょうから、アメリカにとって有利な何らかのディールが成立すれば、相互関税は引くのかもしれません。
セブンイレブンのMBO頓挫に思うことあれこれ
2025/03/03 17:23:01 経済一般
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セブンイレブンの経営が大きく揺れているのはご存知でしょうか?カナダのコンビニ大手シュタール社が昨秋、セブンイレブン親会社のセブン&アイ・ホールディングス(以下「セブン」という)に対して7兆円という超大型買収の提案を行いました。
2/末時点でのセブンの時価総額は5.5兆円位ですので、この買収が成立すると株主にとっては差し引き1.5兆円の価値が向上するわけですから、「早く買収案に乗ってくれ」と思っている株主は少なくないはずです。業界1位のセブンは最近業績が低調で、2位のファミリーマートや3位のローソンとの差が縮まっているのではと言われる状況なのでなおさらです。
ところが、自力での経営を続けたいセブン側は「創業家が9兆円でMBOを計画」と発表しました。MBOとは経営陣が株式を買い取り経営権を取得することで、成功すれば創業家は国外企業からの買収を阻止できるということになります。
結果的にこのMBOは頓挫しました。当初から創業家が準備できる金額は5,000億円程度しかないと言われており、残りは銀行融資や他社からの出資でまかなう、という計画のようで、専門家からは当初からこのMBOは難しいだろうと言われておりました。
最終的には、ファミリーマートを運営する伊藤忠商事が1兆円の出資を見送ったことにより、資金の目処がたたなくなり頓挫に至ったという流れです。
9兆円でのMBOという大風呂敷を敷いておいて頓挫したのですから、経営陣はただではすまないよなと思っていたら、3月に入り社長交代というニュースが入ってきました。セブンは採算の合わないイトーヨーカドーを大量閉店するなど事業の立て直しを図っていますが、7兆円の買収に応じないのなら、具体的な事業立て直しの施策や増配、自社株買いなどを発表して今の時価総額を7兆円程度まで持っていかないと株主代表訴訟を起こされる可能性があります。そのような施策が出ることを期待してセブンの株式を買っておく、というのもアリかもしれませんね。
ところで、このような外国企業による大型買収提案というのは今後もっと増える可能性があります。ただでさえ円安により日本企業が買いやすくなっている上、日本企業の株式は基本的に割安のまま放置されています。実際のところ日本企業は最近では失われた30年を経てようやく高収益企業に変わりつつありますし、特にニッチ分野では世界一の技術をもつ企業なども多いです。その上最近では株価を意識して増配や自社株買いを積極的に行っている企業もかなり増えています。外国の投資家にとって日本はまだ「30年も経済成長せず、今後急激に人口が減っていく明るい見通しのない国」というイメージが多いですが、実態は変わり始めています。日経平均が4万円を超えてきた要因は、外国投資家が日本株を買い始めたのもありますが、内部留保が豊富な日本企業が積極的な自社株買い(2024年で14兆円以上!)を続けていることも大きく、日本企業自体が自社の株価を「割安で今が買い時」と思っているからこそ、積極的に自社株を買っているのです。
103万円の壁は123万円に後退したが・・
2025/01/06 13:43:04 経済一般
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年末に令和7年度税制改正大綱が閣議決定され、103万円の壁は崩壊しました。具体的には基礎控除が48万円→58万円(ただし住民税の基礎控除は43万円のまま)に、給与所得控除が55万円→65万円に改正され、給与所得のみの場合は年間123万円までの収入につき所得税が本人非課税、かつ配偶者・扶養者の税金上の扶養に入ることができるようになりました。
この改正は令和7年から適用されます(源泉徴収税額の変更はなぜか令和8年から)ので、今年から早速働き方が変わることになるはずですし、日本経済としても「年間給与20万円×パート・アルバイト労働者数」分の労働力が創出されるわけで、労働力不足の解消にも繋がるはずなのですが・・。
だがしかし!今までも配偶者の年間給与収入が150万円以下(令和7年以降は改正により160万円以下)の場合、配偶者特別控除が配偶者控除と同額で適用を受けれるため、すでに実質的にパートの方の103万円の壁は崩壊していたはずでした。でも実際には大きな労働力の創出はされませんでした。なぜでしょうか?
それは106万円の壁、130万円の壁が103万円の壁とはレベチで存在しているからです。年収が106万円を超えると従業員51名以上の会社で社会保険の扶養が外れ(=自身で社会保険等に加入)、年収130万円を超えると全ての会社で社会保険の扶養が外れます。
税金上の扶養が外れるタイミングでは配偶者の所得控除がなだらかに減っていくので、壁を超えた瞬間夫婦合計の手取り額が大きく減ることはないのですが、社会保険の扶養は外れた瞬間、社会保険料の負担が生じて手取り額が大きく減ります。ちなみに130万円を超えて減った手取り額を取り戻すには、151万円位まで働かないと同じ手取り額になりません。感覚的には21万円はただ働きだと感じるかもしれません。
106万円の壁が存在する方にとっては103万円の壁が崩壊しても3万円後ろにメインの壁が存在するため、103万円の壁崩壊に大した意味はありません。130万円の壁が存在する方も、103万円の壁突破時点では手取り額が減るわけではないので既に130万円をギリギリ超えない程度の労働時間で調整をしている方も多いです。その方にとっては103万円の壁が123万円に後退しても、すでにそこは無視しているため影響がありません。
結論を言いますと、103万円の壁を123万円に後退させたことは、働き方という視点からはほとんど意味はないです。ただ近い将来130万円の壁がなくなり106万円の壁に一体化される可能性が高いので、「もう社会保険はあきらめて払って、しっかり働きなさい」というのが国からのメッセージでしょう。
働き方という視点からは意味はないのですが、税金計算上では基礎控除が10万円、給与所得控除が10万円増加したことにより、減税効果はあります。税制改正大綱によると、この改正により6~7千億円程度の減税を見込んでいるようです。一方、防衛特別法人税(仮称)を創設することにより5~8千億円の増税を見込んでいます。令和8年4月1日以後開始事業年度より年間500万円を超える部分の法人利益に対して4%の法人税が課されます。