相続税の税務調査
2021/07/30 15:29:50 税務調査
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相続税の申告をした場合、一般的には「4件のうち1件は税務調査が入るよ」と言われていました。しかし平成27年に基礎控除が大幅に引き下げられ、申告しないといけない対象の人が大幅に増えたため、平成27年度以降は全ての申告のうち税務調査が入る割合は11~12%程度に下がっています。
しかしいざ相続税の税務調査が入ると、修正申告になる割合は常に8割を超えています(国税庁の統計年報等で発表されている)。これは法人税や所得税の税務調査と比較してかなり高い割合ですが、理由ははっきりしています。
なぜなら、法人税や所得税の税務調査の場合は調査が始まってから帳簿書類等の確認をしていくのに対し、相続税の税務調査は先に銀行等で納税者周りの取引履歴等の調査を全て済ませておき、課税漏れがありそうな事項を把握してから、税務調査開始の連絡を入れます。つまり「来週から税務調査させてくださ~い」と電話があった時は、すでにもうネタは上がっているわけです。そりゃあ修正申告の割合は高いよね、という感じです。
ちなみに当事務所では平成26年~令和3年の間に約30件の相続税の申告をさせていただいておりますが、1件の税務調査も入っておりません。申告書上での詳細な説明や添付書類で計算根拠を明確にしておくことによって、「わざわざ調査に入る必要はないよ」という申告書づくりを心がけているからだと思います。
徳井さん申告漏れのニュースで思うことあれこれ
2019/10/31 19:02:33 税務調査
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チュートリアル徳井さんの申告漏れのニュースが大々的に報じられています。一説には法人税で3,700万円とか、所得税・消費税・重加算税などを合わせると1億円は超えるとか言われています。
内容を見てみると、脱税というより3年間個人も法人も完全に無申告だったみたいですね。これだけ高収入を得ていて完全放置プレーとは、ある意味気持ちいいですね。もちろん悪い意味でですけど。しかも過去にも3年間無申告を2回やっていて、今回は3年間無申告+その前の4年間の修正申告を指摘されたみたいですね。完全に国税局を怒らせてしまってますね。これがまかり通るなら、税理士制度は廃止でいいです、はい。
これだけ有名人で高収入で、しかも過去にも税務署が入られているのですから、無申告だと100%ばれて重加算税なども追加で納税しないといけないのに、なぜ申告しなかったのか、損得面で考えてもわからないのですが、おそらく記者会見で言われてた通りのままで本当にただただ面倒くさかったのでしょうね。もうそれ以外に理由が見つかりませんから(>_<)
この申告漏れニュース、なぜ明るみに出たのでしょうか。警察が悪質な事件などをマスコミに発表(リーク)するのは有名ですが、脱税等の事件も税務当局か関係者がリークしているのでしょうね。税務当局は守秘義務の観点からリークはしないとも言われていますが・・。億を超える脱税は実刑判決を受ける(執行猶予もつかない)可能性もありますので、一応お知りおきください。
ワイドショーでもこの事件をやっていて、コメンテーターに税理士を呼んだりしてて、税理士っていう業種もちょっと知名度があがるんじゃないかなどと不謹慎なことを考えたりもするんですが、その税理士がメガネをかけたかなり年配の男性だったりすると、「やっぱ税理士ってそんなイメージなのね」と思ったりもします(^_^;)
その番組の中で、「税理士に責任はないんですか」みたいな話が出てきて、「再々依頼をしても会計資料が出てこないと、税理士としても申告のしようがありません。顧問税理士も顧問料を未払いにされてたみたいですし」という意見に坂上さんが「そりゃあそうですよね」みたいな同意をしてくれると、「そうだそうだ。税理士もつらいはずだ」と心の中で応援したりする次第ですね。
徳井さんが個人事務所を法人で設立して・・みたいな話で、少し混乱される方もいると思うのですが、個人事務所の「個人」はあくまで「徳井さん1人の会社」の意味であって、組織としては法人なんですよね。でないと節税にならないですから。法人にした方が節税になるのか?と思われるかもしれませんが、これは確実に節税になると思います(詳細は割愛しますが)。
最後に、修正申告のほうの話で「私服で番組に出ることもあるし、これは経費になると思っていた」と徳井さんが言われてたみたいですが、これは十分経費とみていいと思いますし、詳細はわかりませんが、戦える余地があるはずだよなー、と思っちゃいました。
税務調査はどこまで調べられるのか
2018/08/01 09:27:10 税務調査
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まず、税務調査のほとんどは「任意調査」です。いわゆる「マルサ」と呼ばれるような強制調査は、実刑を受けるようなよほど悪質なケースでないとありません。ただ「任意」といっても受けても受けなくてもいい、という意味ではない(納税者には「受任義務」があるため、理由なく断ることはできない)です。事前に連絡があり(通常まず税理士事務所に連絡が来ます)、お互いの日程を調整したうえで開始日を決定します。
調査される会計期間は、通常直近の3年(期)です。たとえば3月決算法人だとすれば、平成27年4月~平成30年3月までの期間になります。ただその期間について継続して会計処理の誤りがある場合などは、その事項について直近の5年までさかのぼって見られることがあります。また、脱税など悪質な行為が発覚した場合は最長7年間さかのぼられます。帳簿書類の保管義務がありますので、帳簿書類がない、と言って逃げることはできません。
では調査官はどこまで帳簿書類を確認してくるでしょうか。通常、3年間すべての書類をすべてくまなく見ることはしません。現地調査(税務署の用語で「臨場」と言います)の期間は通常3~5日くらいが一般的なので、最初から重点項目をいくつかしぼって、主にその関連帳簿を確認してきます。はっきり言いますと、例えば100円の駐車料の領収書などはほぼ見ていないです(だから領収書を保管しないでいいとは理解しないでください)。
以下、特に重点項目にされやすいものを列記します。
(1)売上(特に現金売上)の計上もれがないか
(2)売上の期ズレがないか → たとえば3月決算法人で、①毎月20日締で売上請求をしている場合に、3/21~31日の売上を今期の売上から外していないか ②3月中に納品・サービス提供をしているのに売上請求を4月以降にずらして、今期の売上から外していないか
(3)在庫等の計上金額は妥当か → 大きく利益調整できる項目のため
(4)個人の方に外注費として日当等を支払している場合で、それが「外注費」でなく「給与」に該当しないか → 消費税と源泉所得税の処理誤りにつながる。近年かなり指摘が多くみられます
(5)交際費、消耗品、車両関連費その他の経費が社長等の個人的な支払いでないか
(6)法人と社長個人との取引、関係会社間取引の金額や内容が妥当か
税務調査なう (Q&A方式で)
2017/11/02 12:10:06 税務調査
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Q.税務調査はどれくらいの頻度で来ますか?
A.税務調査は所得税、法人税、資産税(贈与税、相続税など)ごとに分かれて、提出された申告書に誤りがないかの実地調査等を行うものです。国税庁が発表した平成24年7月~平成25年6月の法人税の実地調査率(申告があったもののうち税務調査が行われた割合)は3.1%です。単純計算だと税務調査が来るのは33年に1回!ということになります。が、実際は規模の大きい法人や売上・利益が大幅に伸びている法人で3~5年に1回位、一般法人や個人事業主で10年に1回位だと思います。何十年も税務調査を受けていない法人も多いです。また、相続税の調査は以前は4件に1件程度と言われていましたが、平成27年に基礎控除額が大幅縮小されてから申告件数がかなり増えましたので、相対的に実地調査率は下がっていくと思われます。
Q.税務調査は断れますか?
A.任意調査と言われているので受けても受けなくてもいいような響きがしますが、断ることはできません。ただ、今週は外せない予定がつまっているので来週からにしてもらう等の日程調整はできます。任意でなく強制調査となると、マルサ(国税庁査察部)が捜査令状なしでも、いわゆるガサ入れをします。予告なしに踏み込み、有無を言わさず段ボール箱に入れてあらゆる資料を持っていかれます。
Q.税務調査で聞かれることはどこまで答えないといけないのですか?
A.調査官は「質問検査権」というものを持っており、税務調査に必要があれば質問や書類の提出を求めることができます。納税者側に拒絶権がないことが法律上明記されています。ただし税務調査に必要がないこと、たとえばプライベートの引き出しの中まで開示する必要はありません。また、法律上「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という一文があり、調査官にも分別ある調査を求めています。
Q.税務署の調査官にノルマはあるのですか?
A.追徴税額のノルマはないよう(出世には影響する)ですが、調査件数のノルマはあります(調査官からも直接聞きました)。「1年間で30件の調査をおこなう」などのものです。税務署としては税額もあるのでしょうが、調査件数がこなせていない(=実地調査率が低い)ことを一番問題視しているようです。実地調査率が低い原因のひとつに調査官の慢性的な人手不足があり、税務署側も定年した調査官の雇用延長を増やすなどの対応をしているようです。
「外れ馬券」をめぐる最高裁判決で税務当局側が敗訴
2015/03/27 16:02:58 税務調査
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昨年話題になったニュースで、「競馬の馬券配当で得た所得を申告していなかった」ため、約6億9,000万円(無申告加算税などを含む)を追徴課税された(!)、というものがあります。競馬の配当は一時所得であり、所得税の課税対象であることは間違いないのですが(一般的に少額のものがどれくらい申告されているかは別として)、納税者と国税局の見解が大きく分かれました。
納税者の主張は、3年間に計約28億7,000万円分の馬券を購入し、計約30億1,000万円の配当を得たので、利益は(差し引きで)約1億4,000万円だ、というものでした。しごくもっともな主張だと思われます。
ところが所得税法の一時所得の規定にはこんな一文があります。「一時所得から差し引ける支出額は、その収入を得るために直接要した金額に限ります」と。
そこで国税局はこう主張しました。「外れ馬券の購入代は、(外れだから、収入を得るための支出ではないので、)その収入を得るために直接要した金額ではない」と。つまり当たり馬券の購入代だけが差し引けるのだから、28億7,000万円のうち当たり馬券の購入代1億1,000万円だけが必要経費で、30億1,000万円-1億1,000万円=29億円(!!)に対して課税する、というものでした。
実は一時所得の規定をあてはめると、国税局の主張は正当なのです。でも、ちょっとまってください。差し引き利益が1億4,000万円の者に6億9,000万円の課税ですと、5億5,000万円も赤字じゃないですか。当然払えるわけありませんよね!?
そこで納税者は弁護士を通してこう主張しました。「この一連の馬券購入は、一時的な収入というよりも、(事業に準ずる規模の)雑所得である。雑所得であれば外れ馬券も、事業全体の必要経費として差し引けるはずである」と。
実はこの納税者は、馬券を自動的に購入するソフトを使用して、独自の条件設定と計算式に基づいて、インターネットで長期間にわたって多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、多額の利益を恒常的に上げていました。つまりこれはもう趣味じゃなくて事業でしょう!ということですね。
この度、この税務訴訟に対する最高裁判決が出まして、納税者側の主張が認められました。国が敗訴したわけです。でも、この判例によってすべての馬券収入が雑所得となるわけではなく、「ここまでやってたら」という例外的なものにはなると思います。競馬ファンの方は、お気を付けください。