巨人・坂本選手の交際費否認報道から徒然
2024/06/03 16:26:40 税務調査
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巨人の坂本選手が年間約2,000万円×5年の飲食費について税務当局から指摘があり協議中、というニュースがありました。ニュースでは「約1億円の申告漏れ」とやや悪意ある書き方をしていますが、要するに交際費が必要経費と認められなかったのだと思います。
詳しい内容はわかりませんが、年間2,000万円という額だけ見ると否認されそうな額ですが、まず「額のみをもって否認される」というのはあってはならないと思います。推定年棒6億円からみて2,000万円(売上の約3%)の交際費は多額とも言い切れないです。
結局問題はその中味であり、「事業(=プロ野球選手としての活動)に必要な接待か否か」が判断の全てだと思いますが、もし球団の重役やスポンサーを接待するための飲食費ならこれは経費と認められるでしょう。・・だぶん接待される側であり、これはない気がしますが。チームメイトや後輩を連れていった飲食費は?これも戦う余地があると思います。特定のメンバーとのみ同じクラブに頻繁に行っていたりしたら厳しいと思いますけど。
YouTubeの視聴履歴で重加算税
2023/05/01 14:35:50 税務調査
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関東でこんな税務調査事例がありました。ユーチューバーが動画投稿による広告収入等約3,600万円を全く申告しておらず追徴課税されたのですが、納税者は当初国税局に対し「確定申告が必要なことを知らなかった」と説明したそうです。ところが国税局は、納税者が「税務調査を受けたらどう対応するか」という内容の動画を閲覧していた履歴と、「確定申告が必要である旨の動画配信サービス会社からの受信メール」の証拠を突きつけ、納税者に重加算税(=40%税金上乗せ)の処分を下しました。
この事例のポイントは、国税局がパソコンの閲覧履歴や受信メールを取得したことに正当性があるかどうかです。マルサの強制捜査ですとパソコンも押収されているでしょうからアウトですが、一般の任意調査ですとこれらの内容を調査官が強制的に確認する権限は、今のところありません。勝手に調査官が確認していたのなら違法調査の可能性があります。
税務調査では、調査官からの「パソコン見せて」の要求は要注意です。請求書のエクセルデータを確認したいと言いながら、このような別の証拠を横目で探している可能性があります。先ほど「今のところありません」と書きましたが、来年から電子帳簿保存法が本格的に施行されます。そうなると例えばEメール本文で代金請求があった場合、そのメールデータ自体の保存義務があり、税務調査で閲覧を求められれば拒否できません。電子帳簿保存法はデータのままでも保存できる便利な改正などではなく、税務当局にこのようなパソコン上の証拠を閲覧する権限を与えるためのものだと解釈すべきでしょう。
税務調査報告2021
2022/04/21 13:23:17 税務調査
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税務署の事務年度は7/1~6/30という締めなので、新しい事務年度が始まって少し経過した秋口から冬にかけてが一番税務調査の多い時期になります。弊社では令和3年秋~冬で4件(全て法人)の税務調査がありました。
今回もそうでしたが、税務調査は終結までの期間が長期化する傾向にあります。税務署内の事務手続きが煩雑になっている、税務署がそもそも人手不足気味、などの税務署内部要因が主な理由だと思われます。人手不足かつ(公務員にしては)離職率が比較的高いためか、税務署内は50代のベテランと20代の入って日が浅い調査官が多く、中間層30代40代が少ない傾向があるようです。複数の調査官にも直接聞いたので間違いないと思います。
最初に20代の調査官が来ても中盤以降の踏み込んだ折衝には調査官が対応しきれず、結局途中から統括官(一般企業の課長クラス)との折衝になっていく、という二度手間感が税務調査を長引かせる原因になりました。今回の4件は1件が是認申告(修正なし)でしたが、あとの3件がこの長期化パターンでした。
令和2年はコロナの影響で税務調査自体があまりありませんでしたが、令和3年からは概ね通常通り行われた感じで、実地調査以外にも書面での接触が増えました。「もう一度申告内容を確認していただき、例えば交際費の中に私的な経費が含まれているようでしたら自主的に修正申告してください」などの内容の書面が届きます。思い当たることがなければ、もちろん「該当なし」と回答するだけなのですが。
それ以外の新傾向として、調査官はパソコンの中を今まで以上にかなり見たがります。「見積書や売上請求書の作成状況を確認したいので、保存しているフォルダを開くところから見せてほしい」「請求書を保存しているフォルダを開いた状態でのモニター画面のスクショを印刷してほしい」「データで持ち帰らせてほしい」などです。データ自体は現状では「保存義務のある帳簿書類」そのものではないので持ち帰りの拒否はできますが、きっと修正履歴などの紙にはない証拠データがほしいのだと思います。電子帳簿保存の一部義務化もこのあたりをにらんでのことと思われます。
あと最近少し気になる点として、「領収書や請求書などが揃っていれば大丈夫」と少し安易に思われている方が多い気がします。調査官は基本的には目の前の書類や会話だけで全て信用することはなく、特に怪しい内容に対しては反面調査(=取引の相手方に行き調べる)をガンガン行います。相手先が県外だろうが出張しますし、無予告で取引先に朝一から張り込むこともあります。質問検査権という強力な国家権利を調査官は持っていますので、この反面調査を止める術は納税者にも税理士にも基本ありません。
LINEでのやり取りが税務調査の証拠書類に!
2021/09/01 13:48:31 税務調査
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令和2年12月に裁決された国税不服審判所での事例で、LINEでのやり取りの画像データを出力した資料をもって、国税当局が「元代表者は退職後も経営に関与して、この資料のように指示を出しているから、実質的に退職したとは認められず、退職金の損金参入を否認する(=経費と認めない)」という見解を出しました。このケースでは関与不十分として最終的には国税当局が負けているのですが、問題はLINEの画像データが税務調査で使われ、証拠書類の形式としては有効であったということです。
このケースでは画像データの入手経路は明らかになっていませんが、納税者が自ら提示したとは思えず、職権で秘密裏に入手していたと考えるのが自然だと思います。
そもそも国税当局は銀行取引を職権で閲覧するのは日常茶飯事ですし、最近の税務調査でもパソコンに保存されているメールのやり取りや、請求書等の作成のためのエクセルデータの閲覧を求められることが増えて来ました。当然のように会社のホームページや代表者のSNSもチェックされています。
少し前の税務調査ではこんなやり取りもありました(一部加工しています)。「(税務署)社長、社長のスマホのLINEを開けて、友達検索のところに「○○さん」と入力して検索実行して、見せてください」「(私)何のためですか?プライベートなスマホなので見せる必要性がありません」「(税務署)〇〇さんとの帳簿外での金銭のやり取りがないか確認するためです」・・最近は国税当局はIT関連にかなり明るくなっている印象です。
相続税の税務調査
2021/07/30 15:29:50 税務調査
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相続税の申告をした場合、一般的には「4件のうち1件は税務調査が入るよ」と言われていました。しかし平成27年に基礎控除が大幅に引き下げられ、申告しないといけない対象の人が大幅に増えたため、平成27年度以降は全ての申告のうち税務調査が入る割合は11~12%程度に下がっています。
しかしいざ相続税の税務調査が入ると、修正申告になる割合は常に8割を超えています(国税庁の統計年報等で発表されている)。これは法人税や所得税の税務調査と比較してかなり高い割合ですが、理由ははっきりしています。
なぜなら、法人税や所得税の税務調査の場合は調査が始まってから帳簿書類等の確認をしていくのに対し、相続税の税務調査は先に銀行等で納税者周りの取引履歴等の調査を全て済ませておき、課税漏れがありそうな事項を把握してから、税務調査開始の連絡を入れます。つまり「来週から税務調査させてくださ~い」と電話があった時は、すでにもうネタは上がっているわけです。そりゃあ修正申告の割合は高いよね、という感じです。
ちなみに当事務所では平成26年~令和3年の間に約30件の相続税の申告をさせていただいておりますが、1件の税務調査も入っておりません。申告書上での詳細な説明や添付書類で計算根拠を明確にしておくことによって、「わざわざ調査に入る必要はないよ」という申告書づくりを心がけているからだと思います。