来年より始まる、スイッチOTC薬控除とは
2016/11/01 11:24:34 節税
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来年(平成29年)より、医療費控除を拡充する意味合いで、スイッチOTC薬控除(セルフメディケーション税制)の制度が始まります。従来の医療費控除だけでは、病院にあまりかからずに市販薬をよく購入される方は、年間数万円位しかせいぜい使わないので、領収書を集めても結局毎年医療費控除が使えない!というケースも多いのではないでしょうか。そのような方にも今後は医療費控除が受けれるようになる可能性があります。
従来の医療費用控除(これは来年以降も変わらず使えます)は、自分と、生計を同じくする家族の医療費や医薬品の合計額が年間10万円(または総所得金額等の5%)を超える場合には、その超える部分の金額(入院給付金等で補てんされる金額を除く)について所得控除を受けれるというものです。来年からは、従来の医療費控除とスイッチOTC薬控除のいずれかを選択できます。重複して使うことはできません。
新制度のスイッチOTC薬控除は、まずその年内に健診、予防接種、がん検診などを受けている必要があります。その方が、その年に購入したスイッチOTC薬の額が1万2千円を超えるときは、その超える部分が医療費控除の対象になります。限度額は8万8千円(つまり合計10万円=従来の医療費控除の足切り額)です。医薬品の領収書や健診を受けたことを明らかにする書類が必要です。
対象となるスイッチOTC薬とは、元々医療用医薬品だったものが、安全性が高いと判断されて一般用医薬品になったものです。対象となる医薬品にはパッケージにロゴがつけられる予定だそうです。現在、指定された医薬品は厚生労働省のホームページなどで発表されています。有名なところでは、鎮痛剤の「ロキソニン」、胃腸薬の「ガスター10」、抗アレルギー薬の「エスタック」などです。
この制度ができた背景には、医療費控除の拡大というよりは、市販薬の購入を促進し、国が7割以上を負担する保険医療での医療費を削減しようという部分が大きいようです。身体のことですので、市販薬で済ませることがどこまでいいのかはもちろんケースバイケースですが、せっかくできる制度ですので、使えるところは使っていきたいですね。なお、スイッチOTC薬は、もちろん従来の医療費控除の対象でもあります。年末調整では医療費控除はできませんので、確定申告をお願いします!
すぐわかる!節税のしくみあれこれ
2016/07/05 14:09:23 節税
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基本的な節税の方法、手法というのは限られています。そして基本的に単純でわかりやすいです。そうでないと、対策をした本人が、後で「どうしてこれをしたことが節税になるんだっけ」となることもあります。随時見直しができないようだと結局使い勝手が悪いです。時々、税法の隙間を利用したすごい節税方法を考え出すかしこい人がいます。でもそういったものは法改正で穴を埋められてしまったり、「租税回避」「行為計算の否認」などとしてクロにされてしまったりします。
個人事業の方の場合は、青色申告特別控除+青色事業専従者給与+小規模共済加入、の3点セットが節税の基本です。これを検討せずに他の節税を検討する、というのはありえません。制度を利用して特典を受け、(可能であれば)親族への給与支給で所得を分散し、小規模共済で老後資金を積み立てながら所得控除を取ります。これが法人であれば、役員報酬の支給、法人契約生命保険、倒産防止共済なども絡めていきます。
これらの節税方法がすぐれているのは、お金が外部に流れない点にあります。制度の利用にお金はいりませんし、親族への給与は家計が同じならばトータルのお金は減りませんし、積立金はいずれ自分の手元に戻ってきます。資金流出がある節税よりも資金流出がない節税の方が優れている、というのが基本です(全てではないですが)。交際費をパーッと使っても減税はできますが、お金は出て行ってますし、そもそも経営的にどうなの?ってなりますよね。
もうひとつのポイントは、その節税が減税なのか繰延なのか、という点です。繰延という言葉は、専門家はあたりまえに使っていますが、ちょっとなじみのない言葉ですね。「今年払う税金を来年払うようにする」のが繰延です。先送りですね。税金が減るわけではありません。ただ、来年なら資金に余裕が出る、とか、今期だけ突発的に利益がたくさんでた、という場合には有効です。
小規模企業共済の一部改正
2016/04/04 17:49:00 節税
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一定の個人事業主または法人役員の方の退職金準備制度として、小規模企業共済があります。独立行政法人の中小企業基盤整備機構が運営しているため安全性が高く、積立型でありながらその支払全額が所得控除になり、かつ受取時の課税も退職所得扱い等になるため優遇されており、非常に使い勝手のいい制度です。この度、4月より一部改正があり、より使い勝手が良くなりました。以下に改正点を簡略に抜粋します。
(1)子などに事業を譲渡した場合に伴う共済金の受取額が増加する
(2)65歳以上になった場合に伴う共済金の受取額が増加する
(3)掛金の中途での減額が(完全に)原則自由となった
当事務所でも、中国税理士協同組合を経由して取次ができますので、ご関心がございましたら、いつでもお問合せ下さい。
で、スーツは経費で落ちないのか?
2016/03/25 18:11:35 節税
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単純だけど、回答が難しいご質問の一つに、「スーツは経費で落ちないのか?」というのがあります。家でくつろぐ時にスーツを着る人はいないのだから、当然経費でしょ!と思われると思いますが、実はそう簡単にはいかないのです。なぜなら、昭和49年の税務訴訟の判例で、「被服については、一般的に個人の趣味嗜好が入る・・・」等の理由により、個人的な支出とされたからです。ですので、税理士や税務署の回答は、基本「NG」と答えざるを得ないのです。
ただ、この見解は今後変わってくる可能性があります。平成26年に、給与所得者が給与所得控除(自動的に一定額が非課税になる)に替えて使える「特定支出控除」の改正があり、この中で、「会社員が仕事で必要なスーツの購入は、必要経費に含めることができる」ことになりました。
会社員には認めて、事業主に認めないのは公平性がないので、今後、明らかに業務のみに使用するスーツについては、経費で落としてもいいという見解に変わってくる可能性は大いにあります。
ただ重要なのは、「業務のみ」に使用することが客観的に認められないといけないので、高額なスーツや、ハデなスーツなどは、やはり難しいと思います。税務署的には、「葬式、結婚式、パーティなど、プライベートでもスーツは着ますよね?」という見方が支配的ですので。
女性の社会進出を阻む、103万円の壁と130万円の壁
2015/05/01 13:06:16 節税
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奥様がパートで働く、などの場合によく言われる「(年収)103万円の壁」。これを超えると扶養から外れたり、税金(所得税、住民税)が増えたりするらしい・・、と漠然とはわかっていても、意外と正確な仕組みはわかっていない場合があります。今回はこれを整理してみようと思います。
※以下、「年収」はすべて給与である前提とします。
まず、「扶養」には2種類あり、壁となる限度額が異なります。(1)税金の扶養から外れるのが年収103万円、(2)健康保険の扶養から外れるのが130万円、になります。この2つの違いがごっちゃにならないようにしなければなりません。
そして第一の壁、奥様の年収が103万円を超えたとき、何が起こるか。まず奥様本人の税金が発生しますが、これはわずかです。あまり気にする必要がありません。問題は、ご主人の「配偶者控除(38万円)」が外れることです。控除額が38万円ということは、ご主人の税率が33%だとすると、38万円×33%=125,400円の増税になります。実際には「配偶者特別控除」があるため、壁を1円でも上回った瞬間すぐに12万円が増税になるわけではありませんが、奥様が103万円を少し超える程度の年収だと、ご主人の税金が増え、かえってご夫婦の合算の手取り金額が減ってしまうという逆転現象が起こる可能性があります。また、ご主人の会社の社内規定によって、配偶者控除が外れると「家族手当」の支給が減額される、というようなケースもありますので注意が必要です。
次に第二の壁、奥様の年収が130万円を超えたとき、何が起こるか。奥様が健康保険の扶養から外れます。つまり、奥様が別途自分で健康保険に加入しないといけなくなります。そうなると社会保険料の負担が一気に大きくなります。特にご主人が政府管掌社会保険(いわゆる社保)に加入していた場合は、奥様は国民年金第3号被保険者として、年金の支払いが免除されているような扱いになっていましたが、これも自分で負担しないといけなくなったりします。ですので、奥様の年収が140万円位ですと、ほぼ確実に年収130万円弱の場合より夫婦の合算の手取りが減ります。10万円分以上のただ働き・・ということになってしまいます。一生懸命仕事したのに、かえって手取りは減り、子どもの保育園の保育料も上がった・・なんてことは絶対に避けたいですよね。
では、どうすればいいのか。方法は2つです。1つ目は、税金の負担と社会保険料の負担の増加を埋めるくらい、奥様が稼ぐことです。目安としては年収160~170万円以上です。ただそうなると、子どもさんが小さくて正社員としては働けない方には厳しい金額です。
となると、第2の方法、奥様の年収を103万円以下に抑える、という方法を取らざるを得なくなります。ひと月の収入を103万円÷12月=85,000円程度に抑える、年末近くなると103万円を超えないように勤務時間を調整する・・・。
この動きこそが、まさに女性の社会進出を阻む大きな壁となっているわけです。