生前贈与、不動産活用以外の相続税対策
2025/04/01 16:28:06 相続対策
コメント (0)
相続税対策といえば、まず生前贈与や不動産活用が最初に挙がってきます。これは以前の事務所通信やブログでも取り上げておりますが、それ以外にも相続税対策となるものはあります。
一番使い勝手が良いのは生命保険でしょう。被相続人が保険料を支払っていた生命保険契約の死亡保険金は相続税の対象となりますが、相続人が死亡保険金を受け取った場合は500万円×法定相続人の金額が非課税になります。例えば法定相続人が2人の場合、1,000万円の一時払の生命保険に加入します(ご高齢の方でも一時払の生命保険であれば無告知で加入できるものがあります)。そうすることで、預貯金のままだと相続税評価額も1,000万円になる預貯金が全額非課税になります(一時払の場合、おおむね支払保険料≒死亡保険金)。
また生命保険は受取人を指定しておくことができます。受取人の指定には実質的に遺言書での指定と同様の効果があり、また解約時に遺言書が必要がないので相続人は預貯金の解約よりも早くお金を受け取れるという効果もあります。生命保険金の非課税枠が空いている場合は、積極的に活用していきたい相続税対策のひとつです。
注意したいのは、相続人以外が受け取った死亡保険金には非課税枠が無いという点です。例えば相続人でない孫が死亡保険金を受け取った場合は孫に相続税がかかるうえ、もし預貯金を生前贈与していた場合は本来かからないはずの生前贈与加算(原則7年前までさかのぼって)までされてしまいます。
それ以外には、養子縁組をするという相続税対策もあります。相続税の非課税枠は3,000万円+600万円×法定相続人ですので、養子縁組することで法定相続人が増える=相続税の非課税枠も増える、ということになります。ただし税務上の法定相続人と認められる養子は1名まで(実子がいない場合は2名まで)です。
しかし養子縁組さえすれば無条件に節税できると言うわけでもありません。節税目的をメインとした養子縁組について争われた税務相談では、高裁は「節税目的の養子縁組=当事者間での縁組の意思がない」として無効の判決を出しました。最高裁では節税目的でもお互いの縁組の意思があれば無効にはならないとして判決を覆しましたが、このように「理由なき縁組」は節税としてはリスクが高いので注意してください。
3月26日ころのニュースで、自民党がNISAの拡充案として「高齢者が日本株を長期保有した場合に相続税を一部免除する」案を検討している、というのが流れていました。今まで株式投資と相続税対策との間には基本的に接点はなかったのですが、もしこれが実現すれば相続税対策に「株式投資」という新しい大枠がひとつ誕生することになり、なかなかに画期的だと思います。また「日本株」と限定しているのもミソで、NISAは外国株式等への投資も対象になっていますが、この案は明らかに「眠っている預貯金で日本株を下支えする」という意図が見えます。政府が保有株の売却をぶつけたいだけかもしれませんが・・。
不動産を活用した相続税対策
2025/02/03 15:19:49 相続対策
コメント (0)
不動産を活用することで相続税対策になるケースは多々あります。例えば「相続した実家の土地に賃貸アパートを建築する」などです。では、なぜ賃貸アパートを建築すると相続税が下がるのでしょうか?
土地の上に空き家となっている実家の建物がある場合、この土地評価は更地と同じ評価になり、路線価をもとに計算した評価額から基本的には減額要素がありません。しかしこの実家を取り壊して賃貸アパートを建築した場合、土地の評価額は一般的に15%程度減額されます。
アパートを建築した土地は更地ではなく「貸家建付地(かしやたてつけち)」の評価となり、更地評価から「更地評価×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」の額を減額することができます。これはアパートの敷地となっている土地は、(部屋を借りている人の住む権利などがあるため)更地に比べて売却などの処分がしにくいので、その分評価が下がることになります。
借地権割合は例えば広島市では50%の地域が多く、借家権割合は全国一律30%、賃貸割合は満室ならば100%となりますので、仮にその土地の更地評価が1億円だとしますと、貸家建付地の評価は1億円-(1億円×50%×30%×100%)=8,500万円となり、更地より15%程度低い評価となるわけです。
またアパートを建築した場合の建物そのものの評価ですが、一般的に建物の相続税評価額(固定資産税評価額と同額)は建築費用の60%程度になると言われています。さらに貸アパートの評価額は借家権割合と賃貸割合を控除しますので、仮に1億円で貸アパートを建築したとしますと、建物の評価額は1億円×60%=6,000万円 →6,000万円-(6,000万円×30%×100%)=4,200万円となり、現金を1億円もっていた場合と比べて相続税評価額が58%程度減額されます。
またこの評価減は借入をしてアパートを建築する際にも有効で、1億円の借入があると債務として全体の相続税評価額から1億円が控除される一方、建物の評価は4,200万円ですので、やはり全体の相続税税金対象額が5,800万円減少し、同じ節税効果が得られます。
注意点としては、あくまで貸アパートは賃貸「事業」ですので、その経営がうまく行かないようでは本末転倒になってしまいます。立地が命になりますし、信頼できる建築業者を選べるかどうかも重要です。またいくら現金で持っているよりも相続税評価が下がるからとはいえ、手持ち資金をすべて使ってしまうと将来の生活費や相続税納税資金がなくなってしまいます。あくまで一定額は現金を残しておくことが大切です。
賃貸事業はうまくいけば税金対策だけではなく、将来の家賃収益を相続人に残してあげられるという意味合いも出てきます。相続時精算課税制度や法人の設立を使って、早い段階で家賃収益を子や孫に入るようにすることも可能です。事前にしっかりとシミュレーションをした上で、有効だと判断できれば積極的に活用してもいいと思います。
「現預金の生前贈与による相続税対策」のまとめ
2024/11/01 15:03:20 相続対策
コメント (0)
相続税対策は、大きく「生前贈与」「不動産の活用」「生命保険の活用その他」の3つに分けることができます。そのうち現預金を生前贈与する方法を簡潔にまとめました。有効な現預金の生前贈与方法は、以下の5つです。
(1)年間110万円の贈与税非課税枠の範囲内で贈与する
(2)贈与税率<相続税率となる金額の範囲内で贈与する
(3)相続人でない孫などに贈与する
(4)そもそも贈与税の対象にならない資金として贈与する
(5)相続時精算課税の基礎控除範囲内で贈与する
それぞれの細かい注意点は実行前に各担当者にご確認いただければと思いますが、まず(1)(2)は伝統的な節税方法です。しかし令和6年以降に相続人に行った贈与は、相続発生時に過去7年間さかのぼって相続財産に加算されてしまいます(一部例外あり)。より早い段階から計画的に行わないと、節税効果が薄れることになります。
(3)はたとえ相続開始1日前にされた贈与であってもさかのぼられることがないので非常に有効な節税対策になります。ただし①孫が(遺言書等で)遺贈により財産を取得した場合、②孫が生命保険の受取人に指定されている場合、③被相続人の子が死亡しているため孫が代襲相続人になっている場合、は(1)(2)と同様に7年間さかのぼられますので注意してください。
(4)ですが、被扶養者が生活費として(常識の範囲内の金額で)金銭を渡す場合、大学の授業料等を払う場合は、そもそも扶養義務を実行しただけなので贈与には該当しません。この被扶養者とは両親だけでなく、祖父母も該当します。ただし授業料等は被扶養者が直接大学等に支払わないと一般の贈与とみなされてしまいますので、注意してください。なお(5)については令和6年8月1日投稿のブログで詳しく解説しておりますので、そちらをご覧いただければと思います。
相続税精算課税を使った新しい相続対策
2024/08/01 15:09:14 相続対策
コメント (2)
令和6年1月に相続税法の改正がありました。そのため「生前贈与による相続対策がやりにくくなった」という声を聞きます。これは一部は正しく、一部は本当ではありません。
やりにくくなった理由は、今までは相続開始3年前までに贈与された財産が相続税の計算時にもう一度入れ直して計算されていましたが、令和6年1月以降に行われた贈与については7年前までさかのぼって相続税の計算に入れ直すよう改正されたためです。
年間110万円の現預金を親から子に毎年贈与していたとして、親が亡くなり相続税の計算をする場合は、今までは相続財産の額に110万×3年=330万円が加算されていましたが、これが110万×7年=770万円加算されて相続税を計算することになります。これを「生前贈与加算」と言います。
つまり7年前までの生前贈与は相続税の計算上無効になってしまいます(一定期間内は3~7年前の贈与分が最大100万円までは有効という経過措置があります)。そのため、今後はより早い時期から相続対策を始めることが重要になってきます。
一方、改正の影響を受けない相続対策もたくさんあります。基本的に法定相続人以外への贈与はこの生前贈与加算の対象になりません(遺言による財産の取得、死亡保険金の受取など一部例外はあります)ので、法定相続人でない孫に一代飛ばしで財産を贈与する方法はひき続き有効な対策の1つです。相続開始1日前にされた贈与でも、相続財産には加算されません。
贈与税の非課税の特例制度により贈与された財産も、生前贈与加算の対象から外れます。「住宅資金贈与」や「おしどり贈与」(婚姻期間20年以上の夫婦間での、居住用不動産やその購入資金の贈与)などがあります。また子や孫の教育費用を直接学校等に支払った場合や、扶養家族の生活費関連の支払いなどは、扶養義務に基づく支出なのでハナから贈与税の対象になりません。
改正により新たな相続税対策の手法も生まれました。「相続税精算課税制度」を使う方法です。この制度自体は以前からありまして、届出をすることで生涯で2,500万円までの贈与は贈与税が非課税になります。その代わり、この非課税になった財産は相続時に「全額」相続財産に加えて相続税が計算されます。また届出をした以後は年間110万円の基礎控除が「生涯消滅」します。
そのため、今までは「贈与財産を相続時に加えても相続税が発生しない方が、どうしても自宅を先に相続人のうちの1人に名義変更しておきたい」などの限られたケースでしか使いませんでした。ところが令和6年1月以降は、相続時精算課税制度を選択しても基礎控除が消滅しなくなりました。しかもその基礎控除部分の贈与は、たとえ相続開始1日前にされた贈与でも生前贈与加算されません。そのため「毎年110万円を贈与する以外の相続対策はしない人」など、この制度による相続対策が有効なケースが増えました。新しい相続対策方法の1つと言えます。
インフレ時代の住宅取得の考え方
2024/07/01 16:52:20 相続対策
コメント (0)
コロナ禍以後世界的に物価が上昇しており、各国政府が利上げを実施してもなかなか歯止めがかからない状況になっております。日本は賃金が30年間上がらず蚊帳の外でしたが、ウクライナ戦争や円安の影響による輸入物資の上昇、加えて「さすがにこれ以上日本だけ賃金が上昇しないのはまずい」という日本政府の政策により、日本も少しずつ物価が上昇し始め、基本的にはこの流れは変わらないと思います。
そして広島の不動産事情に目を向けますと、広島県全体の平均では地価は横ばい程度です。人口の転出超過が1位とも言われている中で仕方がないところではありますが、広島市の中区、南区、西区、安佐南区あたりではここ数年で地価が10%以上上昇しているところもあります。また物資や賃金の上昇に伴い建物の建築価格も上昇しており、コロナ禍以後2~3割上昇したとも言われております。
そのため住宅価格も上昇したり、同じ金額でも延床面積が狭くなったりしていますが、今後もすぐに価格が下落することは考えにくいですので、自宅を購入する際は住宅ローンはもちろん、自己資金を両親から援助してもらう、というケースも増えてくると思います。
まず住宅資金贈与の特例ですが、これは父母や祖父母から住宅資金贈与を受けた場合に、申告をすることにより一定額の贈与が非課税になる制度です。現行省エネ等住宅の取得資金は1,000万円、それ以外の住宅は500万円までが非課税になり、令和8年12月31日までこの特例が延長されています。
次に住宅ローン控除ですが、こちらは毎年金額や要件が少しづつ変更されるため複雑になっています。令和6年は、新築の省エネ住宅等は借入残高×0.7%が13年間税額控除されるのは同じですが、その借入限度額が令和5年と比較して認定長期優良住宅等5,000万円→4,500万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円→3,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円→3,000万円、と減少しています。ただし令和6年に限り子育て世帯(自分か配偶者が40歳未満か、扶養親族が19際未満)は令和5年限度額を据え置くことになっています。ややこしいですね。
大きいのは、令和6年以降省エネ基準を満たさない新築住宅を購入しても住宅ローン控除は全く受けられないことになりました。いざ確定申告しようとしたら対象外だった、というトラブルが結構起こると考えられますので、ご注意ください。中古住宅については省エネ住宅等が限度額3,000万円、それ以外の住宅でも2,000万円で、10年間税額控除があります。
住宅には消耗材(住むための消耗品)という考え方と、資産価値という2つの側面があると思います。資産価値が維持、上昇していく不動産というのはある程度中心地に限られていきます。日本の人口は基本的に減少しますので、便利なところには人は集まりますが、そうでない地域では過疎化の加速は止まらないでしょう。しかし「田舎の両親の近くに家を買って住みたい」場合は消耗材としての価値を重視する必要があります。この2つの側面を混同せず、将来を見据えた住まい探しをすることが大切だと思います。