離婚により財産を分けた場合でも税金がかかる!?
2015/07/31 17:00:01 相続対策
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厚生労働省が平成27年1月に発表した「人口動態統計の年間推計」によると、夫婦の3組に1組が離婚しているそうです(!)。長年連れ添った夫婦が離婚に至った場合、夫婦共有の財産をどのように分けるか(財産分与といいます)、という問題が出てきます。 預貯金などは半分ずつ分けることができますが、今まで住んでいた持ち家はどうするのか?となるといろいろ問題が出てきそうです。いわゆる分け前をどうするかの問題もありますが、気を付けないと予期せぬ税金が課税されるケースも出てきます。
まず、財産をもらう側(専業主婦の方が、ご主人名義の預貯金をもらう場合など)ですが、慰謝料はもちろんのこと、「協議離婚に伴う財産分与による所得」にも、税金は課されません。持ち家をもらった場合も同様です。まあ、当然かなと思いますが。ただし、もらった財産があまりに過大だったり、偽装離婚だったりすると贈与税が課されます。
財産を渡す方はどうでしょうか?なんで渡す側に税金がかかるんだ?という声が聞こえてきそうですが、実はご主人名義の持ち家を奥様名義に変更した場合に、ご主人に「所得税、住民税」が課されるケースがあります。なぜなら、「離婚に伴う不動産の財産分与は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価(売値)とした不動産の譲渡」とみなされて譲渡所得税等が課されるからです。
「はっ?なんで?」という感じだと思いますが、そのような取扱いになっています。ただ、「譲渡」とみなされるので、不動産の買値が上回っていて利益部分がでなければ税金はかかりません。
そして、買値が下回っているときにも、特例を使うことができます。居住用財産を譲渡した場合には、確定申告をすれば3,000万円までの譲渡所得が非課税になります。ただし、これは親族への譲渡は対象外になるため、「離婚をして他人になった後に名義変更」をしないといけません(婚姻期間20年以上なら、2,000万円の贈与税の配偶者控除の非課税枠を離婚前に使う手もあります)。
いずれにせよ、頭の中の「?」マークが消えないのは、私だけではないと思います・・・。
誰でも設立できる、相続対策にも有利な「一般社団法人」
2014/09/08 13:29:47 相続対策
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現在、株式会社は資本金1円でも設立できるようになりました。さらに株式会社の半分以下の登記費用で設立できる合同会社、というのもあります。
しかし、まだそこまで知られていませんが、平成20年12月1日より一般社団法人も登記のみで設立できるようになりました。社団法人といえば、かつては公益事業として認可を受けないといけませんでしたので、公的なイメージが強いのですが、今は社団法人を公益法人、非営利型法人、一般社団法人と(税務上)3つに分類しており、そのうち一般社団法人は制約があまりなく、定款を整備して登記すれば、すぐに設立できます。登記費用も株式会社の半額強程度ですし、社員も2人以上(うち理事1人以上)いれば大丈夫です。法人が社員になることもできます。
一般社団法人は、特に事業内容が制限されるわけではありませんので、そういう部分では、株式会社ととくに違いはありません。法人税の課税のされ方も同じです。しかし、株式会社と大きく異なる点があります。それは、「出資金、株式が存在しない(概念がそもそもない)」ということです。法人の意思決定は、社員が各1票をもって行います。
では、なぜ一般社団法人が相続対策に活用できるのか?それは、「株式が存在しない」=「相続対象となるべき株式が存在しない」=「法人の価値が増加しても、相続税の対象にならない」からです。株式会社の場合、法人の純資産額が資本金の10倍になると、株主が保有している株式の評価もたとえば10倍になったりして、その株式を相続する際に多額の相続税が発生することがあります。一般社団法人では、株式がないため相続税には全く影響がありません。社員の地位を引き継いだり、あらかじめ後継者を社員にしておけば税金がかかることなく法人の資産と事業を引き継がせることができます。そして一般社団法人でも、もちろん役員報酬や役員退職金を支給することができます。
もう一つ大きいのは、法人を最終的に解散させる時です。一般社団法人では、解散時に残った財産を特定の社員に分配するという定めを定款に記載することはできません。ですが、実際に解散する時に、社員総会で特定の社員に残った財産を分配することまでは禁止していません。つまり、結局は個人に財産を戻すことが可能なのです。この点は、残った財産は国に帰属させないといけない基金型医療法人(社団)とは異なります。
また、株式会社では解散時に株主に残った財産を分配する際には配当所得として所得税がかかります。一般社団法人の場合も所得税はかかるのですが、配当には該当しないため、税金が有利に計算できる一時所得に該当するものと考えられます。つまり、法人に残った財産の分配も、他の法人形態より有利に行うことができます。これも、相続対策には非常に有効な点です。
相続に関わる者の気持ち
平成27年1月以降の相続について、相続税の基礎控除が4割減額されます。これは要するに、相続税がかからなかったものからも相続税を課し、もともと相続税がかかっていたものにはさらに多くの相続税を課す、という「大増税」です。ケースによっては何百万円も税額が増えるため、「大」をつけても大げさではないでしょう。
また、詳しい説明は避けますが、今は「相続した不動産を売って税金を払う」「不動産そのもので税金を払う(物納といいます)」も難しくなっています。
それもあってか、書店では相続に関する本はとてもたくさんならんでいます。「エンディングノート」だけでも書棚の一列を占めていたり。「エンディングビジネス」という言葉も生まれたりしています。
相続対策の内容も、多岐に及びます。よく勘違いされるのは、相続対策とは相続税を抑えるための手法だと思われていることです。たしかにそれも相続対策の一部ではあるのですが、相続には以下の3つの要素があるのです。
(1)相続財産を把握、確定しておくこと
→どういった財産があるかを明確にておくことや、広義には不動産の境界線などを
明確にしておく、などの行為を含みます
(2)財産をどう分けるかを考えておくこと
→遺言書の作成や遺産分割協議、また納税資金などの換金性のバランスや事業承継との
からみなども考えておく必要があります
(3)相続税をいかに抑えるか
実際の相続においては、上記の(3)を多少犠牲にしても、(2)が優先されることが多いのです。相続人の全員が納得する相続、というのと税金の絶対額が少なくなる、というのはイコールにならないのです。また相続税対策をするにも、子からは親に「相続税の対策をせよ」とは言いにくく、そもそも子は親の財産を把握していないケースが多いのです。親としても、自分の老後資金の不安や、「子どもに早くから財産を与えて甘やかせるのはいかがなものか」という親心から、なかなか生前に積極的な財産分配をするには至らないのです。
ただ、私も平成23年に父親を亡くし、途方にくれている母親の手を引っ張って預金通帳の解約手続きのために銀行廻りした時の何とも言えない気持ちが忘れられません。かけがえのないご家族を失った上に、経験のない相続手続きに奔走しないといけない相続人の方々の負担を少しでも和らげることこそが、税理士の社会的使命なのだと考えています。