うまく使いたい、自筆証書遺言書保管制度
2020/08/03 16:26:09 相続
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遺言書には大きく分けて、自分で書く「自筆証書遺言」と公証人が作成し公証人役場で保管される「公正証書遺言」の2種類があります。「自筆証書遺言」は自分でいつでも作成できるので一見お手軽そうですが、有効になるように所定の内容を記載しておく必要がありますし、また遺言者の死亡後に家庭裁判所で「検認」請求をしなければいけません(その前に開封しても無効にはなりませんが、偽造等されていないことを客観的に証明できなくなります)。どこに保管しているかわからなくなる、という可能性もあります。
このような欠点を補うため、令和2年7月10日より「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。法務局で事前に遺言書の内容が有効かを確認してもらえて、保管してくれるようになります。画像データでの保存もされるため検索が容易になり、また家庭裁判所の検認も不要になります。事前に予約し、遺言書、住民票、身分証明書、手数料(3,900円)などを持参すればOKです。
ただし法務局では有効性の確認と保管はしてくれますが、書き方を教えてくれたり相談に乗ってくれるわけではありません。「ご相談には一切応じられません」ときっちり注意書きされていますので、内容自体の専門的なチェックが必要であれば、司法書士や行政書士に依頼することになります。
まだ使えます。タワーマンションの相続税対策
2016/09/30 17:50:59 相続
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今、広島駅周辺は急激に再開発が進んでいます。広島駅南口Bブロックに建設されるシティタワー広島は、広島駅直結で、中四国・九州地区で最高層の52階建てだそうです。
今、首都圏等でもタワーマンションはとても人気があります。マンションでも値が下がりにくく、転売や賃貸も考えた投資物件として外国人からの引き合いも多いそうです。そして大都市圏ではタワーマンションは相続税対策として取得されることも多いです。
タワーマンションは上の階に行くほど人気があり、一物件が億を超えることもめずらしくないのですが、こと相続税評価となりますと、タワーマンション全体の評価を面積比率で按分することになります。2階と最上階でも、面積が同じなら評価も同じになります。ですので、1億円で取得したマンションも相続税評価額は5,000万円、というケースも出てきますので、その差額分相続税対象額を減らすことができるのです。
ただこの相続税対策、税務当局から否認されたケースもあります。その事例では相続税評価額を2億円以上下げて申告したのですが、相続開始直前にマンションを取得しており、また被相続人がマンションを訪れた形跡がなかったので、被相続人に本当に取得する意志があったのか定かでなかったことと、相続が開始して1年程度で売却されたため、明らかに相続税を減らす目的のみであったとされ、正当な相続税計算と認められませんでした。他の否認された事例を見ても、すぐに売却するのは税金逃れ行為とみられるようです。
このようなことがなければ、購入側としては、適正にマンションを購入し、正当な計算に従って評価しただけなので、何の問題もありません。タワーマンションは人気のため抽選となることも多いようですが、一物件いかがですか!?
※平成28年11月追記・・平成30年以降に建築されるタワーマンションについて、評価方法を改正する方向で検討がされています。
国外財産への課税強化の発端となった、「武富士事件」
2016/04/11 11:12:21 相続
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近年、課税当局は国外財産への課税を強化しております。たとえば、平成26年より、5,000万円以上の国外財産を有する方は、毎年「国外財産調書」を税務署に提出する義務が生じましたし、平成27年7月以降、1億円以上の有価証券等を有する方が国外転出する場合は、原則その含み益に対して(売却していなくても!)課税されることとなっております。
このように国外財産に対して監視の目が厳しくなったきっかけは、いわゆる「武富士事件」と呼ばれる、課税当局が平成23年に最高裁で逆転敗訴し、本税1,600億円と還付加算金(税金につく利息のようなもの)400億円を返還した一件が発端になっております。
事件の概要はこうです。父がオランダ法人の株式(この法人が武富士の株式を所有している)を香港に住む長男に贈与しました。非居住者(ざっくりいえば、国外に住む者)が国外財産を贈与によって取得しても、(日本の)贈与税は課税されません。ちなみに、香港には相続税や贈与税そのものがありません。
これに対し、課税当局や東京高裁は、(1)年間日数のうち65.8%は香港に滞在していたが、日本滞在中は出国する前の自宅(部屋は家財道具等がそのまま維持されていた)で生活していたこと、(2)香港での居住はサービスアパートメント(ホテルとアパートの中間的なもの)であった、等の理由により、本当の生活拠点は日本であり、香港への出国は、(税法的には合法ながら、)不当な租税回避目的の行動だとして、(課税当局の最終兵器とも言える、)行為計算の否認の規定適用を行い、また支持しました。つまり、不当な税金逃れのために国外居住したのだから、国外に居住しているという事実はなかったものとみなす!というのです。
しかし、最高裁ではこの主張を退けました。理由としては、「贈与税回避の目的があったとしても、客観的な生活の実態が消滅するものではないから、各滞在日数を調整したことのみをもって、生活の拠点が香港にないとまでは言えない」というものでした。
この事件や、他にも課税当局に不利な判決の出た事件等もあり、課税当局は、これ以上の財産の国外流出と、それに伴う課税逃れを阻止しようと、躍起になっているわけです。税法の改正が「いたちごっこ」である側面が垣間見えますよね。
ちなみに、現在は改正により、非居住者であっても、日本国籍を有する一定のものは国外財産にも課税されることとなっております。
相続税増税の影響はどうか?
2015/10/01 14:11:46 相続
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ご存じのとおり、今年1月に相続税の基礎控除が4割引き下げられました。事実上の相続税「大増税」です。国税庁の「統計年報」によりますと、亡くなられた方のうち相続税が課される割合は、ここ10年ほどは4%程度で推移しています。ただし死亡者数自体が増加傾向にありますので、2012年の課税対象被相続人の数は52,572人と、2006年の45,177人と比較すると明らかに増加しております。
今年の相続税増税で、この課税される割合は6%台にまで増加するだろうと言われております。増加割合は2%程度ですが、人数にすると25,000~30,000人程度は増加するという計算になりますし、もともと課税対象だった方も百万円単位で納付税額が増加することを考えますと、影響は相当大きいとみていいと思います。なんだか消費税の増税と数字上のカラクリが似ている気がします。
税理士として仕事させていただいている私の感覚としましても、ここ9か月で相続に関する仕事は明らかに増えています。相続税の申告もそうですが、税金以外での相続対策の関心も高くなりましたし、必然的に生前対策としての贈与税の申告も増えそうに思います。改めて影響の大きさを肌で感じている今日この頃です。
離婚により財産を分けた場合でも税金がかかる!?
2015/07/31 17:00:01 相続
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厚生労働省が平成27年1月に発表した「人口動態統計の年間推計」によると、夫婦の3組に1組が離婚しているそうです(!)。長年連れ添った夫婦が離婚に至った場合、夫婦共有の財産をどのように分けるか(財産分与といいます)、という問題が出てきます。 預貯金などは半分ずつ分けることができますが、今まで住んでいた持ち家はどうするのか?となるといろいろ問題が出てきそうです。いわゆる分け前をどうするかの問題もありますが、気を付けないと予期せぬ税金が課税されるケースも出てきます。
まず、財産をもらう側(専業主婦の方が、ご主人名義の預貯金をもらう場合など)ですが、慰謝料はもちろんのこと、「協議離婚に伴う財産分与による所得」にも、税金は課されません。持ち家をもらった場合も同様です。まあ、当然かなと思いますが。ただし、もらった財産があまりに過大だったり、偽装離婚だったりすると贈与税が課されます。
財産を渡す方はどうでしょうか?なんで渡す側に税金がかかるんだ?という声が聞こえてきそうですが、実はご主人名義の持ち家を奥様名義に変更した場合に、ご主人に「所得税、住民税」が課されるケースがあります。なぜなら、「離婚に伴う不動産の財産分与は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価(売値)とした不動産の譲渡」とみなされて譲渡所得税等が課されるからです。
「はっ?なんで?」という感じだと思いますが、そのような取扱いになっています。ただ、「譲渡」とみなされるので、不動産の買値が上回っていて利益部分がでなければ税金はかかりません。
そして、買値が下回っているときにも、特例を使うことができます。居住用財産を譲渡した場合には、確定申告をすれば3,000万円までの譲渡所得が非課税になります。ただし、これは親族への譲渡は対象外になるため、「離婚をして他人になった後に名義変更」をしないといけません(婚姻期間20年以上なら、2,000万円の贈与税の配偶者控除の非課税枠を離婚前に使う手もあります)。
いずれにせよ、頭の中の「?」マークが消えないのは、私だけではないと思います・・・。