インフレ時代の住宅取得の考え方
2024/07/01 16:52:20 相続
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コロナ禍以後世界的に物価が上昇しており、各国政府が利上げを実施してもなかなか歯止めがかからない状況になっております。日本は賃金が30年間上がらず蚊帳の外でしたが、ウクライナ戦争や円安の影響による輸入物資の上昇、加えて「さすがにこれ以上日本だけ賃金が上昇しないのはまずい」という日本政府の政策により、日本も少しずつ物価が上昇し始め、基本的にはこの流れは変わらないと思います。
そして広島の不動産事情に目を向けますと、広島県全体の平均では地価は横ばい程度です。人口の転出超過が1位とも言われている中で仕方がないところではありますが、広島市の中区、南区、西区、安佐南区あたりではここ数年で地価が10%以上上昇しているところもあります。また物資や賃金の上昇に伴い建物の建築価格も上昇しており、コロナ禍以後2~3割上昇したとも言われております。
そのため住宅価格も上昇したり、同じ金額でも延床面積が狭くなったりしていますが、今後もすぐに価格が下落することは考えにくいですので、自宅を購入する際は住宅ローンはもちろん、自己資金を両親から援助してもらう、というケースも増えてくると思います。
まず住宅資金贈与の特例ですが、これは父母や祖父母から住宅資金贈与を受けた場合に、申告をすることにより一定額の贈与が非課税になる制度です。現行省エネ等住宅の取得資金は1,000万円、それ以外の住宅は500万円までが非課税になり、令和8年12月31日までこの特例が延長されています。
次に住宅ローン控除ですが、こちらは毎年金額や要件が少しづつ変更されるため複雑になっています。令和6年は、新築の省エネ住宅等は借入残高×0.7%が13年間税額控除されるのは同じですが、その借入限度額が令和5年と比較して認定長期優良住宅等5,000万円→4,500万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円→3,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円→3,000万円、と減少しています。ただし令和6年に限り子育て世帯(自分か配偶者が40歳未満か、扶養親族が19際未満)は令和5年限度額を据え置くことになっています。ややこしいですね。
大きいのは、令和6年以降省エネ基準を満たさない新築住宅を購入しても住宅ローン控除は全く受けられないことになりました。いざ確定申告しようとしたら対象外だった、というトラブルが結構起こると考えられますので、ご注意ください。中古住宅については省エネ住宅等が限度額3,000万円、それ以外の住宅でも2,000万円で、10年間税額控除があります。
住宅には消耗材(住むための消耗品)という考え方と、資産価値という2つの側面があると思います。資産価値が維持、上昇していく不動産というのはある程度中心地に限られていきます。日本の人口は基本的に減少しますので、便利なところには人は集まりますが、そうでない地域では過疎化の加速は止まらないでしょう。しかし「田舎の両親の近くに家を買って住みたい」場合は消耗材としての価値を重視する必要があります。この2つの側面を混同せず、将来を見据えた住まい探しをすることが大切だと思います。
新紙幣発行でタンス預金はどうなる
2024/05/01 15:58:32 相続
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今年の7月3日から新札が発行されます。紙幣の刷新は約20年ぶりで、特に一万円札の刷新は約40年ぶりだそうです。刷新の主な目的は偽造防止ですが、日本ではもう一つ重要な目的があると言われており、それはタンス預金をあぶり出すことです。
日本は他の国と比較してキャッシュレスが進んでおらず、一説にはタンス預金は約50兆円程度あるそうです。このタンス預金が無申告で相続・贈与されると国は相続税・贈与税を相当取りっぱぐれるので、なんとかこのタンス預金を市中に引き出そう、としているわけです。
では新札が発行されると旧札は使えなくなるのか、と言うとそうではなく、今の福澤諭吉の一万円札は今後も使えますし、何でしたら聖徳太子の一万円札だって今も使うことができます。自動販売機とかでは使えないでしょうし、コンビニで聖徳太子の一万円札を出したら若い店員さんだったら偽札と思われるかもしれませんが、それでも少しづつ使っていく分には問題ありません。
しかし大量の旧紙幣を銀行に持っていくには問題が出てきます。もし今聖徳太子の一万円札を1,000万円分自分の口座に預け入れに行っても入金させてくれないでしょう。「自分のお金を自分の口座に預け入れできないなんておかしい!」と思われるかもしれませんが、マネーロンダリングを疑われて金融庁に通報される可能性が高いです。また国税当局に「申告されていない現金を大量に保有している」とマークされるでしょう。
ですのであまりに旧紙幣を多額に長期間所有し続けると、価値はあるものの実質どんどん使いにくいお金になって行く、と言えると思います。
「だったら福澤諭吉の一万円札は、今のうちに少しづつ預け入れしておこう」と思われるかもしれません。毎日のATM限度額が50万円だから、20日に分けたら1,000万円預け入れできるな、と・・。しかし、預貯金の動きは国税当局は、職権で取引履歴を閲覧できます。多額のお金が動くと、その出どころはどこなのか?と疑われます。
また相続税の申告をさせていただく時によく目にしますが、相続が発生する前後で毎日50万円づつATMで下ろしておく、という逆の動きをされることもあります。国税当局からするとこのような預金の動きは、相続税を逃れるための「典型的な」動きに見えます。相続が始まると口座がロックされるから先に引き出しておいた、という方がほとんどだとは思いますが、疑われる動きですのでなるべく避けましょう。
大量のタンス預金は、かえって子や孫を困らせるものになる可能性もあります。これを機に相続税対策は、長いスパンで、コツコツと、子や孫を困らせない方法を見つめ直す必要があるかもしれません!
相続税対策を認めなかった衝撃の最高裁判決
2022/08/01 12:38:45 相続
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令和4年4月19日、相続税対策に関わる方・業界にとって衝撃の最高裁判決が下されました。法令に沿って適切に相続税申告をしたにも関わらず、その申告を認めず2億4,050万円の相続税の追徴課税を言い渡した事例です。
前提内容をざっと説明しますと、北海道在住の個人には約12億円の預貯金がありました。相続税対策のために東京都杉並区と神奈川県川崎市のタワマン2部屋を、10億円強の銀行借入をして、13億8,700万円で取得しました。
その約3年後に相続が発生しました。この2部屋のタワマンの相続税評価額は、国税庁の「財産評価基本通達」の通りに評価すると約3億3,300万円でした(取得額の約4分の1!)。これに残っていた預貯金を加えても、債務の10億円強を引き算すると基礎控除以下になるということで、相続税を0円と算出しました。
なぜタワマンの評価額がそんなに下がるかと言いますと、建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同額となっており、固定資産税評価額は基本的に建物そのものの価値で算出されるため、都内一等地で人気の最上階である等の「販売価格」が高騰する要素に対してはあまり反映されないためです。
この算出方法自体は全くの合法です。にもかかわらず課税当局はこの申告を認めず、最高裁もこれを支持しました。税法には「同族会社の行為計算の否認」という規定があり、「合法であっても結果的に不当に納税額を減少させた場合は、最後にひっくり返しちゃいますよ」というトランプでいうジョーカーのような最終兵器が準備されています。そんなアホな!あんたらのルール通り計算したのに否認されるって、ここは社会主義国家かよ!ってことになります。
否認された理由を見てみましょう。被相続人には不動産購入前には約12億円の預貯金がありました。これが「たった2回の不動産取得をしただけで数億円の相続税が0円になることが、銀行借入をしない・できない納税者との公平さを欠く」ため、「財産評価基本通達」ではなく不動産鑑定評価で再計算しろとのことでした。どう思われますか?私は、節税対策をした人としなかった人との税額が変わるのは当たり前だろう!と思いますが・・。
さらに、不動産を購入した時の被相続人が90歳すぎであり節税以外の目的でこのような高額な不動産を購入した理由が見当たらないこと、相続人が相続後9か月で不動産を売却したこと、さらにはこの不動産購入を提案した三菱UFJ信託銀行への反面調査により「事業経営財務診断」という名前の提案書に「相続税の節税目的」とはっきり書かれていたこと(金融機関は後々のトラブルを避けるために、顧客とのやり取りの内容を稟議書等で残していることが多く、税務署もその稟議書等を抑えようとすることが多い)等が決め手になったようです。
対策としては、節税目的のみでの行為は(特に節税額が高額な場合)このように最終兵器で否認されるリスクがあることから、「節税以外の目的での行為により、結果的に税額は減少したが、あくまで結果論にすぎない」というシナリオを描けるようなスキームにする必要があると思います。
暦年贈与が廃止!?
2021/09/01 13:46:02 相続
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年間110万円までの贈与は非課税になる暦年贈与ですが、この非課税枠が廃止されるのではないかという声が最近大きくなっております。発端は令和3年度の税制改正大綱で「贈与税と相続税をもっと公平に課税していく」と暗に匂わせてきたことにあります。つまり、生前に贈与しておいたら無税なんて不公平じゃないか、ということです。
現行でも、相続が開始した場合には「相続人に対する3年前までの贈与財産」は相続財産に含め直して相続税を計算することとなっています。ただもちろん3年超前の贈与財産や、相続人以外(例えば、孫など)への贈与は相続財産に含め直しません。
実際に、数年以内に改正になる可能性はかなりあると思います。110万円の非課税枠が0円になるというよりは、上記の含め直しする期間を10年に変更する、もしくは何十年でも期限なく含め直す(アメリカ式)方法が考えられます。個人的には、民法上の特別受益とも合致するので、10年が有力ではないかと思っています。
ビル・ゲイツ氏離婚の相続税対策疑惑
2021/05/31 19:11:44 相続
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マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が離婚を発表しました。おしどり夫婦と呼ばれていたのに突然の発表、という印象が強いらしく、巷では「相続税対策(のための偽装離婚)では」という噂が立っています。個人資産が14兆円くらいあるそうで、相続が発生したら7兆円くらい相続税(アメリカにも日本の相続税と同様のものアリ)がかかると言われています。ところが、離婚に伴い財産分与が発生し、例えば半分の7兆円が奥様側に渡っても原則は非課税となるため、結果的に莫大な額の税額軽減がされる可能性があるのです。
日本でも同様の考えで、財産分与は婚姻期間中に2人で築いた財産をきちんと分けるためのものなので、贈与とは意味合いが違うため、離婚時の財産分与に伴う贈与税は原則課税されない、とはっきり決められています。
これを読んで偽装離婚が頭によぎった資産家の方がおられるかもしれませんが、「原則」ということなので、分与された財産が過大である場合や、税金逃れを目的とした偽装離婚と認められる場合は贈与税を課する、ともはっきり決められていますのでご注意ください(^_^;)